180.スローライフ願望
俺は異世界で、なんか世界を亡ぼす系の邪龍を倒したらしい(初耳)。
どうしてこうなったのか、俺にもわからん。
色々めんどくさかったので世界扉を使って、現実へと帰還する。
『今回も大活躍だったなぁ、ええ? 主よぉ』
リビングのテレビ前という、定位置に座り込み、馬鹿でかい駄犬こと、フェルが言う。
畜生こいつ、俺がわたわたする姿に楽しみを覚えよってええ。
「現実で厄介ごとが多いから異世界に逃げたっつーのに、異世界でも厄介ごとに巻き込まれるとは……」
『強きものの定めだな。いつの世も、どこの世界でも、力を持つ者は面倒事に巻き込まれるのだよ』
長生きしてらっしゃるフェンリルさんが言うと、含蓄に富んでいるなって思った。
まあそりゃね、強い力を悪用しようとする輩は、現実だろうと異世界だろうといっぱいいるだろうし。
悪人じゃなかったとしても、目の前にドラえ●んみたいなやつがいたら、縋り付きたくなる気持ちはわかる。
わかるが、正直やめてほしい……。
「俺はスローライフを謳歌したいんだよ」
『スローライフ系作品で、スローライフしてるのほぼ見たことないがな』
と、現実にすっかり染まってしまったフェンリルがおっしゃります。
まあ、確かに。マジでスローライフしてないよなああいうのって。
スローライフ願望があっても、次から次へと厄介な出来事が襲い掛かってくる。
「まさに今この状況がそうか……」
『うむ、あきらめろ』