18.冒険者登録で魔力測定
行商人のネフレさんにマッチを250万ゴールドで買い取ってもらった後……。
俺は彼女と一緒に、冒険者ギルドの前までやってきた。
「ここがヌウォーマの街の冒険者ギルドさ」
ほっくほく顔のネフレさん。
俺からマッチを買いとったことがそれほどまでにうれしいことだったのだろう。
正直、500円のマッチを250万円で買ってもらったことに対して、結構な罪悪感がある。
だが彼女はこの値段で納得してくれたし、俺も納得してる。
お互いが対等だと思っての取引が成立しているのだ、これ以上の言及は控えておこう。
「ネフレさん、いろいろアドバイスありがとう」
「いやいや! 気にしなくていいよ、儲けさせてもらうからね! このマッチで! あっはっは!」
裏表のない姉ちゃんだ。
あっさりしていて付き合いやすい。
「将来有望、おまけにこんな顔のいい兄ちゃんだ、結婚してなきゃ今頃、求婚してたとこだね」
「ネフレさん人妻だったのか……」
「おうよ! 子供もいるさ。5人もね」
こ、こんな若くてきれいなのに、結婚してて五人の子持ち!? す、すげえ、異世界……日本といろいろ違うんだな。
「で、ネフレさん。話戻るけど、商業ギルドには登録しないほうがいいってまじ?」
「おうさ。商業ギルドは、街で店を開くときにはいろいろ融通が利いていいんだけど、行商をするなら別にギルド登録しなくてもいいのさ。むしろ所属してると、ギルドに売り上げの何割か取られちまうしね」
なるほど。俺は別に今は店を構えるつもりはない。
各地をぶらついて、日銭が稼げればそれでいい。
露天商を出す際の役場での手続きについては、さっきネフレさんから無料で教えてもらったのだ。
「町の出入りに無駄金取られるのが嫌なら、商業じゃなくて冒険者ギルドに登録したほうがいいよ。冒険者は商業とちがって入会テストがあるけど」
「て、テストかぁ……大丈夫かな」
ぽかん、とした表情になるネフレさん。
え、なに?
「本気で言ってるのかい?」
「ええ。だって冒険者なんて初めてなりますし」
「んー……なるほど。まああんま深く突っ込まないでおくよ」
なんか変な反応されたけど、彼女は「あんたならできるさ」といって背中をバシバシたたいてくれた。
少し元気出た。よし頑張ろう。
「ほいじゃ、行くかね」
ネフレさんは俺を連れてギルドに入る。
そこには、ザ・冒険者ギルドって感じの光景が広がっていた。
手前には酒飲んでいる人たちがいて、奥にはカウンター。
壁には依頼書がいくつも貼られてる。
異世界物のラノベやアニメで見たまんまだ。すげえ……。
「手続きはこっちさ。おおい、エミリー」
「うぃ~」
けだるげな表情の、これまた美女がひらひらと手を振る。
カウンターに肘をついて暇そうにしていた。
「彼が冒険者登録したいそうだ」
「はいはい、じゃこの紙……に……」
エミリーさんは俺を見て、ぽかーん……と口を大きく開く。
ぱくぱく、と口を開いた後、顔を真っ赤にして言う。
「ど、どど、どうぞこのペンを使って、この用紙にご記入ください! あ、字は書けます? 今ならあたしが無料で書きますけども!」
なんかめっちゃ顔真っ赤にして、食い気味にそう言うエミリーさん。
な、なんだこの反応……?
『(主の顔があまりに良くて、照れておるのだろうな)』
俺の脳内に、女の声が急にした。スキル明鏡止水がなきゃびっくりして声に出していたとこだった。
『(おお、すまない。吾輩はいま念話で話しているぞ。テイムモンスターとは念じるだけで会話できるのだ)』
そう言えばテイムしたモンスターとは五感を共有できる。それを応用しているのだろう。
「(顔が良いって、俺の顔は普通……あ)」
『(そうだ。主は吾輩と契約して存在進化しておる。この異世界でも、おぬしの顔は現実で言うところのイケメン、しかも超がいくつも着くレベルだからな)』
なるほど、だから受付嬢さんは照れていたのか。
「あ、冒険者はじめてですよね! あたしが説明させていただきます! 応接室があるんで、そっち行きましょう! 飲み物も出しますよ!」
い、イケメンだとこんなに優遇してくれるのか……。
世の顔の良い奴らはいいなぁ……。
『(おぬしもその一人だがな)』
ちなみにフェリが何で念話で話してるかというと、しゃべると神獣だってバレてしまう危険性があるからだそうだ。
モンスターはランクが上がれば上がるほど知性が高くなる。
しゃべれるほどのモンスターともなれば、かなりの高ランクモンスター扱いだそうだ。
神獣を連れて歩いてるってなれば、今の比じゃないくらい面倒ごとが増えるだろう。
だからフェリの配慮は素直にうれしかった。
さて。
俺はエミリーさんに応接室に案内してもらう。
ネフレさんは用事があるといって離れていった。
エミリーさんは一旦引っ込んで、随分と経ってから戻ってきた。
「おまたせしましたっ!」
さっきの気だるげ、だるそうな雰囲気から一転、化粧バリバリで、服装もびしっとしている。
メイクと服装が違うだけで、敏腕受付嬢に見えるから、女性って不思議だ。
てゆーか何してるんだろうと思ったらメイクとかしてたのか……何待たせてるんだよ……。
『(ぬしに好かれたいからめかし込んでいたのだろう。主がそれだけ強く魅力的なオスであるという証拠だ)』
鼻高々にフェリが言う。そういうもんかね。
「さささ、どうぞこちらに必要事項をご記入ください! あ、わからないことがあったら、どんっどん聞いてくださいね! あたしの連絡先も教えちゃいますよ!」
「ど、どうも……」
しかしこの先も毎回、こんな感じの扱いを受けるのか。
ううーん、まあ悪い気はしないんだが、疲れるなぁ。贅沢な悩みかもしれないけどさ。
俺はエミリーさんからもらった用紙にざっと目を通す。
異世界の言葉で書かれているが、まれびとの称号のおかげで普通に読める。
記入するべき項目は、
・名前
・年齢
・職業
・特技
とあった。なんだかざっくりとした内容だ。
いいのかこれで……。
俺はカイト・イイヤマ、年齢は24と記入する。
不思議なことに、日本語で書いてるつもりが、書面には俺の全く知らない言葉で文字が書かれていた。ううん、不思議。
「職業……」
俺の職業ってなんだ? ニート? 無職?
いやいや……。
あ、そういや確か称号を得たな。
「賢者と調教師……っと。特技は……全属性魔法と、無属性魔法全種と」
俺は書いた紙をエミリーさんに提出する。
「お疲れ様でした! マッサージでもしましょうか? エッチなマッサージも喜んで!」
「え、遠慮します……それより、目を通してください」
すんごい肉食系だなこの人。
最初会ったときはなんかダウナーな感じだったのに……。
俺がイケメンになってるからか? 顔が良いやつはほんとに得してたんだなぁ……こんだけチヤホヤされるなんて。ちくしょう。
さてエミリーさんは用紙に目を通していく。
だが、小首をかしげる。
「どうしました?」
「あ! いえ! 決して不備ってわけじゃあないですが! その……気を悪くしないでほしいんですが……」
すっ、とエミリーさんが用紙に指を伸ばす。
「職業は1つで大丈夫です。それに、賢者は……その、あの、」
「あ、一個でいいんだ。賢者は?」
「あ、いえ……その、あまり見栄を張らない方がいいと……あ! もちろん否定してるんじゃなくて、賢者と言えば神域の八賢者様たちのことなので、これに書くと混乱を招くかなーっと」
なるほど……賢者は書かない方がいいのか。
あんま目立ちたくないしな。そもそも冒険者として活躍するつもりはないし(金に困ってるわけでもないし、目的もないし)。
「それと特技ですが……こちらも正直に書いた方がよろしいかと……」
「いや、全部マジなんだけど」
「え、ええーー……と。ええーっと……と、とにかくあまり大きなことは言わない方がいいです。平気で悪口言ってくるひともいますし」
なるほどな。じゃあやめとくか。
フェリはくくく、と笑っていた。なにがおかしいんだろうか。
「後ろの大きな犬のモンスターはテイムモンスターとして登録しておきます。名前はありますか?」
「フェリです」
「フェリ! ああ! 素敵なお名前ですね! センスがあるっていうか、ほんとにかっこいい名前をおつけになられますね!」
ああ、フェリの名前を褒めてるんじゃなくて、俺のことほめてるのか。ほんとなんでも肯定されるな。
「では、続いて冒険者の適性テストを行います」
「適性……テスト?」
「はい。1.魔力測定、2.魔法戦闘試験、3.物理戦闘試験の3つです」
エミリーさん曰く、それぞれ魔力を測るテスト、魔法攻撃に対する対応力のテスト、1対1での戦闘力を見るテスト、の3つらしい。
「ではまず、魔力の測定から行います。こちらをどうぞ」
テーブルの上に水晶玉が置かれる。
「これは魔力測定水晶です」
「読んで字のごとくか。これに触ればいいの?」
「はい。魔力の多い少ないが光の強さと色で描写されます。光がより大きく鮮やかな色であれば体内魔力が多い感じです」
「これ、でも魔力が多すぎると水晶玉って壊れそうじゃないか? ガラスっぽいし」
「大丈夫です! その水晶玉は、絶対に壊れないので」
じゃあ安心だな。
俺は魔力測定水晶に触れる。すると……。
カッ……!!!!!
「な、なんて強く、鮮やかな光! まるで太陽みたい……!」
ぴし、ぴしぴしぴし……!
パリィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!
「ええええええええええええええええええええええええええええ!? す、水晶が割れたぁああああああああああああああああああああああああああああ!?」
しまった、粉々に砕け散ってしまった。
壊れないって言ったのにな……。
「す、すすすすごすぎますカイト様! ものすごい魔力量ですよー! すごすぎますー!」
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