175.取るに足らない
息抜きのため、異世界へとやってきている俺。
ばーさんの屋敷にて。
「界人よ。これからどうするんじゃ?」
ばーさん(幼女姿)が尋ねてくる。これからなぁ。別にやることは向こうでもこっちもでもないんだが。
「まー……しばらくこっちでのんびりしよっかなぁーって」
現実はナガノカミ、ナガノカミとうるさいしな。
「おお! そうかそうか。ゆっくりしていくんじゃぁ~♡」
ばーさんすんごい嬉しそう。まあそりゃそうか。孫ラブなばーさんだもんな。
俺は別にばーさんが嫌いではないので、ばーさんが喜んでくれて嬉しい限りである。
「ずっと家にいてもいんだが、たまには狩りでもしてみようかな。魔法ぶっ放してストレス解消みたいな」
「そうかそうか。気ぃつけるのじゃぞ。最近、よからぬものがうろついてる」
「ん? よからぬもの……?」
なんだろう、魔物かな?
「元々じゃが、こっちも物騒になってるということじゃ」
「ふーん……」
魔物の活性化とかそういうことかな……?
まあ別にあんま興味ない。ただ魔法ぶっぱする相手がいるなら、もうそれだけでいい。
『くくく……』
……と思ったんだが、フェルのやつが意味深長に笑ってやがった。
「おい駄犬」
『はて、誰のことかな? 我は誇り高き神狼』
「おまえだよおまえ。なんで笑ったんだ?」
『くく……さぁてなぁ』
絶対ロクデモナイことが起きるやつじゃんやだー。
俺もバカじゃあない。こいつが笑ってるとき、たいてい、何か俺が気づかない何かが起きてる(あるいは間違いを犯してる)のだ。
この犬は、俺が翻弄される様を見て愉悦をおぼえる、ちょっとSな犬なのである。
「言いなさい」
『さぁてなぁ。そこのババアに聞いてみたらだろうか?』
はて、とばーさんが首をかしげてる。
「どうした可愛い孫よ」
「さっきのさ、よからぬものってなんなん?」
「む? ああ、取るに足らぬ雑魚がうろついてるから、多少面倒がかかるだろうけど、まぁ、我が可愛い孫ならなんなくやっつけるじゃろうなと」
取るに足らない雑魚か。
なーんだ、そんなに心配しなくて良いやつだな。
フェルが(^^)みたいな顔をしてた。なんだその顔……。
『温かく見守るとしよう』
「温かくって……」
『温かい目……』
うーん、こいつが何考えてる(企んでる)のかいまいちわからんな。
多分さっきのよからぬ物と関わってるんだろけど……。
でもばーさんは取るに足らないっていってるし、そこまで気にしなくて、いいのかなぁ~。