172.それゆけながのかみ!
……悲報、なんかおれがアニメになっていた件。
県のやつがアナウンサーをやってるテレビ局で作られてるらしい。
内容は、毎回長野神のもとにトラブルが舞い込んできて、それを解決する、といった内容……。
『なんだ結構史実に忠実にアニメ化されてるではないかぁ、なぁ主ぃ~?』
こんの、くそ犬……。
楽しんでやがる……!
「しかし荒唐無稽な内容だな。俺がいつ、病院に入院してる患者全員を治し、火山の噴火を未然に防いだっていうんだよ。なぁ?」
『くくく!』
フェルのやつがまた意味深長な笑いをする。
ぼくしってる! この笑いしてるとき、ろくなこと起きないって!
「まさかマジでやってたの、俺?」
『さぁどうだろうねえ~?』
……この犬は俺の相棒なのだが、どうにも俺に味方してくれる気はないらしい。
自分の楽しいが優先のようだ。俺が困ってる姿を見て喜んでいる様子。くっそ、ドSフェンリルめ!
『しかし主もついに全国デビューか。良かったなぁ』
「よかねえよ……ったく。まあ幸い、こんな荒唐無稽な内容だから、誰も現実のことって信じてくれてなさそうでよかったけど……」
『くくく……!』
また笑いやがった……!
『ところで主よ、ツイッターやってるか?』
「あ? マンガ編集時代はやってたけど、今はやってねえな」
『くくく、そうか。なら面白いものをみせてやる』
フェルのやつが見覚えのないスマホを、ちゃぶ台の上にのっけてくる。
「なにこれ?」
『無一郎からもらったスマホだ。何かあれば掛けろと』
……無一郎。ああ、公安の刑事さんか。
あいつといつのまにホットラインができてたんだ……?
フェルは鼻先で器用に画面を操作する。
てゆーか、こいつアカウントとってやがった……。
『我のタイムラインだ。ほれ』
「って、えええ!? なんじゃこりゃ!」
【♯長野神】がトレンド上位に入ってるじゃあないか!(さすがに世界トレンド2位だけど。1位は♯ワインの兄貴ってやつ)
「そんな流行ってるのこれ!?」
『うむ……世界中の人たちが、主のご活躍に期待してるようだなぁ。くっくっく!』
「ご活躍って……アニメだろ。現実の俺の活動じゃあない」
『くく……その理屈が通用しない連中もいるっていうことだよ……くっくっく!』
……フェルの野郎、めっちゃ楽しそう。
「そんなにご主人様が困ってるのがたのしいかい?」
『愉悦極まりないなぁ』
メシを抜いておこう、この犬。
しかし……どうしたもんか。また【忘却】しないといけないか……。