170.ハリウッド女優ゲットだぜ
俺は自殺しようとしていた豊野悠乃を助け、仕方なく、山の中に帰ってきた。
「おかえりっすー…………うぅう!?」
縁側で絵を描いていたのは、俺の同居人、なぎ。
彼女が俺の隣にいる悠乃を見て、驚愕に目を見開いた。
「か、かかか、界人さん!?」
「どしたよ」
「ななな、なんでUNOさんがいるんすか!?」
「はぁ? UNOぉ?」
なにそれ?
だだだっ、となぎが近寄ってきて、悠乃の顔をじっくりと見つめる。
「ま、間違いないっす! ハリウッド女優……UNOさんっすよぉお!」
「はぁ……はぁ?! は、ハリウッド女優ぅううううう!?」
女優って、マジか!?
まあ確かに、顔は整ってるなぁくらいには思ったけど……。
まさかハリウッドでって……え?
「に、日本人だよなこいつ」
「そっす! 日本人であっても、ハリウッドで超人気の女優っすよ! 日本でも海外でも評価が高いっす! その美貌と、凄い演技力と、そして天女の声とも言われる歌唱力! 三拍子そろったスーパー大女優! それがUNOっす!」
……へ、へえ。
そうなんだ……。
「界人さんどこでひろってきたんすか!?」
「いやなんか、自殺しようとしてたから……」
「ふぁあ!? UNOが自殺!? どうして……?」
すると今まで黙っていた悠乃が、目を伏せながら言う。
「……信頼していたマネージャーと、婚約者に、裏切られてしまって……」
事情はこんな感じ。
彼女は元々人間不信なとこがあったそうだ。
でもそんな彼女を支えてくれた女性マネージャーと、悠乃と同じ立場にいて支えていた男優の男とが、浮気していたそうだ。
信頼する二人から裏切られたUNOこと、豊野悠乃は自殺を決意。
故郷であるここ長野県の松本に帰ってきた……と。
「テレビでも報道されてないっすよ……そんな大スキャンダル……」
「……つい先日のことでしたから。でも
、もういいんです」
「ふぇ? どういうことっす?」
悠乃は頬を赤らめると、俺の腕をつかんで、ぎゅっと抱き寄せる。
で、で、でけえ! 胸でかすぎだろこいつ!
「……新しい、生きる意味を見つけましたので♡」
……どうやら俺は、とんでもないやつを拾ってしまったようだ……。
てか……。
「おい犬」
『ん? なんだ主よ。我のこと忘れたのかと思ったぞぉ』
にやにやと笑うのは、フェンリルのフェル。
「おまえ、わかってたな? こいつがUNOだって」
『さー、なんのことかなぁ。さ、テレビテレビ~♪』
フェルはリビングへいくと、ハナでスイッチをつける。
ごろんと寝そべってワイドショーを見ていた。
『おー、我が主~。ちょうどそこのUNOが失踪した事件が、テレビで報道されてるぞぉ~』
……こいつ、絶対わかっててやってやがった!
チクショウ!