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17.ただのマッチがとんでもない金額で売れる



 俺とフェンリルのフェリは街へ到着した。

 街に入るたび入場料を取られてしまうらしいので、ギルドに登録しようとしたのだが、どちらも登録料が必要とのこと。


 金を稼ぐため、日本の便利グッズを販売することにしたのだった。


 街の中心街にはマーケット、つまり商店がいくつも並んでいる。

 また、今日は天気がいいからか、露天商も結構な数がいる。


「営業許可とかっていらないのかな?」

『人間の生活のルールなんぞ知らん』


 そりゃそうか。フェリは神獣だものな。

 俺は周りを見渡す。


 露天商たちは敷物を地面にひいて、その上にアイテムとか、瓶とか置いている。

 空いてるスペースを見つけて、そこへ行く。


 隣で暇そうにしてる露天商に声をかけてみた。

 20代前半くらいの、姉ちゃんだ。


「あのーすみません」

「ん? なんだい兄ちゃん」

「俺も露天でもの売りたいんですけど、営業許可っているんですか?」

「ああ。おたく、商業ギルドの登録は?」

「それがまだでして」

「なるほど。ふぅむ……」


 じろじろ、と露天商の姉ちゃんが俺を、上から下へと見やる。


「うん、うん。うん」


 なんだそのうんうんは?


「兄ちゃんよそから来たのか。じゃあ教えてあげよう。ギルドに登録すれば営業許可をとらずに商売できる。が、ギルド無所属で物を売る場合は、役場に営業許可を申請し、登録料を払わないといけない」

「げ、役場なんてあるんですか……」

「ふむぅん……ふむふむ」


 姉ちゃんが俺を見て、「うん」とうなずいた。


「なあ兄ちゃん。あたいと手を組まないかい?」

「手を?」

「おっと警戒しないでおくれよ。別に犯罪に手を貸せとかそういう意味じゃない」


 とはいえ、ちょっと気になったので鑑定スキルを使う。


■ネフレ・ベックス

称号:行商人

スキル:予見


 ぴこん♪

 ばあさんからのラインだ。


【盗賊や悪いやつらは、称号に表示されるよん♪ 称号をスキルで隠蔽できるけど、カイトの持ってる鑑定スキルは最上級のものだから、隠してるスキル全部オープンにできるからねん♪】


 困ったときにいつもばあさんが助言をくれる。さんきゅー。

 で、称号、か。なるほど悪人は悪人って称号に出るのか。便利だな。


 となるとこの娘……ネフレさんは悪い人じゃない。

 なら提案に乗ってもいいかも。


「具体的にどうするんです?」

「簡単だよ。あんたはあたいのスペースで物を売る。そんだけ」


 なるほど、ネフレさんは営業許可を取ってここで物を売ってる。

 ここで売れば、俺が新しく営業許可を取らずに物を売れるってわけか。


「見返りは?」

「あんたが売ろうとしてるもの、1つ、あたいにくれればそれでいいさ」

「それって、あなたに得があるんですか?」


 にやり、とネフレさんは不敵に笑う。


「ああ、あるさ。あんたはすごいやつだって、あたいのスキルがそうささやいてるの」


■予見(B):物事の重要な分岐点となるときに、それを所有者に教える。未来の情報を教えるわけではない。


 なるほど、予見スキルか。結構便利だな。

 つまりスキルが、俺と手を組んだことで、重要な分岐となると教えてのだろう。


 だまそうとしているわけじゃない。この子は自分の利益になると思って、俺と手を組まないかと提案してきてるのだ。

 称号に悪人って書いてないし、こんなレアなスキルを持っている。


 さらに行商人ってことは、いろいろ詳しく知ってるだろう。

 手を組んでも、悪くない。


「わかりました。それで手を組みましょう」

「おお! さっすが話わかるね。あたいはネフレ。あんたは?」

「カイトです。こっちは相棒のフェリ。テイムモンスターですので安心してください」


 フェリはやり取りに興味がないのか、くわーっとあくびをしていた。


「へえ、ふんふん。ふふふ、あたいにもツキが回ってきたねこりゃ!」


 ネフレさんはなんか感づいたようであった。

 フェリがフェンリルだと気づいたのか?


「じゃさっそく物を売ろうか。何を持ってるんだい?」


 ネフレさんが新しい敷物をしいて、俺が座るスペースを作ってくれた。


「今持ってるのは、3種類ですね」


 現実のホームセンターへ行ったときに、買い物をしておいたのだ。

 異世界で物を売るときを想定して、とりあえず3種類。


 マッチと、角砂糖と、缶詰め。

 

 効果がわかりやすいものをチョイスした。マッチは簡単に火がつくし、角砂糖はなめれば甘いし、缶詰めは、まあ冒険者たちって野営するイメージあるから、保存食がうれるかなって。


「! ほ、ほほぅ……に、兄ちゃん今、なんもない空間からこれら取り出したね?」

「え、あ、はい。アイテムボックスってスキルなんですが」

「ほ、ほほほほう! そうか、アイテムボックス持ちか! へえ、それはますます、商人に向いてる!」

「アイテムボックスってそんなレアです?」

「まあね。とはいえ100人に一人くらいのレアリティさ。ただ、容量に限りがあるけどね」

「え? 限りなんてあるんですか?」

「!?!?!?!?!?」


 あれ? ネフレさんがものすごく驚いてる。


「に、兄ちゃん、あんまりそのことは口外しないほうがいい」

「そうなんです?」


 ネフレさんがきょろきょろと周りを見て、声を潜めながら言う。


「……ああ。容量無制限のアイテムボックスなんて、この世界で持ってる奴はいない」

「ま、まじですか!?」


 そんなレアなスキルだったのかこれ。


「……兄ちゃん、あんたやっぱり、ただもんじゃあねえな」


 確信めいた言い方を、ネフレさんがする。


「予見スキルがびんびんに反応してた。それにその着てる服、そうとうなレアもんだろう。そして後ろの大きい犬も、またレアなモンスターだと見た」


 あってる。やっぱり、この人かなり目がいい。


「おっと、余計な詮索はしないよ。あんたとはビジネスパートナーだからな!」

「助かります。で、これら売れそうですか?」


 敷物のうえに置いたマッチとかを、ネフレさんがしげしげ見やる。


「こんなアイテム、今まで見たことない。まずこの箱? なんだ?」

「これはマッチといって、誰でも簡単に火が付くアイテムです」

「ま、まさかぁ~」


 俺は箱から1本マッチを取り出して、しゅっ、とこする。

 小さな灯がマッチの先にともる。


 どさっ!


「え?」

「な、な、な!? な、なんだそれはああああああああああああああああああ!?」


 ネフレさんが腰を抜かしていた。え、そんなに驚くこと?


「に、兄ちゃんこれ魔道具マジック・アイテムじゃあないだろ!」


 魔道具とは、魔力を使う便利アイテムのことらしい。


「はい。ただこすっただけですが?」

「す、す、すごい……! 魔法も、魔力も使わず、火をおこすなんて!」


 ネフレさんがわなわなと口元を震わせている。

 そんなに驚くことか?


 魔法が当たり前にある世界じゃ、火を起こすのだって現代より簡単だろうし。

 てっきり、火の魔法使えばいいじゃーんとか言われるのかと思ったが。


「に、に、兄ちゃん! これ! いくつある!?」

「え、10箱ですけど」

「全部! 買う! 言い値で買い取るから! 全部ちょうだい!」


 ま、まじか。一気に全部売れてしまうとは。

 しかし言い値って言われてもわからないな……。


 そういや、門番さんは5000ゴールド、入場料がかかるって言っていたな。


「じゃあ5000ゴールドで」

「な、な、なぁああああああああああああ!?」


 さすがに徳用で10箱500円とかで売ってたものを、5000ゴールドで売るのはぼったくりだったか……。

 まあ1円が何ゴールドか知らないけど。


 ぴこん♪


【1ゴールドはだいたい1円だよん♪】


 さすがばあさんの知恵袋、ありがたい。


「に、兄ちゃん! さすがにそれは無理だよ!」

「あー、やっぱぼったくりすぎますかね? 高すぎってこと?」

「安すぎるって意味だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 あれ、そうなのか?


「魔力も魔法も使わず、特殊な技術も必要なく、火を簡単につけることができる。こんな希少価値のたかい、歴史的超発明品を、5000ゴールドでなんて買えるわけがない!」

「歴史的超発明品って……大げさな」

「大げさなものか! これが出回れば、歴史が変わる。そんなレベルでやばい代物だよ!」


 まじか。そんなにか……。


「100万はどうだ?」

「ひゃ!?」


 500円で買ったものが、100万円になるだと!?

 どんな錬金術だよ!!!!!


「すまない、安かったね。200万でどうだ!?」

「にひゃくぅう!?」

「くぅ! まだ低いな、よし、じゃあ250万で……」

「いいっていいって!もうそれで!」


 しかしまじか。500円で買ったマッチが、250万円になるとか……。

 こんなに楽してもうけてもいいのか? 


 毎日あくせく、ブラック企業で必死に働いて、手取りで20数万円とかもらってたのが、バカみたいじゃないか……。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公も大分迂闊だなー これで本当に仕事出来たんだろうか? 単にお人好し故に仕事抱え過ぎてただけだったんか? とても有能だったように見えない んでまたハーレム候補が増えたんかな?W
[良い点] 古き良き?時代のころの伝説的なろう小説を思い出しますねw 肉の両面焼き、椅子とテーブルの発明、情報の売買、etc あえてそういう風に書いているのかなという展開でクスリとしますw
[一言] テンプレ通りの展開は安心して読める。こういう王道がいいんだよ。
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