163.県名すら変えてしまう神
《界人Side》
異世界での面倒ごと、ぜーんぶ済ませて、現実に帰ってきたぞ!
「はぁ~……しふくぅ~……」
俺は庭にできた温泉に浸っていた。
神ども(小動物)たちは、出払っているらしい。
ちょっと前まで、俺んちの庭にできた露天風呂に、神の連中は入りに来たのに……。
どうしていないんだろうか。
「ま、静かでいいけどさ」
俺は温泉からあがって、体をふきふき。
下駄を履いて、屋敷へと向かう。
「しばらく異世界で忙しかったから、現実ではスローライフするぞっと」
決意を改めて口にする。
どーにも最近忙しい。現実でも、異世界でも。
現実で神とか練能力者とか殺し屋とかにからまれて、めんどうだったから、異世界に逃げたのだが……。
今度は異世界では、勇者だのダンジョンだの、エルフだの神だのにからまれて……まあ、面倒な事態になっていた。
なんか向こうでもこっちでも、神にからまれてるな俺……。
つーか、向こうの神とこっちの神って、ややこしいわ。
神が二種類もいてめんどっちいことこのうえねえ!
……はぁ。
ま、その神の連中も今居ないし、現実ではゆっくりしよーっと。
『おお、主よ。風呂から上がったか』
「フェリ……」
お茶の間にある、テレビの前に、どでかい白い犬が伏せていた。
こいつは神獣フェンリル。
名前はフェリ。
俺のまあ……いちおう相棒的な存在だ。
ほぼなんもしないけどな、こいつ。
「何やってんのおまえ」
『テレビだ。くく……今すごく面白いことをやっててなぁ~……くくく!』
なんだろう……すごく、嫌な予感がしますな……。
このフェンリルが、いじわるい笑みを浮かべるとき……。
たいてい、俺に関する、厄介ごとだったりする!
「テレビで何やってんの?」
『ニュースだニュース』
「ニュースぅ……」
すると、画面には見たことのある美女が移っていた。
「なんだっけこいつ……? 見たことあるな……」
『県だよ。県 清美』
「ああ、県ね……」
新興宗教のさわぎのときに、関わったことがある。
なんかそういや、転職した……んだっけ?
「あんま重要人物じゃあねえから、忘れてたわ……」
『くくく! ではこれからは、忘れられなくなるなぁおい』
なんでだよ?
フェリは鼻先を、テレビ画面の隅っこ、テロップにむける。
【長野県県知事、県名を神州に改名を決定】
……はい?
県名を……改名?
『本日、長野県知事である安倍 守氏は、長野県の名前を、神のおわす国、神州へと改名を表明いたしました』
……はい?
はいぃいいいいいいいいい!?
「神の居る国……神州ぅううううううううううううううううう!?」
え、なに!?
長野県、名前変わったの!?
「なんで!?」
『ニュースで言ってるではないか、なあ、長野神さん?』
俺が原因かよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」