142.迷子
ダンジョンを攻略していってる最中。
俺はふと……子供の泣き声を耳にした。
「なんだぁ……?」
声は奥の方からした。
……ううん。めんどうだ。
だがこんな地下を放置するのはなぁ。
明らかに泣いてるし。
仕方ない。助けに行くか。
聞いてしまった以上、無視できないしよ。
『やさしいなぁ、主は』
「うっさい」
やがて歩いていくと、そこには宝箱があった。
宝箱に身体を突っ込み、ジタバタと足を震わせてる子がいる。
「出られなくなったのか?」
『おそらくな』
まったく面倒だ。
俺は子供の足を掴む。
「ま、待つのじゃ! おそらくその宝箱はミミ……」
「てい」
子供の足を、ズボッと引き抜く。
どがぁん! と割と大きな音を立てて、宝箱がぶっ壊れた。
俺は子供の足を引っ張った状態で、顔のあたりまで持ってく。
つり上げたマグロみたいだ。
「大丈夫かおまえ?」
「うきゅー……」
子供は気絶してるようだ。
やれやれ、目ぇさますまで面倒見てやるか。
「……黒い角。まさか、この子供……!」
『くくく……主はよほど災難に好かれてるようだなぁ』
確かにこの気絶してる子、変な角はえてるけど……。
ま、ファンタジーだしな。
角の生えた子供くらいいるさ。