135.五平餅
現実でのあれこれに疲れた(アニマルズのせい)ので、異世界に癒やしを求めて、転移する。
『最近すっかり、立場が逆転になったな』
「というと?」
フェリがにんまり笑って言う。
『以前は異世界に刺激を、現実の田舎でスローライフをって感じだったのにな』
「あー……確かに」
今じゃ現実の方が色々あって面倒だ。
一方で、異世界の方がのんびりできる。
「のんびり畑でも耕すかな、なんて」
『して、主よ。今日は何を?』
「ま、暇だったからきただけ。ばーさんたちにお土産持っていく」
『ほう、おみやげ』
俺は異世界にある、館の地下へとやってきた。
そして……。
「ああ、遅いよん! イーちゃん! ヘルパーは星になってついてこれるんだから!」
「わからんのじゃ! やり方を教えるのじゃ!」
ばーさんと、イージスが、テレビの前でゲームやっていた。
昔懐かしの、2Dゲームだ。
「ほれ、あたしの能力を使え!」
「ああ! 勝手にヘルパーの能力をかえないでほしいのじゃ!」
二人とも歳食ってるからか、結構仲が良いのである。
「おいっす」
「おー! カイトよ! どうしたんだい?」
ゲームを一時ポーズして、万里ばあちゃんがニコニコしながらやってくる。
んっ、と両手を伸ばしてくる。
どうにもばあさんが、孫に見えるんだよなぁこれだと。
ばあさんは幼女の姿をしてる。
だがこれは別に、真の姿ではない。
彼女は魂だけの存在となってるので、肉体の形は不定形、らしい。
「お土産持ってきた」
俺はアイテムボックスから、パックに入った【それ】を渡す。
「こ、これは……!? ご、五平餅じゃないかい……!!!」
ばーさんがちょー嬉しそうに、五平餅を手に取る。
竹串に、餅米を巻いて、上からたれ塗って焼いたもんだ。
まあ団子みたいなやつ。
『吾輩の分はっ? 吾輩のはないのかっ?』
「はいはい、たくさんあるから。イージス、おまえのもあるぞ」
じろ……とイージスが俺をにらんでくる。
だが直ぐに近づいて、手を伸ばしてきた。
「また珍妙な食い物じゃな……」
「食ってみろって。旨いから」
訝しげな眼差しを向けながらも、イージスが五平餅をパクッと食べる。
「!?」
彼女の目がくわっと見開かれた。
「う、美味いのじゃ……なんだこれは! もちもちとしてて、うまい! 甘塩っぱいタレがよくあうのじゃ!!!!」
がつがつ、とイージスが五平餅を食べ終える。
フェリはもう二本目食っていた。
「どうだ?」
「ふ、ふん……! べ、別に……まあ、く、食えなくはないかの!」
物欲しそうな顔をしながら言われましてもねえ……。
「おかわり?」
「…………」
「欲しいなら欲しいって言わなきゃほら」
「うぐ……ほ、欲しい……のじゃ」
実に悔しそうにしながら、イージスが言う。
このエルフ姫さん、人間が下等だって見下してるところあるんだよね。
「ほらよ」
「はぐっ! むぐむぐ……うう、うまいのじゃ……」
「え? なんだって?」
「美味いといったのじゃ!!!!」
まあそう言ってもらえるとうれしいよな。
作った冥利につきるっていうかさ。
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