132.神の居る県 長野県
界人がやらかした(定期)、数日後。
都庁。
公安の刑事、贄川 無一郎は、公安のデスクで仮眠を取っていた。
「おい、変身者」
「んが……なんだ……見晴者か……」
無一郎が見あげると、そこにはジャージを着た女が立っていた。
鋭い目つきに、ジャージに眼鏡という、粗野なのか真面目なのかがよくわからない風体。
彼女は見晴者。
たかい監視能力を持った、公安の目である。
「リアルで会うの久しぶりだね……ふぁあ……」
「そうだな。今文化祭が終わって、ちょっと学校行事が一段落したんでな」
見晴者が椅子にどかっと座る。
公安の刑事でもある見晴者は、一般市民に溶け込んで、日々監視を行っている。
彼女は都内にある某学園で、教師を演じる傍ら、刑事の仕事をしている。
「お疲れだね変身者」
「ああ……最近全然帰れてなくってね……」
毎日のように、飯山界人がやらかすせいで、その事後処理に奔走させられているのである。
「そのうち、離婚とか言われないかい?」
「大丈夫さ。僕の愛するハニーは、僕に首ったけだからね」
「くびったけって……古いな表現……」
無一郎は起きて、ラインを妻に送る。
「マメだね」
「そうかい?」
「夫婦仲を保つ秘訣的な?」
「どうだろう……僕もハニーも理由が無くてもラインするからね」
「たとえば?」
「事務所がドロドロでヤバいとか」
なんだそれは、と見晴者がため息をつく。
「どうやらハニーの会社、VTuberの事務所なのだけど、女性関係でとても大変そうで」
「ふーん……大変だね」
とても興味なさそうにつぶやく見晴者。
「そんなことより、見たかい、ニュース。また長野神が有名になっていたよ」
「またか……」
長野神。
飯山界人のことだ。
界人が神の力を手に入れたことで、さらに注目を浴びているのだ。
「彼はニュースみないのかな? これだけ連日ニュースで騒いでるのに」
あるぴこTVをつける。
ニュースキャスターの県清美が、今日も元気に、長野神の偉業を伝えている。
『怪我人が長野県に入った瞬間治った』
『目の見えない人が、長野に入った瞬間見えるようになった』
等々。
「見たところで、眉唾にしか思えない内容だしね」
「ところがどっこい、変身者。これが全部ほんとなんだ」
そう……ある時を境に、長野県には何か、聖なる力的なものが充満するようになったのである。
「怪我はなおり、病気もなおる。神のおわす国……神州なんて言われてるからね、ネットでは」
見晴者がスマホをいじる。
5chでは長野神のスレが立つほどであった。
「神州、ねえ……」
無一郎がぐったりしてる。
また、噂の火消しに東奔西走しなければいけないと思うと、ため息が出た。
「界人君は、もうちょっとおとなしくしてくれないかな……」
「おとなしくしてても、周りに影響を及ぼすんだよ、彼の場合は」
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!




