127.神の耳
さて。
世界扉ごしに会話が繰り広げられている。
アーニャは現実から異世界への渡航を望んでいる。
俺がいれば行くことはできるが、自由に暮らせるわけでもない。
「そんな……」
「フォージアよ。ぬしはもうそっちの世界の住人じゃ。こちらのことは気にせず、好きに生きる道を選んだ方がよい」
「でも……姉様。あたしには、もう何もない……あたしには姉様しか……」
そのときだった。
『アーニャ!』
ん?
「なんだ……」
『どうしたのだ主よ?』
フェリが俺に尋ねてくる。
「いや……なんか変な声が……」
『アーニャ! どこにいるの! アーニャぁ!』
……ふむ。
さっきからアーニャの名前を呼ぶ、女の声が響いているのだ。
え、なにこれ?
コワ……。
『どこ!? あーにゃぁ!』
「な、なあ……アーニャ。あんたを探してる人に、心当たりいるかい?」
何を唐突に、と目を丸くしてるアーニャ。
「なんか探してる人いるっぽいぞ」
「……確かにこっちの世界での、姉がいるが」
「へえ、姉」
なんだよ、こいつ。
ちゃんと心配してくれる、姉ちゃんがこっちでもいるんじゃあないか。
それを捨てて異世界へ行こうとしていたのか?
ったく……自分勝手だな。
しかしどうしよう。
引き合わせたくても、
「きゃあ!? え、なになに!? どうなってるの!?」
「「「ええー!?」」」
そのとき、俺の目の前に、小さな女性が突如として現れたのだ!
「あ、あんたは……?」
「た、ターニャ・贄川です……」
贄川……?
無一郎と同じ名字……じゃね?
「! アーニャちゃん!」
ターニャが涙を流しながら、アーニャに抱きつく。
そのままおいおいと泣き出してしまった。
「もうもう! 心配したんだからね!」
「……あたしのことを? どうして?」
どうしてなんて決まってんだろ。
「家族だからだろ?」
「え……?」
余計なお節介だとはわかっていても、俺は言う。
「あんた、こっちの世界に何もないとか言ってたけどよ、あんたを必死になって探してる、姉ちゃんが……家族がいるんじゃないか」
涙を流す姉。
アーニャは戸惑いながらも、姉にされるがままになっている。
世界扉越しに、イージスが言う。
「よき、姉に恵まれておるではないか、フォージア……いいや、アーニャよ」
イージスが慈愛のまなざしを向けて言った。
アーニャは涙を流して、姉を抱きしめる。
「ごめん……姉さん……心配かけてごめんね……」
「ううん……いいの……無事で良かった……」
……さて。
「この姉を呼び出したのって、どうやったんだろう?」
『主がやったのだろう?』
「まあ。でも別に魔法を使ったわけじゃないんだが」
そもそも姉の声が聞こえていた時点でおかしいだろう。
そんな魔法使ってないんだが。
「おそらく、神の力じゃろうて」
「はぁ……?」
「神は迷い人の声を聞き、助けるという。ぬしには神の力が宿っており、それが発現したのじゃろうて」
いやいや……なんだそりゃ!
「マジでそれ神じゃん!」
『かっかっか! 多くの神とふれあった結果、主もまた神になったということだろう?』
「笑い事じゃねえええええええええ!」
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