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12.世界魔女のラブ・マリィ(※祖母)の正体



 俺の家に、祖母の万里ばあさんがやってきた。

 久しぶりに見るばあさんは、全然別人になっていた。


 紫色の髪は一緒だけど、どう見ても10歳の外見。

 くりくりとした目に、ぴちぴちの肌は、どう見ても幼女!


 話は、数分後。

 万里ばあさんはゆったりとした、魔術師のローブみたいなものを身に着けている。

 体にはじゃらじゃらとしたアクセサリーを身に着けていた。


「ちょうど風呂に入ってたらな、カイトの作るうまそうな飯のにおいがしてねん♪ 転移で飛んできたんだよん」

「だ、だから風呂場から一瞬でいなくなったのか……」


 リビングには俺、麗子、なぎ、そして人間姿のフェリがいる。

 フェリは飯を食い終わってご満悦なのか、畳の上で丸くなっていた。


「てか、ばあさん。なんで幼女に?」

「転生したんだよん」

「て、転生?」

「うん。前の体は結構もうガタがきてたからねん♪ 転生して新しいからだになったのさ」


 そんなほいほい、転生なんてできるもんなのか……?

 すると漫画家のなぎが、万里ばあさんの頬をつつきながら言う。


「確かに、すごい魔法使いが転生して未来の世界で無双みたいな話、結構あるじゃないっすか。あれっすよ多分」

「ああ、なるほど……じゃあほんとに、万里ばあさんなんだな?」

「そうだよーん♪ 見た目は幼女、中身はババア、まごうことなきロリババアだねん♪」


 し、しかしまじで、すごい魔法使いだったんだな……。

 いや、まあ異世界へ行き来する力とか、アイテムとかから、わかってたけども。


「ばあさんあんた、前から聞きたかったんだけどさ。魔法使いだって、どうして今まで黙ってたんだ?」

「そりゃ、信じたかい? あたしが魔法使いです! ってカミングアウトして」


 それは、たしかに。

 ただの頭おかしい人になってしまうな。


「異世界につれてけば、証明になっただろ?」


 何の証拠もなしに、自分が魔法使いだとか、異世界最強の魔女だとか言われても、信じなかっただろう。

 でも実物を見せてもらえば、さすがの俺も信じたのに、ばあさんはそれをしなかった。


 ばあさんは苦笑した後に言う。


「あたしはね、カイトには普通の人生を歩んでほしかったのさん」

「普通の……」

「うん。普通の。平凡な人生を、平凡な幸せを、享受してもらいたかったのよん。確かに、魔法とか、スキルは便利だし、人からチヤホヤされるけどねん。面倒事も、増えるんだよん」


 言われてみると、たしかにそうか。

 こんなすごい魔法の力、世間にばれたら大騒ぎだ。


 人体実験されたり、力を欲した権力者から命を狙われたりするかもしれない。

 それよりは、何物でもない、普通の人間として生きたほうがいいと、ばあさんは思って、異世界のことを、そして自分のことを、黙ってたんだろう。


 まじで、優しい人だよな、この人。


「まあもう当事者になっちゃったからねん♪ カイト、これからは気を付けるんだよん♪」

「ああ……って、そうだ。よくばあさん、俺が孫のカイトだって気づいたね。今顔、ほらこうなってるし」

「あっはっは! カイト、あたしは別におまえさんを顔で認識してるわけじゃあないよん♪ わかるもんだよ、大好きなおまえさんが、どんな姿でも」


 そういうもんなのか。

 俺はわからなかったが。まだまだ若造だからかな。


「さて、ほかに聞きたいことはないかい? あたしも忙しくて、なかなか会えないのよん?」

「ええと、そうだな。ばあさんは何やってるの? 現実にいるの、異世界にいるの?」

「現実にいるよん。【調停官】をやってるの」

「ちょーてーかん……?」


 なんだそれ、聞いたことない単語だな。


「【超越者】たちが、悪さしてないか見張ってるのさん」

「ちょ、ちょっとちょっと! 多い多い! 情報量が!」


 調停官? 超越者?

 初耳すぎる。


「超越者とは、異世界から現実に、転生してきた人たちのことだよん」

「! い、いるの? 向こうから、こっちに来る人……?」

「いるいる、結構ねん」


 アニメとか漫画だと、現実から異世界に転生、転移する連中ってよく聞くけど(フィクションだけど)。

 そ、そうか、逆もあるのか……。ファンタジーの住人が、日本にいることが。


「でもたいていの元異世界人たちは、魂が漂白されて、記憶を失ってるのさん。でもね、力を持ってたりするのん」

「力って……魔法とか、スキルとか?」

「そうそう♡ 力を持つ元異世界人たちを、超越者っていうのよん。あたしはその彼らが、自分の前世を思い出したり、また力を使って悪さしないかどうか、取り締まってるのさん」


 なるほど……。

 つまり、超越者っていうのは、まれびとである俺と逆の存在ってことだ。


 異世界に行ける現実人が、まれびと。

 現実に来た元異世界人が、超越者。


 彼らは異世界にいたときの記憶がないが、特殊能力を持っている。それは現実でいえば危険なもの、だから、万里ばあさんが取り締まってると。


「たいていの超越者たちは、自分が元異世界人だって気づかずに、ごく普通の人間としてくらしてるのよん。ほら、たまにすごい才能持ってる人っているでしょ? アスリートとか、将棋の棋士とかで」


 たしかに若くしてメジャーリーガーになってるひとや、中学生でプロ棋士やってるひとは現実にはいる。

 歴史上にも、すごい曲や絵を残してる芸術家たちがいる。


「って、まさかその人たちって、元異世界人……超越者なの?」

「そ♡ まあ彼らが成功を収めているのは、異世界の能力がすべてじゃなく、本人のたゆまぬ努力も影響してるけどねん」


 まじか、俗にいう天才たちは、超越者かもしれないってことか。


「日本にも、いるの?」

「おるよ。新しい超越者を見つけてくるのもあたしの仕事さ」

「へえ、たとえば?」

「そうだねえ……こないだ見つけた超越者は、ら、らの……らのべ? とかいうの書いて、大成功してたね」


へえ……ラノベ作家にも超越者いるんだ。

 どんな人だろう?


「変な名前だったねえ、う、うえ? 上松うえまつ、って高校生だよん。東京に住んでた。あれ読み方違ったっけ?」

「ふーん……うえまつ? 聞いたことないな……あとは?」

「そうだねえ、自分の代で財閥をゼロから築き上げた億万長者の男や、いんたーねっと? で何をやっても炎上しない男とか、とにかくたくさんいるんだよん」


 異世界のスキルや魔法は、莫大な金や利益を生むみたいだ。

 まあそりゃそうか。俺だって異世界の魔法で、楽して暮らしてけてるわけだし。


「自覚のない超越者たちはいいのさ。問題は、それを意図して悪用しようとしてるやからだよん」

「やっぱ、いるんだな、そういうやつら」

「そうだね……だからこそ、調停官が必要なのさ。悪い超越者たちを、こらしめるためにね」


 ……さも、当然のようにばあさんが言ってのける。

 異世界スキルを使った犯罪者の、取り締まり。


「ねえそれって、いつからやってるんだ……?」


 ばあさんは、転生できるほどのすごい魔法の使い手だ。

 でも、転生は今回が初めてじゃないのだろう。


 歴史の教科書を見てると、たくさんの天才たち、偉人達がいる。

 その人たちがみんな超越者だとしたら……?


 いったい、いつからばあさんは、調停官として、活動してるのか?

 ひとりで、そんな大昔から、大変な仕事をしているとしたら……。


「……やさしいねえ、カイトは」


 ばあさんは微笑むと、近づいてきて、ぎゅっと抱きしめる。


「あたしはね、別に苦なんて思ってなよん。自分がやりたくてやってるんだ。大好きな孫のいるこの世界を、あたしは心から愛してるからさ」

「ばあさん……」


 大変なことをしてるのは明らかなのに、彼女は苦労を一切見せなかった。俺が24になるまで、ずっと。

 孤独に戦ってきただろう彼女が望むのは、俺たち一般人の平穏。


 すごいことだと、俺は深く感心した。


「やっぱ、ばあさんはすげえんだな」

「はは! うれしいねん。あ、そろそろ時間だ」


 よいしょ、とばあさんが立ち上がる。


「じゃ、あたしは仕事に戻るよん♪」

「あれ、もう行っちゃうの?」

「うん。日本に来たんは、さっき言った、新しく発見された子が、すごい力を使ったって感知したから、きただけ。でも彼は悪い子じゃないし、自分が超越者だって気づいてない、安全な子だって確認が取れたから、もう日本での仕事はおしまい。次の子を見に行くのよん」


 結構、現代には超越者、元異世界人はいるんだな……。


「また、また会える?」

「うん♪ もちろん♡ あたしはカイトが、だぁいすきだからねん♪」


 ばあさんは微笑んで、俺の頬にキスをする。


「じゃ、新しい生活を謳歌するんだよん」


 ふわり、とばあさんの体が浮く。


「あ、そ、そうだ。俺も超越者ってことだろ? 取り締まらなくていいの?」

「うん。カイトは、悪い子じゃないってわかってるしねん。じゃ!」


 パシュ! とばあさんが消える。

 いってしまった。もうちょっとゆっくりしていけばいいのに……。


 少女たちが、じぃっと俺を見つめていた。


「な、なに?」

「いやぁ、界人サン、まじですごい人物だったんすね」

「さすがです!」「世界魔女の孫なのは本当だったのだな、さすが我が主!」


 今まで、あんまり自覚なかったけど、世界の平和を秘密裏に守っている魔女の孫だったわけで、俺……。

 もしかしてじゃなくても、すごいことだったのか?


「え、えっと……このことは、内密に、な?」


 こうしてばあさんはまた、どこかへと去っていったのだった。

 この力は、悪いことには絶対使わないって、俺は改めて、そう思ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 現実って表現より地球って書いた方が正しい 現実って異世界も現実だよ
[良い点] これくらいふわっとしてる他作品とのクロスオーバーは読んでない人が混乱するほどじゃないし読んでる人はニヤッとできるからいいね [一言] 作者見ないで読んでたけど超越者のくだりで生産者表示され…
[良い点] マリ婆ちゃん登場!うれしい&ばんざい!絵にかいたような、見事なロリババア!です! [気になる点] …超越者になった人物達…どこかで聞いたような連中やなぁ…某カミサマ作家とか…その義理の弟に…
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