114.賢者の導き
界人に助けられた神獣、ベヒモスのタイクーン。
彼は今、窮地に立たされていた。
『く! なんて強さだ……天の使い……天使よ!』
タイクーンは現在、一体の天使と戦いを繰り広げている。
顔のない石像に、翼が生えている……。これが、天使。
天使はタイクーンが厄介になっている村に、襲撃をかけてきたのだ。
タイクーンは応戦するも、しかし天使の圧倒的なまでの強さに、敗北しかけている。
「たいちゃん逃げて!」
「そうだよ! たいちゃんがしんじゃうよ!」
こないだ、タイクーンが助けた兄妹が、避難所からそう叫ぶ。
だが彼は引かない。
『わたしは賢者様から教わったのです……弱き物を助けるのが、強くなったものの義務だと!』
うぉおお! と雄叫びを上げながら、タイクーンが天使に特攻をかける。
だが天使はひらりと華麗に避けて、右手を向ける。
天の矛。
天使によるレーザー攻撃が、タイクーンの胴体を貫いた。
『がはっ!』
「「「たいちゃんっ!!!!!」」
胸のど真ん中を撃ち抜かれて、瀕死の重傷を負う。
倒れ伏すタイクーンを、しかし天使は一瞥することもない。
天使は天の矛で、村を焼こうとする。
『やめろぉおおおおおおおおおおおおおおお!』
そのときだった。
かっ! と天使がレーザーを照射した瞬間、一人の少年が颯爽と現れたのである。
「【攻撃反射】!」
パリイィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
……天の矛を、その人物が弾き飛ばしたのである。
反射したレーザーはそのまま天使の胴体を撃ち抜いてみせた。
『すごい……あのレーザーを見切った……あなたはいったい……?』
タイクーンが問いかけると、少年は言う。
「おれはブレイバ! 勇者ブレイバだ!」
勇者を名乗る少年は、剣を片手に、天使に向かって突っ込み、
すさまじい速さで斬撃を喰らわせる。
天使は突如として現れた闖入者に、泡を食って撤退を選択。
「くそ! 飛んで逃げられる! また……弱き村人達を襲うかもしれない……。そんなのはだめだ! 強いやつの義務を、果たさないと……!」
……タイクーンはそのとき気づいた。
弱い物を守る、強い物の務め。
それは、賢者より教わった理念。
そう……それに、この匂い……。
『ブレイバとやら。共闘しませんか?』
「共闘?」
『ええ。あなたも……賢者様のお仲間なのでしょう?』
「! ししょーを知っているのか!」
やはり、そうだ。
タイクーンは気づいていたのだ。
ブレイバからあの紅の賢者、界人の匂いがするということに。
『わたしはあのお方に命を救われた者。それゆえ、わたしも戦ってる所であります』
「! そうか……わかった! 力を貸してくれ!」
ブレイバがタイクーンの背中に乗る。
彼は、ベヒモスの体についていた傷が、もう塞がっていることに気づく。
「すごい治癒力だね」
『賢者様にお力をもらった影響で、わたしは頑丈な体を手に入れたのです』
「! そうか……ししょー。これは……あなた様が導いた結果なのですね!」
つまりは、ブレイバとタイクーンの出会いは、師匠(※界人)が仕組んだ出会いであると(※違う)。
「さすがししょーだぜ! ごー!」
『はい……!』
ふたりが力を合わせる……。
猛烈なスピードでタイクーンがツッコミ、その勢いのままに、ブレイバが剣を振るった。
天使は、ブレイバの一撃で爆発四散する。
自由落下するブレイバを、タイクーンが助ける。
「ありがとう!」
『いえ……感謝すべきは、わたしではありません』
「そうだな! 巡り合わせてくれた……ししょーにかんしゃだ!」
……もちろん、別に二人が会うことなんて、界人は知りもしなかったし、別に巡り会わせるつもりもさらさら無かったのだが。
なんだか知らないが、界人が仕組んだみたいな扱いに、二人の中ではなってるようだった。
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