表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/241

11.夕飯はカレーで



 魔法の訓練を終え、俺は漫画家のなぎと一緒に、現実に戻ってきた。

 買い物に行ってる麗子たちを、家まで送り、俺はホームセンターで買い物をしてから帰宅。


「おかえりなさい、界人さん♡」

「お、おう……ただいま、戸隠とがくしさん」


 黒髪のJK、戸隠麗子が俺を出迎える。

 この子は俺がもともと住んでいたマンションの、大家の娘。


 痴漢されてるところを俺が助けたら、なぜか俺がやったことになり、マンションを追われたのだ。

 父親の態度に反発して、家を出て、今は俺のもとで暮らしている。ちなみになぜか奴隷になっている、なぜか、喜んで。


「おうちのお掃除しておきました! それと、お料理もできてます!」

「おお、まじか。ありがとう」


 正直見知らぬJKを家に置いて、しかも奴隷にするなんてって、抵抗を覚えていた。

 でも本人は罪滅ぼしがしたいっていうし、俺としても、こうして家事の手伝いをしてくれる存在がいるのは、助かる。


「飯にするか」

「はい!」


 ……で、リビングに移動したわけだが。


「…………こ、これは」

「カレーです!」


 リビングは、和室になってる。

 ちゃぶ台の上には土鍋があり、その中には、黒々とした鍋が置かれていた。


 となりでフェンリルのフェリが、あおむけになって、白目剥いてる。


「だ、大丈夫かフェリ……?」


 はっ、とフェリ(人間の姿。人間の家だと窮屈だから人間フォームになってる)が目を覚ます。

 麗子と一緒に買い物にいって、女物の服を着ている。


「主よ!」


 だきっ、とフェリが俺に抱き着いてきた。明鏡止水がなかったら、今頃動揺していただろう。

 それほど、人間姿のフェリはナイスバディの超絶美女なのだ。


「こやつ、料理、下手!」


 ストレートに麗子の料理をなじる。 

 まあ、見た目だけでまずそうとは思ったんだが。


「なんじゃこれは! こんなくそまずいもの生まれて初めて食ったぞ! 死ぬかと思ったわ!」

「ご、ごめんなさい……フェリちゃん」


 ぐるるる、と威嚇するフェリを俺はなだめる。

お嬢様なんだから、料理なんてしたことないんだろう。


 しかも父親が結構過保護っぽいから、台所に立たせてもらったことはないだろうし。

 なら、メシマズになってもしかたない。


「俺がご飯作るから、気を静めてくれよ」

「うむ! それがよい!」


 一転して、フェリがしっぽをぶんぶんぶん! と激しく振る。

 どことなく大型犬を想起させた。いやまあ、大型犬なんだけどさ。


「界人さん、すみません……わたし、役立たずで」


 まあ飯作れないのはしょうがない。子供だし、箱入り娘なんだし。


「気にしないでよ。掃除してくれたのと、あとそこの大型犬の面倒見てくれたじゃないか。十分だよ。あんがとね」

「あうう……♡」


 麗子が顔を真っ赤にして、体をもじもじさせる。

 何を照れてるんだろうか。


「界人サン、うち、お風呂入りたいっす」

「ああ、いいぞ。てか風呂の準備は?」

「できてます!」


 麗子が風呂を入れてくれてたようだ。


「れーこちゃん、一緒にはいろっす!」

「はい!」


 なぎたちがふろ場へと向かっていく。

 

「吾輩はテレビでも見てくるかな!」


 すっかり現代になじんでるな、大型犬さんは。

 俺はリビングへ行き、麗子が作った失敗作のカレーを回収する。


「ん? 食べかけの皿が、2つ?」


 フェリが食ったのは聞いたが、もうひとつは、誰が食ったんだ?


「フェリ、おまえ以外に、誰かカレー食ったか?」

「? いいや、吾輩だけだぞ?」

「じゃあ、これカレー食ったの、誰……?」


 まあ麗子が自分で味見したんだろう。

 そうじゃないと考えられないし。


 キッチンへ移動し、鍋をシンクの中に置く。


「カレーでも作るか。簡単だし。……鍋は、買いなおし、いや、魔法で直すか。【修復】」


 無属性魔法の修復を使う。

 これは壊れたものを元に戻す魔法だ。


 黒こげの鍋がみるみる直って、新品同様になった。おお、便利。

 次に、俺は冷蔵庫の中を見やる。野菜などはストックがあったけど、肉がなかった。


「肉はー……あ、そうだ」


 俺はアイテムボックスを開く。

 収納しているアイテムの一覧が、俺の面前に、半透明の板となって出現する。


・黒王竜の肉(SSS)


異世界に来て初めて倒した竜の肉を、ドロップ品として回収していたんだった。

これを使ってみるか。


 鑑定スキルで食用できることを確認した後、俺はカレーを作る。


 とんとん、ぐつぐつ、じゅーじゅー。


「よし完成。できたぞ~」

「きたーーーーーーーーーーーー!」


 リビングへ行くと、フェリがテーブルに手をついて、今か今かと待ち構えていた。

 鍋をテーブルの上に置いて、炊飯器をキッチンから持ってくる。


「はよう飯にしよう!」

「いや、みんなそろってから……」

「まちきれぬ! 今全部ぺろっと食べてもよいのだぞ!?」

「わかったわかった。おまえの分だけ先によそっとく」


 俺はカレーを1人前作って、フェリの前に出す。

 フェリはスプーンを使わず、犬食いしようとする。


 ひょいっ。


「ああ! なぜ取り上げる! いじわるー!」

「待て待て。その姿で犬食いするな」

「わかったから! めしー! めしー!」


 自分が誇り高きフェンリルだから、そんなことできるか、とか、犬扱いするなー、とか。

 そういうんじゃなく、もう飯のことしか考えてないようで、飯のためなら素直に言うことを聞くみたいだな。


 俺はスプーンを渡すと、がつがつがつ! とフェリがカレーを掻き込んでいく。


「ん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡」


 フェリのしっぽが、ぶわっ、とまるで竹ぼうきの先端のように膨らむ。


「うーーーーーまーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!」


 またも口からビーム出すのかと思ったが、どうやら人間の時はビーム出ないようだ。


「うまい! うますぎるぅ! なんだ、なんだ、これ、うま、すご! うま!」


 がつがつがつがつ!

 あっという間に、フェリが一皿食べてしまった。


「主よ! 天才! おぬしは料理の天才だな!」

「大げさだろ。ただのカレーなのに」


 俺は上京してから会社をクビになるまで、ずっと一人暮らしだった。

 一通りの家事はできるし、自炊もしていたので、飯も作れる。


 ただ作れる飯は、ほんと俺一人が楽しむために作ったものなので、あんまり凝った料理はつくれない。天才って言われてもな。


「いや! こんな世界レベルで美味なる料理を作れる、主は天才だ! すごすぎる!」

「お、おおげさだなぁ」


 まあたぶん異世界人(犬?)であるフェリからすれば、カレーは未知の食べもので、刺激的だったんだろう。

 それでも、作った料理にここまで喜んでもらえるのは、うれしいもんだな。


「うんうん、さすが我が愛しのカイト♡ 料理も上手になったねん♪」

「はは、だろ……え?」


 フェリの隣で、見知らぬ幼女がカレーを食っていた。

 紫色のショートカットで、どう見ても10歳前後の幼女が、我が物顔で飯食っていた。


「だ、だれ!? あとなんで全裸!?」


 肩からタオルをかけているだけで、ほぼ全裸の幼女が、うまうまとカレーを食っていた。


「あん? なにを驚いてるのん♪ 愛しの孫よ♪」

「孫……?」


 とそのときである。


「「か、界人さん!」」


 どたばた、と女子高生たちがかけてくる。


「い、今なんか変な幼女が、我が物顔でお風呂に入ってたっす!」

「し、しかも風呂場から一瞬で、煙みたいに消えちゃいました!」


 女子高生たちが、全裸の幼女を見て悲鳴を上げる。


「こ、この子っす!」「界人さん、誰ですかこの人!?」

「いや、俺も、知らないんだが……」


 するとカレーを食べていた全裸幼女が、きょとんとした表情になる。

 しかし何かに気づいたのか、笑いながら言う。


「あたしだよん♪ 万里ばあちゃん♡」

「………………………………は?」


 ま、万里、ばあちゃん?


「え、う、うそ……?」

「嘘じゃないよん♪ 暇ができたから会いに来たぜ♪ ああん、かいと~!」


 全裸幼女が俺に抱き着いてきた。

 明鏡止水が発動してなきゃ、戸惑っていただろう……しかし、まじでばあさん?


 いや、でも魔法で消えたっていうし……。

 ばあさんは、ばあさんで、見た目老婆だったのに、この子は幼女だし。


「会いたかったぞ~い♪」

「ほ、ほんとにばあさんなら……万里ばあさんの好物答えられるか?」

「竹風堂の、栗ようかんだよん!」

「お、俺の好物は?」

「巨乳の女だよん♪」


 おいいぃいいい【明鏡止水が発動しました】。


「巨乳の……」「女……」


 女子高生たちが自分の胸をぺたぺた触ってる。二人とも立派だけど、やめて。

 さらにご立派なおっぱいをしてるフェリは、俺たちにわれ関せずと、カレーをうまうま食っていた。


「ま、まじで万里ばあさんなの?」

「そう言ってるよん、最初から♪ ひさしぶりねん♪」


 ……俺の家に、世界魔女のラブ・マリィこと、飯山ラブ万里がやってきたのだった。

 幼女の姿で、なぜか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ばぁちゃん思ってた通りにロリババァだったか……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ