106.全滅
アーニャは……気づいたら病院にいた。
「……………………は?」
意味が、わからなかった。
理解が追いつかなかった。
「え……?」
「アーニャちゃん!!!!!!」
姉、ターニャが泣きながら、病室にいるアーニャに抱きつく。
「は……? え? あ……? え……?」
なんだ?
何が起きてる?
わからない、わからなすぎる……。
「うええええん! もうもう! 心配させるんじゃあありませんっ! もうっ!」
「…………」
本気で泣いてる姉。
そして、その後ろには義兄、贄川がいた。
……意味がわからない。
なにが、どうなってるのか……。
「……ねえ、なに? あたし……どうなったの? ここ……どこ?」
そうだ。
自分は、仲間を集めて、長野県に行こうとした。
異次元者……飯山界人のもとへ襲撃をかけた、はず。
仲間の練能力者たちとともに。
しかし……。
「ここは、山梨の総合病院だよ」
「やまなし……?」
そうだ……思い出した。
練能力者たちは、車に乗って長野に向かう途中だった。
山梨経由で、長野へ向かっていたはず……。
「あ、あたし……あたし車に乗ってて……! 一緒に乗っていた人たちは!?」
……すると。
姉から、驚愕の発言が、でた。
「? 車には、アーニャちゃんだけが乗ってたらしいよ?」
…………。
…………………………。
………………………………は?
「あたし……だけ? 他の……連中は……?」
「他の……? アーニャちゃん、大丈夫? 他に誰も乗ってなんていなかったよ?」
嘘だ。
そんなのあり得ない。
だって……数十人の練能力者たちで、集まって長野へむかったじゃないか!
なのに……なのに、じゃあ、他の連中はどこにいたのか……?
と、そのときである。
「失礼します」
「! あ、県……!」
県 清美が、にこにこしながら、病室に入ってきたのだ。
姉を押しのけて、アーニャは県の胸ぐらをつく。
「どういうことだこれは!? 説明しろ!」
……焦るアーニャとは対照的に、県は……恍惚の笑みを浮かべながら言う。
「他の人たちは……消えました」
「…………………………きえ、た?」
「はい。消えました。あなたと、私以外、全員……長野に入った瞬間、存在を消されたのです」
……アーニャはその場に尻餅をつく。
意味がわからなかった。
存在を、消された?
長野に入った瞬間……?
「なに……。なに……が起きて……?」
すると県は、余裕の笑みとともに見下してくる。
まるで道を見失ったものに、正しい道を示すような、そんな言い方で言う。
「長野神のおかげです」
「な……は? え……? なに……?」
「異次元者の結界って言えばわかりますか?」
「!? あ、異次元者……だと……?」
飯山界人の名前が、どうして出てくるのだ!?
わからない……わからねば。
「どうやら長野神は、長野全域に聖なる結界を張ってるご様子です」
「長野県に……結界、だと?」
ええ、と県がうなずく。
「悪人は、長野に踏み入れた瞬間、存在を抹消されるようです」
「…………」
がたがた……と体が震える。
アーニャは体を縮めて震える。
「なんだ、なんだそれ……。悪人が、入ったら死ぬなんて……そんなの……まさに……」
そう、まさしく神の御業と言えた。
「ああ、素晴らしい……長野神は……本当にすばらしいです……」
「アーニャ! 大丈夫! ちょっとおばさん! 出ていって!」
姉ターニャが県を押しのける。
おばさんと言われた若干腹が立ったものの、県は優雅に一礼して出ていく。
「…………」
こわい、こわい、こわい……。
なんだ、なんの、なんなのだ……。
長野神は、そんなに強かったのか。
勝負なんて、できる次元を遥かに超えているじゃないか。
「アーニャちゃん、落ち着いて。大丈夫……お姉ちゃんがいるよ……?」
……このときばかりは。
嫌いである姉のぬくもりと言葉を、心地よく感じた。
しばらく、姉にそうやって抱っこしてもらい、やがてアーニャは恐怖からの一時的解放により、気を失ったのだった。
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!