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【Web版】異世界行ったら長野の神になりました  作者: 茨木野
第3章

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105.異世界人の悩み



 カイトが神達と戯れる一方……。

 都内某所。


 1kのアパートに、ひとりの練能力者れんのうりょくしゃ(※逆異世界転生者)がいた。


 彼女のコードネームは、指揮者プレイヤー

 殺し屋組織、ZUUKズークに所属していた殺し屋のひとりである。


 指揮者の本名は、【アーニャ・プレセツキー】。

 アーニャは木造アパートの中でゆっくりと目ざめる。


「…………今日、か」


 アーニャがつぶやく。

 壁にかけられたカレンダーには、【Xデー】と書かれていた。


「今日……やつを、異次元者アンノウンを……」


 そのときだった。

 ピンポーン……♪


「…………」


 彼女はゆっくりと立ち上がると、玄関まで行く。

 ガチャッ。


「…………」

「アーニャ、久しぶりね」


 そこに居たのは、今のこの姿と、似ている女だ。

 ロシア人の見た目をしている女。


 彼女は、【ターニャ・贄川にえかわ】という。


「……なに?」

「あらあら、お部屋ぐっちゃぐちゃじゃないの。あなた~」


 ターニャが一度部屋を出て、誰かを呼ぶ。

 そこへ現れたのは、サングラスをかけた巨漢だ。


「お久しぶりでやす、アーニャちゃん」


 このサングラスの、見た目ターミネーターのような男、名前を贄川にえかわ次郎太じろうたという。


 贄川にえかわは、ターニャの旦那。

 つまり義理の兄に当たる。


「……何しに来たの? ふたりとも?」

「ん? お姉ちゃんが、妹のとこに様子見に来るのに、いちいち理由なんているの?」


 ターニャがきょとんした顔で言う。

 ……その顔に、家族ぶる姿に、アーニャはとても不快感を覚えた。


「……帰って。あたしは、やることがある……」

「あなた、お掃除大作戦よ! アーニャちゃんのお部屋を綺麗にするのっ!」

「合点承知」


 人の話を聞かず、姉ターニャが夫の贄川にえかわとともに、テキパキと掃除する。


 アーニャの部屋はお世辞にも整っているとはいえなかった。

 どこにもホコリがたまり、洗濯物は床に放り出されている。


 台所は食器が放置されてた。


 しかしターニャ贄川にえかわが、恐るべき速度で、部屋を綺麗にしていく。

 ……その姿を、ぼうっとアーニャは見つめていた。


 ややあって。


「ふぅ……! きれいになったね、あなたっ!」

「ターニャ、身重なんですから、あまり動かないでくださいよ……」


 ……そう、この姉を名乗る存在は、現在妊娠している。

 この贄川にえかわとの間の子供だ。

 ぽっこりしてるお腹を見て、アーニャは内心でせせら笑う。


「どうしたの?」

「……別に。用事が終わったら帰って。あたしは忙しいの」

「え、無職なのに?」


 ……こ、この姉……!

 

「ターニャ、アーニャさんはユーチューバーでやす。無職じゃありやせん」


 いちおう、アーニャはユーチューブ事務所、ZUUKズークに所属してる……ということになっていた。


「あらジローちゃん、知らないの? アーニャったら会社クビになったのよ?」

「クビになったんじゃない! やめたんだ! 会社の方針と合わなくて!」

「ほら無職じゃない。だめよ、日本に住んでいる以上、労働は義務なんだから」

「この……!」


 練能力者れんのうりょくしゃとしての力を、使ってやろうか。

 アーニャのコードネーム、指揮者プレイヤー


 彼女の能力を使えば、この姉を名乗る存在を、一撃で殺すことは可能だ。


「…………」


 アーニャは、近くに置いてあったフルートに手を取る。

 能力を発動させようとして……。


「あ、みてジローちゃん。お腹うごいたわっ。さわってほらほら」


 ……幸せそうな顔を、夫に向けている姉。

 姉のお腹には新しい命が宿っている。


 ……アーニャはターニャを、殺せなかった。

 少なくとも、腹にいる子供に罪は無い。

「……帰れよ」

「えー、お茶しましょ? 近くにあるくまっていう、すっごい美味しい喫茶店があるのよ?」

「帰って!」


 声を荒らげても、姉のターニャは不快な表情を取らない。

 それどころか……。


「生理?」

「ちがう!」

「そっか生理か。じゃあピリピリしててもしょうがないわね。ジローちゃん、帰りましょ」


 ……確かに生理だけども。

 別にそれとピリピリしているのとは、関係ない。


「アーニャちゃん、こいつをお使いください」


 姉婿はそう言って、生理痛に効く薬を、テーブルの上に置いた。


「あらジローちゃん。生理のお薬まで持ってるの?」

「ええ、なにがあるかわかりやせんので」

「若干きもいよ? 用意周到すぎて」

「……すいやせん」


 けたけたと姉が笑うと、微笑みかけてくる。


「じゃあね、ターニャちゃん。また会いに来るわ」

「失礼しやす」


 姉と姉婿はそう言って、部屋を出ていった。

 綺麗になった部屋で、アーニャは顔をゆがめる。


「またなんて、無い。あたしは……もう戻らない」


 今日は、Xデー。

 作戦決行の日だ。


異次元者アンノウンの確保』


 今日、長野へいき異次元者アンノウン……飯山いいやま界人かいとを押さえる。


異次元者アンノウンに殺されるか、やつを手に入れ、世界魔女を脅し、あっちの世界へ……戻してもらうか」


 いずれにしろ、ここには戻らない。

 異次元者アンノウンと世界魔女とのあいだに、血縁関係があることは前から噂されていたことだ。


 世界魔女。

 世界最高の練能力者れんのうりょくしゃであり、世界最高の魔女。


 世界をまたにかける、魔法の使い手ならば……。

 修得してるかもしれない。


 向こう側……異世界へ、帰る方法を。


 だから、アーニャは今日、界人かいとを襲撃し、捕らえる。

 彼を使って魔女と交渉し、魔女に……元の世界に戻してもらう。


「この日をどれだけ、待ち望んだか……!」


 アーニャは逆異世界転生者。

 この世界の人間ではない。


 彼女には、元の世界へ帰りたいという、強い願望があった。

 ここは所詮、自分がいるべき場所ではないのだ。


「…………」


 テーブルの上の、生理痛に効く薬を、ゴミ箱に捨てる。

 そして玄関を出ると、そこには、数多くの仲間達がいた。


指揮者プレイヤー、お時間です」

「……わかってるわ」


 彼らもは、アーニャが集めた殺し屋たちだ。

 全員が強力な練能力者れんのうりょくしゃである。


「今日……これから長野へ行き、我々は異次元者アンノウンの家に襲撃にいく。そこでやつを捕らえ……世界魔女と交渉する」


 仲間達がうなずく。

 彼らもまた、アーニャ同様に、向こうに帰りたい人物達なのだ。


異次元者アンノウンを捕まえろ。生死は問わない」


 死んでいる状態でも、世界魔女なら蘇生は可能だろう。

 だから、生きていようと死んでいようとどうでもいい。


 世界魔女の孫、飯山いいやま界人かいとを捕らえ、そしてこの世のどこかに居る世界魔女をおびき出す。


 そして、帰るのだ。

 あちら側に。


「我らは勝つ。絶対に。そのための【秘策】も用意してる。そうだろう?」


 仲間達の、一番奥に、秘策である【彼女】がいた。


記者データマン



 公安がマークする、練能力者れんのうりょくしゃのひとりだ。


 彼女の能力は、停止者ストッパー消去者イレイサーに匹敵するほどに、強力である。


「今日は頼むぞ、記者データマン

「ええ、どうぞよろしく、アーニャ・プレセツキーさん」


 彼女がにこやかに笑いながら、手を握る。


「それと、外ではコードネームはやめてほしいですわ。私はあがたあがた清美です」


 ……ニコニコと笑いながら記者データマンあがた清美がそう言う。


「……そうか。だが私のことは、外では指揮者プレイヤーと呼べ、あがた

「わかりました、指揮者さん。特等席で見せていただきますよ、【ご活躍】を」


 うふふ、と怪しく笑うあがた


 ……信用ならない人物だが、能力は一級品だ。

 異次元者アンノウン攻略に、必ず必要となる。


「では、参りましょうか」

「ああ……」


 アーニャはドアを閉める。

 ……がさっ。


「…………」


 ドアノブに、何かがかかっていた。

 ビニール袋だ。


 その中を覗くと……。


「カイロ……あいつ……」


 コンビニで買ったらしいカイロ。

 そしてその上には、ロシア語でこう書いてあった。


『お腹温めるといいわよ! 姉より』

『お大事になさってください 贄川にえかわ


 ……今から、自分はこの世界を捨てる。

 そう、こんな姉を名乗る人物の優しさなんて、もうどうでもいいのだ。


 アーニャは、袋をぐしゃぐしゃに丸めて、立ち去る。


 覚悟は決まった。

 コマもそろえた。

 作戦も立てた。


「行くぞ、貴様ら。帰るのだ、あちら側へ」

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『【連載版】追放聖女はキャンピングカーで気ままに異世界を旅する』

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