102.神は火山の噴火を止めたそうです
界人が神達と戯れる、一方その頃。
東京、警察庁。
公安の刑事、贄川無一郎は、デスクで自分の昼食を作っているところだった。
カップ麺にお湯を注ぎ、3分経過。
さてこれから食べる……まさにそのとき。
PRRRRRR♪
「はぁ……」
今から昼ご飯。
しかし電話の相手は、見晴者。
公安の目であり、見張り役からの連絡。
何か緊急事態である可能性が高い。
「どうした、見晴者?」
『変身者、昼時にすまなかったね』
電話の相手……見晴者がそう言う。
女の声だ。
見晴者とは付き合いが長い。
お互いの素性をよく知ってる。
「君も今お昼休みだろう?」
『ああ、今職員室でラーメン食べてる』
見晴者もまた公安の刑事だ。
彼らは社会に溶け込み、一般人として生活している。
見晴者は高校で教員をやっている……と聞いたことがあった。
なんだ……と無一郎が安堵の息をつく。
「なんだ、たいした用事じゃないみたいだな」
向こうも昼食を食べようとしていた。
それくらいの余裕がある案件、ということだ。
無一郎はスマホをハンズフリーにして、カップ麺を食べる。
一口すすって尋ねる。
「じゃあ……もぐもぐ……なんで電話したんだ?」
『日本が滅ぶ』
…………。
…………………………。
……………………………………はい?
「なんだって?」
『日本が滅ぶ。火山の大噴火で』
「ぶっ……! な、なんだって!?」
無一郎が勢いよく立ち上がる。
カップ麺の中身がデスクにぶちまけられてしまう。
無一郎は汁のかかったスマホを手に取って尋ねる。
「もしもし!? 日本が滅ぶって、どういうことだ見晴者!?」
しーん……。
「見晴者!? おい!」
PRRRRRRR♪
今度はデスクの電話が鳴った。
無一郎は慌てて電話に出る。
「おい見晴者! なんで電話を切った!?」
『いや電話切ったのはおまえだろう?』
「は……?」
無一郎はそのときはじめて、自分のスマホが切れてることに気づいた。
……どうやらカップ麺をこぼしたときに、電話が壊れてしまったらしい。
『よっぽど慌ててるみたいだね』
と、のんきな調子で言う見晴者。
向こうでラーメンをすする音がした。
日本滅亡の危機に、メシ食ってるだと?
それがムカついた。
「おい! 日本が滅ぶって時になにのんきにラーメンなんか食ってるんだ!?」
『まあ落ち着け。日本は滅びないよ。正確には……滅びが回避された、だ』
……意味が、わからなすぎた。
無一郎は席について、あたまをガリガリとかきながら言う。
「……状況を説明してくれ」
『ああ。予知者を知ってるだろ?』
「予知者……。ああ、未来を予知する能力者のことか」
この世界には、超常の力を持ったやからが存在する。
彼らは、異世界からこちらに転生してきた、逆異世界転生者。
公安は彼らを、練能力者と呼ぶ。
『予知者は未来に起きる天変地異を予測する能力者だ。公安で保護されているね』
「ああ。未来を予知できる力なんて、悪用されやすいからな」
事実、予知者はその力を使って霊感商法的なことをやっていた。
公安は予知者を逮捕し、公安のタメに働かせることで、ある程度の自由を保障してる。
『予知者が、未来を予知したんだ。長野県の東信地方で、火山の大噴火が起きるって』
「長野県……? 噴火だって……まさか……」
確かに過去、長野県の浅間山で噴火があった記録はあった。
「しかし……日本が滅ぶだって?」
『ああ。史上例を見ない大噴火だったそうだ。日本の中心部は壊滅、数え切れない死者がでて、被害は東京にまで及んだそうだ』
……背筋が凍る。
予知者は、強力な能力者だ。
やつの予知は当たる。
捕まえたのが無一郎だからこそ、やつのすごさがわかるのだ。
つまり……。
「……本当に、滅亡する定めだったのか」
『ああ。その運命を変えたのだよ』
「変えた……?」
……それだけで、理解した。
日本が滅ぶほどの、大噴火。
それを起こる前に防ぐ。
そんな、奇跡としか言いようがない御業が、できるのなんて……この世に2人、いや、1人しかいない。
「……界人君、なのか?」
『ああ』
……呆然と、つぶやく。
いやたしかに、彼にできるかも知れない……だが、だが、だ。
「ど、どうやって……?」
『さあね』
「さあねって……君……」
見晴者は食事を取り終えたのか、一息ついて言う。
『わかっているのは、日本が大噴火によって滅ぶところだったこと。その予知を覆したのが飯山界人だってこと』
「……界人君が、救ったってどうやってわかったんだ?」
予知者はあくまで、災害を予知しただけだ。
『確証はないよ。ただ、他にできる人が居ないってだけだ』
「そんな……まあ……そうだけど……」
まるで科学的じゃない。
火山の噴火をとめる?
人間にできる所業を遥かに超えている。
練能力者だったとしても、無理だ。
彼がどうやってとめたのか。
なぜ、そんなことをしたのか。
まるで……理解できない。
わかろうとしても、訳がわからなすぎた……。
『理解するのは無理だろーよ。ま、ラッキーって思っておこうじゃあないか』
「ラッキーっておまえなぁ……」
まあ幸運だけども。
超がいくつついてもいいほどの、幸運だけども。
「……火山とめるとか、やばすぎでしょ、界人君。神じゃん、マジのやつの」
疲れ切った表情の無一郎。
彼の担当は、何を隠そう無一郎なのだ。
補助に見晴者。
『疲れてるところ申し訳ないけどね、もう一つ、厄介ごとが起きてるよ』
「まだあるのかよぉ~……」
はぁ……と無一郎はため息をつく。
『テレビをつけな。あるぴこテレビだ』
「あるぴこテレビ……?」
全国ネットの放送局だ。
無一郎はテレビをつける。
そこにはニュースキャスターが映っていた。
えらく美人で……だからこそ、気づいた。
「記者じゃないか……」
公安がマークしてる、練能力者のひとりだ。
『そう、記者。本名、県 清美。最近、この、あるぴこテレビの局アナになった』
それは知ってる。
公安がマークしてるからだ。
殺し屋から手を引いたことも知っている。
最近になって殺し屋から、なぜだか知らないが局アナに転職したようだが……。
公安としては、直ぐにでも捕まえたい相手。
しかしやつには、【厄介な能力】がある。
それがあるせいで、捕まえたくても、できないのだ。
さて。
【皆様、ごきげんよう。ニュースのお時間です】
テレビの中で記者……県清美が、にこやかに言う。
【速報をお伝えします。長野神様が、日本を滅亡の未来からお救いになられました】
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