10.スライムで、魔法修得+魔力伸ばしてみた
スライムを無属性魔法【分身】を使って増やし、目当てのアイテムを探させた。
「すげえっす! 魔導書読めるっす~!」
異世界にある、万里ばあさんの館にて。
俺と漫画家JKのなぎは書庫に居た。
なぎが手に持っているのは、ばあさんの書いた魔導書。
これは読めば魔法が使えるようになる仕様となっている。
「ぐぬぬう……文字が読めるようになったけど、読み進めるのにめっちゃ時間かかるっす~」
「ああ、やっぱりそうなんだな」
俺のは世界扉の称号、【異世界のまれびと】がある。
これは成長速度にプラス補正する。ようするに、なにかを修得するスピードがめっちゃ上がるってこと。
俺の場合は、ただ魔導書をペラペラとめくっていれば、1分も経たずに魔法を修得できる。
「でも、1分はかかるんだよな……」
「いやいや、1分でもすげーっすから。うち、1ページめからまだ先に進めないですし……はあ、ここの魔導書、全部マスターするのは、一生かかっても無理かもっすわ~。たぎるっす!」
なぎは逆境でも燃えるタイプだからな。まあそのうち魔法を修得しそう。
「しかし……確かに魔導書、結構あるな」
この部屋の本棚にびっしりと、魔導書が詰め込められてる。
どんくらいあるのかは不明だが。
「そもそも魔法ってソンな種類あるんすかね?」
ぴこん♪
ばあさんからのラインだ。
【魔法は基本、六属性、地水火風闇光。そこに無属性魔法を加えた七属性だよん♪ 属性魔法は初級、中級、上級、極大の4段階の魔法がそれぞれあるよん。無属性魔法はめちゃくちゃ数あるけどねん♪】
ばあさんは世界魔女といって、なんか知らないがものすごい魔法使いらしい。
こうしてたまに助言をくれる。
ばあさんから仕入れた情報をなぎと共有する。
「うへえ、魔法ってそんなたくさんあるんすねえ……。いくら界人サンが、ぱらぱらめくるだけで魔法をあっという間に修得できるとしても、こんだけの数の魔導書、全部読み切るのはすごい時間かかりそうっすね」
「う~ん……いや、そうでもないかも」
「と、いいますと?」
俺は足下にいるスライム……暴食王を見やる。
「こいつ使えば結構あっという間かも。暴食王、【分身】」
俺は無属性魔法【分身】を使う。
対象の分身を作る魔法だ。
ぽぽぽーん!
「おお、スライムがさっきみたいに増えたっすね。そんで?」
「テイムしたモンスターとは五感と能力が共有されるんだ。だから……おまえら、魔導書を読んでこい」
「「「きゅ、きゅーん♪」」」
大量に分裂したスライム達が本棚に群がる。
魔導書を自分で引っこ抜いて、スライムが地面に本を置く。
ぺらぺらぺら……とページをめくっていき……。
【風刃を修得しました】
「修得、できた!」
「え、まじっすか!?」
【風裂刃を修得しました】【烈風連刃を修得しました】【颶風真空刃を修得しました】……
その後も、スライムが魔導書を読むたびに、魔法が修得されていく。
視覚を共有されているので、スライムが魔導書を読む=俺が読んだと同じ扱いらしい。
「どんどん覚えてくわ」
「す、すげえ……うちがこんなに苦労しても、1つも魔法修得できないのに、自動で、しかもこんなたくさん覚えるなんて……」
あっという間に、魔導書を全部読み切ってしまった。
【全属性魔法を修得しました。条件を満たしました。称号《賢者》を手に入れました】
また、新しい称号を手に入れたみたいだ。
賢者(SSS):全部の属性、等級の魔法を詠唱無しで放つことができる。魔法の威力にプラス補正される。
「どうしたんすか、黙り込んで?」
「いや、賢者になった」
「はぁ!? どうやって!?」
「多分全属性の魔法を修得したからだろうな」
「ぜ……!? こ、これ全部……っもう修得したんすか!?」
「ああ。あと詠唱無しで魔法が使えるようになった」
「す、すげえ……さすが賢者の孫っすね……たはは、うちじゃ敵わないや」
無数に分裂したスライム達が、俺達の周りを取り囲んでいる。
「ふと思ったんすけど、魔法って使うのに、魔力的なエネルギーいるんじゃないすかね?」
「そういやそうだな」
ステータスを見てみると、魔力の量を表すMP的な表記はなかった。
代わりに、魔法力(魔法を使う力)はすんごいことになってたけど。
「全属性の魔法を無詠唱で使えても、燃料の魔力が無いんじゃ、数覚えただけで無用の長物になっちゃいそうっすね」
「言われてみるとそうだな……魔力ってどうやって伸ばすんだ?」
ぴこん♪
「ネット小説だと……魔力量って使えば伸びるっす!」
【魔力は使うとのび…………………………………………うん】
ばあさんからのラインにも、なぎと同じことが書いてあった。
ぴこん♪
【アドバイスが遅れてごめんねぇ……(ρ_;)】
ばあさん……いや、気に病む必要ないでしょ。俺がライン見るのが遅かったのがわるかったんだし。
ぴこん♪
【ちゅき♡】
元気になってくれてよかった。あとで栗ようかんを通販で買っとこ。
ぴこん♪
【魔法を試し打ちするなら、教練室を使うといいよん♪ 魔法をいくら撃っても、絶対に壊れない結界が施されてるし、もし仮に壊れても、修復魔法がかかってるから、いっくら壊れてもモーマンタイだよん♪】
てなわけで、俺は教練室とやらに行ってみることにした。
ばあさんの所有する館にはいくつも部屋がある。
その中の一つが、教練室。
「うひゃあ! すげえ広いっす! 館の中とは思えないほど広いっすねー!」
学校の体育館なんて比じゃない。
国立競技場とか、ソンなレベルで広い。
「どうしてこんな広いんすかね?」
ぴこん♪
「あ、空間の魔法とか使って、ここの内部だけ異空間となってるのかも!」
ぴこん♪
【しゅーん……(´・ω・`)】
どうやらなぎの推察どおりだったらしい。
わ、わー! すごぉいなぁ! さすがばあさんだ!
【魔法の練習用の的が念じれば出てくるよん♪ それめがけて撃ってみるといいよ、愛しの孫よ♪】
ふう……機嫌が回復したみたいだ。
しかしばあさん、一向に姿見せないくせに、孫の動向を逐一チェックしてるんだな。
どこで何してるんだかわからないが、そんなに俺が気になるなら、ここに来れば良いのに。
ぴこん♪
【そのうち会いに行きますよん♪ヽ(´▽`)/】
「さて、じゃ、魔法を撃って、魔力を増やすかな。スライム、整列!」
横一列にスライムが並ぶ。
俺はアイテムボックスを開く。
どちゃっ。
「なんすか、この瓶……ポーションすか?」
「ああ、ばあさんち探索して見つけた、【魔力ポーション(上級)】だ」
魔力ポーション(上級):飲めば一瞬で全魔力を回復する。
俺はスライムを2列に分ける。
一列目は魔法を撃つ、二列目は魔力がつきたら、魔力ポーションを飲む。
「魔力量も、テイムモンスターと共有されるんすね」
「ああ。だから、スライムに魔法を撃たせて、魔力が減ったらスライムにポーションを飲ませる。あとはほっとけば魔力が伸びるって寸法」
スライムが初級魔法を連続で放っている。
ちゅどどどどどどどどん!
体からぐん、と力が抜けて、すぐに回復する。
「魔力量が見れればいいんすけどね」
ぴこん♪
【そこの娘っ子の翻訳眼鏡、隠しコマンドあるよん♪ それを使えば魔力量が見れるさ】
「だそうで」
横の面に突起があって、それをかちかちと触れる。
「うぉ! すげえスカウターみたいっす!」
どうやらなぎの視界には、俺の魔力量が見えてるらしい。
「魔力量100……1000……10000……ドンドン増えてくっす!」
ちゅどどどどどどどどーん!
「魔力量10万……50万……53万……すげえ。ちなみにうちはどんなもんす?」
なぎから眼鏡を借りて、彼女を見る。
南木曽なぎ:魔力量5
「…………」
「どーすか?」
「うん……まあ、知らない方が良いよ」
俺の発言で、なんとなく察してしまったらしい。
なぎは苦笑しながらも、「やっぱ界人サンまじチートっすわ。すげえ……」と感心する。
「もう100万くらいあるっすけど、魔力。まだやるんすか?」
「こんくらいで一旦ストップして、威力試してみるかな」
俺は片手を上げて、魔法を使ってみる。
前は竜神の杖ってアイテムで、極大魔法を使った。
今度は杖無しで、どんだけやれるか。
あのときと違って、俺は賢者の称号を持っている。魔法力にプラス補正されてるから、そこそこ威力ありそうだ。
「ハッ……!」
ごぉおおおおおおおおお!
俺の目の前に、凄まじく大きな炎の玉が出現する。
「ちょっ!? 界人さん!? なんすかそれ!?」
「いやこれは……」
ちゅどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
放たれた火の玉は、教練室の壁に穴を開けた。
ぽかんとするなぎ……。
俺も明鏡止水がなきゃ、驚いていたとこだ。
「い、今のが……極大魔法っすか?」
「え、いや……ただの、初級……【火球】だけど……」
「威力ありすぎっすよ! やべえっすよー!」
賢者の魔法力が、まさか絶対壊れないって言われてた教練室の壁に穴を開けるなんて。
初級でこれなら、上級、極大は……うん。
使いどころは選ぼう。