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71話 出発

 朝。すでに太陽が上がっている時間ではあったが雲に覆われており、部屋の中は全体的に薄暗い。

 それでも昨日から降り続いていた雨が止んでいたことに蒼はなんとなくほっとした。

 

 すっかり着慣れた騎士服に身を包み、装備の最終チェックを行う。殆どの荷物は個人に配布されているウエストポーチのような空間収納袋の中に納めてしまうので、傍から見れば今から長期で家を離れるとは思えない恰好をしていた。

 

 仕込み武器や魔石の確認までが終わり、装飾品を身に着けていく。キラキラと輝く石が付いた宝飾品の数々は一見戦場にはそぐわないが、一つ一つに魔法が込められた魔力石で出来ているため、騎士は装飾品を多く身に着けている事が多い。蒼も例にもれず、琥珀の治癒の魔法が込められた魔力石やユーリの魔力石、クリスティアーネから渡されたテオバルトの魔力石、最後にジークのピアスを付ければ、厳選してもかなり数が多くなってしまった。

 最後に普段あまり身に着けることのない外套に袖を通して準備が完了する。そこまでしてから姿見の前に立てば、そこに写るのは精悍な女性騎士の姿だった。


 

 玄関ホールへ行くと既に準備を終えたユーリが立っていた。蒼のものとは異なるマント型の外套に身を包んだユーリは少し装飾品が多いだけでいつもと変わらない。

 この後は琥珀の護衛として一緒に帝都の入口まで向かうことになっていた。

 

 少しして琥珀とクリスティアーネが玄関ホールへとやってくる。

 クリスティアーネとはここで別れる事となる。


「立派に騎士としての務めを果たしてくるのですよ。でも、無理はしすぎないで、必ずこの家に戻ってきてください。母はこの家で貴方達の無事を祈りながら待っています」


 とうに覚悟は決まっていた蒼は表情を崩すことなく、その場で騎士の礼をする。その隣でユーリもそれに倣い同じく礼の形を取った。


 琥珀は胸の前で祈るように手を組み頭を下げる。


「行ってまいります、義母さま。ヴァイデンライヒの娘として、聖女として、立派に役目を果たしてきます」


 その姿は姉の蒼から見ても神々しく、まさしく聖女だった。


 最後にクリスティアーネと抱擁を交わし、名残り惜しいと感じながら家を出る。


 いつの間にかここが蒼の帰ってくるべき場所になっていた。



「絶対ここに戻ってきましょうね、姉さま」


「ああ」


 琥珀も同じことを考えていたらしい。琥珀の言葉に強くうなずいた。




 この先、きっと過酷な状況が待っているだろう。

 だが、どんなに状況が変わろうとも蒼が成し遂げたいことは決まっている。

 琥珀を守る。琥珀のいるこの国を守る。それだけだ。

短いですが、2章もひとまず終了です。

1章の終わりと同じく、いくつか閑話を挟んで3章へと入ろうと思います。

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