70話 集会(3)
「アオイ嬢、もう着くよ」
蒼が物思いにふけっている間に目的地についていたようで、いつの間にか下げてしまっていた視線を上げればそこには見知った人物が立っていた。
「久しいな、アオイ」
「久しぶりだな、ハルトマン」
ハルトマンは蒼の耳元で揺れるピアスを見て少し表情が曇ったが、それも一瞬の事で好意的に蒼を出迎えてくれた。
蒼はこの4年間で殆ど顔を合わせる事はなかったが、ヴェンツェルとはちょくちょく顔を合わせていたらしく、特に挨拶らしい挨拶をすることもなく視線を合わせるにとどまる。
「この3人で集まるとはね。なんだか懐かしく感じるな」
「あんまりいい思い出ではないがな」
蒼が素直に10代のころを懐かしさを口にすれば、ハルトマンは眉間に皺を寄せた。
腹を擦っているので、あの時の怪我の痛みを思い出しているのだろう。
そこからしばらくはヴェンツェルそっちのけで、2人で思い出話や近状報告などで盛り上がった。
少し経ってからふと思い立ったようにハルトマンがヴェンツェルに尋ねる。
「今更なんだが、お前たちの隊に私が加わっても良かったのか。こう言ってはなんだが、私は役職持ちでもないし、私より優れてるものなんでいくらでもいるだろう。それこそ第1師団とかに声を掛ければよかったんじゃないか」
ハルトマンの腕やヴェンツェルの選択を疑う訳ではないが、その辺りは蒼も少し気になっていた。事前にヴェンツェルから聞いていた他の遊撃隊は、第1師団の者や各団の実力者で構成されていたので。
「私はハルトマンを評価しているよ。確かに魔力は少ないし今は役職も持っていないが、近接戦闘においては、私が知る中でも上位に入る。今回、私が求めたのは戦場を俯瞰して見る力とスピードで、そのどちらもハルトマンには備わっていると考えている。確かに旧知の仲というのもあるが、流石に命がかかっている中でそれだけでは選ばないよ。まあ、あまり知らない人に背中を預けたくはないというのはあるけれど」
「そうか」
ハルトマンは少し照れくさそうに頭をかく。
「そもそも今回の作戦での遊撃隊の隊というのは名ばかりで、大体の隊が2人組なんだ。中には単騎もいるぐらいで。うちも私とアオイ嬢でといわれてたんだが、私はともかくアオイ嬢には経験が足りない。だから3人目を入れる事を条件に事を呑んだ」
「その3人目に選ばれたということか」
ヴェンツェルに褒められたハルトマンは本当に嬉しそうに笑みをこぼしていた。4年がたち、性格も丸くなったようで以前のようなとげとげしさは見られない。
「遊撃隊って他には誰が居るんだ」
「ハルトマンも知っているところだと、第4師団長の単騎やユーリ様の2人組などがあるね」
「ジルベルト第4師団長か。師団長が前線に出てもいいのか」
「元々、団をまとめていたのはライラ様だし問題ないのではないかな」
「そもそもあの人が戦っているところを見たこと無いな」
「遊撃隊、しかも単騎で選ばれるのなら相当強いんじゃないか」
疑問は尽きないが、決める事を決めないと終われない。
雑談もそこそこに、今回の作戦の詳細を詰めていった。
早いですが2章ももうすぐ終わります。3章はもう少し長くなる予定です。




