69話 集会(2)
話が終わった後は部隊ごとに顔合わせと今後の詳細についての話があるため、指定された場所へ集まることになっていた。
部隊の詳細と集合場所についてはすでに聞かされていたので、ヴェンツェルと共に迷うことなく歩き始める。
一緒にいた3番隊の残り3人は配属が別なので、ここで別れる事になる。テレーゼはヴェンツェルと共に行く蒼を少しうらやましげに見ていた。
蒼は歩きながら、先日行われた3番隊内での会議を思い出す。
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「なんでうちだけ後方部隊なんすか! 教会騎士団は配置換えがないって聞いてたのに」
「テレーゼだけとは言っていない。ノイとフォルも同じだ」
部隊分けの詳細がヴェンツェルから告げられると、真っ先にテレーゼが意を唱えてきた。
今回の部隊分けは所属師団に関わらず行われることとなっていたが、それは師団による偏りを無くすためであり、比較的隊ごとでバランスが取れている教会直属騎士団はその限りではない。現に蒼たちの所属している3番隊以外は、そのままの人員プラスαで今回の部隊分けが行われている。
ただし、3番隊は例外で2つに分けられることになった。
蒼とヴェンツェルはここにもう1人を加え、少数精鋭の遊撃部隊として最前線で戦うことになっている。テレーゼ、ノイ、フォルの若者3名は前線部隊の中でも後ろのほうで、聖女である琥珀の守りを担うことになっていた。
「ノイとフォルはまだ子供だから分かるっすけど、なんでうちまで……。うちも前衛で充分戦えるっす! そんな知らないやつ入れる位ならうちを使って欲しいっす!」
教会騎士団の深刻な騎士不足により例外的に騎士となったが、ノイとフォルはまだ10歳なので最前線に立たせないというヴェンツェルの判断に蒼は頷く。
対するテレーゼは14歳なので早ければ騎士団訓練生に志願していてもおかしくない年齢ではあるが、21歳になった蒼からしてみれば十分子供である。
「確かにノイとフォルは年齢的な面も踏まえて外したのはあるが、テレーゼはそれで外したわけではないよ」
「だったらなんでなんすか」
「単純に私たちの属性と相性悪い」
「うっ」
テレーゼが火属性なのに対してヴェンツェルは水、蒼は雷もあるもののメインは氷。火と水では相性が悪い。
「今回の戦で私とアオイ嬢に求められるのは遊撃隊として現場の状況を見極めながら自由に行動し、敵を攪乱しながらなるべく数を減らすことが要求される。魔力量の多い私たちは広範囲魔法を使うことになる。テレーゼは私たちより魔力が低い事に加え、水に不利な火属性だ」
「でも……それでも! 魔法を使わず前衛に徹すれば」
「確かにテレーゼの前衛としての活躍や実力は分かっている。だが今回は今まで相手にしてきた単純な魔獣ではなく知力を持った人間である以上、目の前の敵をただ倒せばいいという訳ではない。戦況を広く把握しながら戦う必要があるが、テレーゼではまだ務まらないと判断した」
そこまで言われると、テレーゼは何も反論できなくなった。顔をこわばらせ、今にも泣きそうな表情になりながら騎士服の裾を握りしめる。
あまりの落ち込みぶりを見かねた蒼がフォローを入れる。
「別にヴェンはテレーゼを否定しているわけではないよ。経験が足りていないだけでテレーゼは騎士として十分素質はあると私も思ってる。適材適所という言葉があるように、テレーゼは聖女様の守りが相応しいと判断したからこその配置のはずだ」
蒼が同意を求めるようにヴェンツェルを見れば、それに応えるように頷いてくれる。それを見たテレーゼは落ち着いたのか、こわばっていた表情が少し和らいだ。
自分より背が低いテレーゼの目線に合うように蒼は少しかがみ、手を取りながら語りかける。
「常に傍にいれない私の代わりに聖女様を……妹の琥珀を守って欲しい。ノイとフォルのこともよろしく頼む」
蒼がそういえば、テレーゼも納得したのか頷いてくれた。




