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65話 告げられる思い(2)

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、あともう少しで日が落ちるという頃。

 そろそろ解散かと思い、帰り支度を済ませた蒼が立ち上がろうとすると、ジークがそれを制止した。

 

「帰る前に、少し大事な話がある」


 いつもとは違う真剣なまなざしに反論もわすれ、そのまま腰を下ろし座りなおす。


 引き留められたものの直ぐには話を切り出されず、お互いに無言の状態が続く。

 暫くして意を決したのか、ジークは深呼吸をした後、硬い表情のまま蒼の前に1つの箱を差し出した。リングケースのような箱が開かれると、そこにはジークの瞳と同じ色をした薄紫色の雫型の宝石が揺れるピアスが一つと、石が嵌っていないピアスの金具が一つ入っていた。

 そのままずいっと箱が差し出されたのでよくわからないまま受け取り、首をかしげながらもジークの方を見る。


「俺は明日から実家に帰省して、帝都を2週間ぐらい離れるから。帰って来た時に返事を聞かせて欲しい」

 

「待ってくれ、これはなんなんだ?」


 捲し立てられ困った蒼が思わず尋ねると、ジークは面を食らったようで少し硬直した後、思い当たることがあったのかばつが悪そうにしながらおずおずと口を開く。


「ああ、アオイちゃんはこれを知らないのか……。俺の口から説明するのは少し恥ずかしいんだけど……つまるところ、プロポーズ、なんだよね」


 頬を赤らめ目を背けながら語るジークに衝撃の事実を告げられ、蒼もつられて赤面する。恥ずかしさを押し殺しながらジークは丁寧に説明してくれる。


「この国では婚約するときに、お互いに片方だけのピアスを贈りあうんだ。平民だと魔物から取れる魔石だったりするけど、俺とかアオイちゃんみたいな高魔力保持者同士だと、お互いの魔力を込めた魔力石で作ったピアスを交換するんだよね。これは婚約前のプロポーズでも使えてね。俺がしたみたいに婚約する前に片耳分と台座を送られた場合は、受けるなら自分の魔力石をはめてピアスを贈り、断るなら何もせずそのまま返す。そんな風習があるんだよね」

 

 魔力石は魔法を込めずに純粋な魔力を込めるとか、合意が取れたらお互いのピアスを肌身離さず付けるとか、その後もジークは照れながらも説明をしてくれるが、蒼の頭が真っ白になっていた。

 そんな蒼の様子を見て、ジークは少し困った顔で頭をかく。


「いきなり言われても困るよね。さっきも言ったように、俺はしばらく帝都を離れるから。その間ゆっくり考えてくれればいいから」


 曖昧に返事をして心ここにあらずのまま、会計を済ませ店を出る。

 いつも通りジークが家まで送ってくれるが、カフェに入る前とは正反対に会話は弾まず、ほとんど何も発しないまま、ヴァイデンライヒの屋敷の前までたどり着く。

 ようやく顔を上げてジークの方を見れば、少し恥ずかしそうに頬を赤らめながらもいつものように微笑みかけてくれる。


「今日は付き合ってくれてありがとね。多分暫くはこんなことできないだろうし、久々に羽を伸ばせて楽しかったよ。返事については……前向きに検討してくれると嬉しいかな。駄目でも友達として傍に居させて欲しい」

 

「……わかった」


「そんな固くならないでよー。アオイちゃんの思うままに返事して。じゃあ、また今度ね」


 そのまま軽くハグをすると、蒼に気を使ってか足早にジークは立ち去る。


 蒼は鞄に入れたそれに触れながら、悶々とした気持ちを抑え、ゆっくりとした足取りで屋敷の門をくぐった。

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