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58話 教会騎士団3番隊(1)

「今年に入ってこれで3件目か。流石に多いな」


 刀に付いた血を払いながら、蒼はぼそりと呟く。


「いいじゃないですか、アオイ先輩。外に出て身体を動かす方が気持ちいですよ」

 

 蒼に話しかけてきたのは、屈託のない笑顔が良く似合う少女である。くりっとした赤い双眸に栗色の髪を三つ編みおさげにしたあどけない少女は、その手に似つかわしくない大ぶりな戦斧を握りしめていた。更には、身体どころか顔にまで血をべったりと浴びており、傍から見ればかなり猟奇的に見えるだろう。

 その風貌を見た蒼は、眉を顰める。


「テレーゼ、何度も言っているだろう。もう少し返り血を浴びない努力をしてくれ」


 そう言いながら、蒼はテレーゼと呼んだ少女に水を浴びせる。このまま洗い流して、テレーゼが自身の火の魔法で乾かすまでがお決まりの流れと化していた。少し氷の魔力を使って水を冷たくするのは警めも兼ねているが、効果があったことは無い。

 確かに、返り血を浴びないようにして危険を冒してしまっては元も子もないのだが、彼女にはそれを成せる技量が十分にあるのを蒼は知っている。それでも血を浴びるのは、彼女が血を好んでいるからだ。もしかしたら前世が吸血鬼なのかもしれない。

 

 

「テレーゼはそろそろ反省した方が良い」


「隊長に言いつければ済むと思う」


「ちょ、ヴェン先輩に言うのはご勘弁を!」


 立て続けにテレーゼを責めるのは、ノイとフォルの双子の兄妹。双子というだけあって見た目は瓜二つで、二人共白髪を肩口で切りそろえている。唯一瞳の色が異なっており、兄のノイは紫、フォルは銀色の瞳を持つ。

 


 蒼が教会騎士団に入ってから4年が経過していた。

 教会騎士団は帝国直属騎士団と比べると人気がなく、騎士の数が少ない。それもあって蒼は早い段階で念願の琥珀の護衛騎士として就くことが出来た。

 ただしそれも最初だけで、教会騎士団を構成している隊の見直しが行われた結果、教会騎士団3番隊の副隊長に任命される。3番隊の任務は名目上、琥珀の護衛騎士が主ではあるのだが、副隊長という立場から蒼が直接琥珀の警護をする機会は殆どなくなってしまった。

 そもそも遠征などに行く場合は別として、常に騎士が巡回している教会内では大がかりな警護は不要なため、平時は一人が琥珀の傍に居ればいい。

 また、同時に隊長に任命されたヴェンツェルにより、琥珀の警護以外の仕事がかなり増え、中々ハードな活動を強いられている。


 3番隊は最初こそ元々教会にいた騎士で成り立っていたが、活動内容がハードすぎたせいか、蒼以外の騎士は次々と他の班に移ってしまった。

 隊員はヴェンツェルが直々に拾ってきたもので構成され、結果として個性豊かな面々が多く残った。


 今の3番隊は、先程出てきたテレーゼ、ノイ、フォルの合計5人で形成されている。教会騎士団の隊の中でもかなり少ないが、使用武器的な意味でも魔力的な意味でもかなりバランスは良い。 

 ただし、変わり者も多かったため、裏では変人隊と呼ばれている。蒼は後輩は可愛いと思うものの、その中に含まれていることが、些か不本意だった。

新章始まりました。少し時間が飛んで4年後からスタートします。よろしくお願いします。

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