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50話 リスタート

 実地訓練から3カ月近くが経過した。

 

 全てが元通り……とはならないが、あの時に受けた傷は完治している。

 ただ、身体を動かす分には支障がないくらいには回復したものの、魔法が直撃した左肩を中心に首や手の甲、太もも辺りにまで樹状の火傷跡が痛々しく残っている。この世界の治癒魔法は時をさかのぼるわけではなく、細胞を活性化させ回復を促すだけなので、傷跡は消えない。

 生死の境をさまよっていたハルトマンが優先され、命に関わらない蒼が後回しにされた結果、火傷跡が残った。



 因みに回復魔法についての補足だが、この世界の魔法はイメージによるものが強いので、刺し傷などの目に見えてわかる外傷などには強いが、病気や毒などのイメージがつきにくいものには効果が薄い。死んだものを蘇らせることは不可能だし、古傷に関しても効果はない。そもそも強い光属性を持つ者が少ないので研究が進んでいないのも要因の一つだが、万能でないことは確かだ。

 ただし、琥珀の持つブレスレットはこの定義には当てはまらない。琥珀の魔力を吸い取りイメージ関係なく自動的に発動するため、病気や毒などにも効果があるのではといわれている。まさか試すわけにもいかないので真偽の程は定かでないが、こちらの世界に来てから琥珀が体調を崩したことがないのは事実である。ブレスレットは今のところ琥珀にしか扱えないので、汎用性はない。



 蒼の傷跡は見た目こそ派手だが、既に痛みもなくこれといった後遺症もない。首の傷は頬のすぐ下にまで広がっており、服では隠れないためどうしても目立ってしまう。

 琥珀には泣かれ、ヴァイデンライヒ家の人々やジークには心苦しそうに見られたが、蒼はこれでよかったと思う。


 これは戒めであり、忘れてはいけないものなのだから。


 傷跡の他にも蒼には変化があった。元々うまく使えていなかった風属性が消え、代わりに雷属性の魔力が宿っていた。

 このようなことは今までの歴史上なかったようで、第4師団を中心に蒼の元へ事実確認をしにくる人が絶えなかった。

 死んでもおかしくない程の強大な雷属性の魔力を浴びたせいではと考えられているが、蒼には心当たりがある。女神様の「おまけをあげる」というのがこれだったのではと。真相はまさしく神のみぞ知る、である。

 正直、風よりは雷の方が扱いやすそうではあるので、この変化は蒼的には歓迎だった。



 帝都への輸送や入院で1カ月近くを費やし、そこから第4師団での魔力調査、今回の件の事情聴取、意思確認の面談、壊れた装備の補充等があり、それ以外にもヴェンツェルとハルトマンとで話したり、ジークから食事に誘われたり、公私共に忙しかった。


 それらもようやく落ち着き、今日からまた新しい日々が始まる。

 

 教会直属騎士の証である紺色の騎士服に身を包み、教会の門をくぐった。

 蒼は訓練生ではなくなり、本日から教会直属騎士団の所属となる。

 


 ここからが本番なのかもしれない。


 神平蒼はここで終わり。

 これからはアオイ・ヴァイデンライヒとして、騎士として。

 聖女である琥珀のため、自分も住まう国のためにこの先を生きていく。


 守るべきものはもう間違えない。もう迷うことはない。


 ここからリスタートしよう。

これで1章が終わりです。次話からは実地訓練後何があったのかなどの小話を数話挟んだ後、次章に続けていこうと思います。

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