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49話 報告書と反省

報告書部分の改行が変になっていたらすみません。

――――――――――――――――――――

 国境近辺巡回作戦中における第5班襲撃について、班員からの聴取結果報告

 

 (1)作戦行動中に対象と思われる集団と遭遇

  以前提出した報告書と重複するため、簡易的に記載。

  ・班長ヴェンツェル=ラヴァル及びハルトマン=シュタウディンガーを中心に集団を殲滅。

  ・その際、近くにいた男を後衛のアオイ=ヴァイデンライヒが捕縛。

  ・男について、一般人かの判別がつかなかったため縄で拘束し、作戦を続行。


 (2)目標地点到着後の襲撃

  ・班長ヴェンツェル=ラヴァルが定例へ向かった後、襲撃が発生。

  ・拘束していた男が高密度の雷属性の魔法を放ち、自ら拘束を解く。

  ・その際、近くにいたアオイ=ヴァイデンライヒが負傷、一時的に意識を失う。

  ・男による2撃目でハルトマン=シュタウディンガーも負傷。

  ・電撃で動けなくなったハルトマン=シュタウディンガーに対して

   男が執拗に攻撃をし、全十数ヵ所を刺される。

  ・アオイ=ヴァイデンライヒが覚醒。男と交戦し、そのまま殺害。

  ・アオイ=ヴァイデンライヒがハルトマン=シュタウディンガーに治療を施した後、

   再度意識を失う。

  ・班長ヴェンツェル=ラヴァル及び第1師団所属のユーリ=ヴァイデンライヒが到着。


 (3)各自の事後について

  ・ハルトマン=シュタウディンガーについて

   アオイ=ヴァイデンライヒにより、簡易的な治癒が施されていたが、

   予断を許さない状態だったため、優先的に治療を施される。

   帝都到着後、聖女コハク=ヴァイデンライヒの治癒魔法により、回復。

  ・アオイ=ヴァイデンライヒについて

   魔法が直撃した左半身の火傷が酷いものの、

   命に別状はないため、簡単な応急手当のみ行う。

   帝都到着後、ハルトマン=シュタウディンガーの容体が安定した後、

   聖女コハク=ヴァイデンライヒの治癒魔法を施され、傷跡は残ったが回復。

   受けた雷撃によって、身体に変化が起きたと見て、現在第4師団にて調査中。


 以上が国境近辺巡回作戦中における、班員から聴取した結果である。

 

 

 ヴェンツェル=ラヴァル


―――――――――――――――――――― 


 夜も更けた薄暗い部屋の中、コトンとペンを置く音が響いた。

 報告書を一通り書き終えて、ヴェンツェルは息をつく。


 実地訓練が終わってからすでに1カ月が経過している。この報告書を書き終えるまで随分と掛かってしまった。

 大筋の報告は済ませていたが、当事者であるハルトマンと蒼に話を聞かなければわからないことも多いので、結局報告書を分けることとなり、複数書くことになった。


 あの日、落雷の音が聞こえ急いで現場に駆けつけてみれば、辺りは季節外れの雪が降り積もる異様な光景が広がっていた。その中で青年は身体に穴を開け、雪を赤く染めながら息絶えており、班員の二人はぼろぼろの状態で降りしきる雪の中、折り重なるように倒れていた。

 二人ともあの傷でよく生きていたと思う。遠くからでも確認できるような威力の電撃を食らってショック死しなかった蒼もそうだが、ハルトマンに至っては十数ヵ所を刺されており、蒼が応急処置をしていなかったら助からなかったかもしれない。


 作戦終了後の調査によると、ヴェンツェル達が壊滅させた集団は盗賊行為もしていたが、実際の所は危険思想を持ったテロリストであり、その中でもあの青年は奥の手のような存在だったようだ。平民の中では珍しく、魔力量が多い人物だったらしい。


 本来であれば第1師団の部隊が対応に当たるような事例で、事前にわかっていれば実地訓練は行われなかった。そのため今回の件で班長のヴェンツェルが責任を取るような事態にはならなかったが、納得はいかなかった。

 

 ヴェンツェルは報告書とは別の紙を広げ、思案しながらペンを走らせる。考え事をしながら紙に書き出すと考えが纏まりやすい。好きなだけ紙が使えるからこそ使える方法だった。

 

 ペンを走らせているその顔にはいつもの笑顔はなく、表情は険しい。人前では決して見せないような顔をしていた。


「急造の班だったとはいえ、どうにかできたはずだ」


 カリカリと紙に書き込みをしながら思案に暮れる。

 唯一の救いは誰も死ななかったことだが、それも運がよかっただけ。

 女神様には感謝してもしきれない。


「人数は少なかったが、駒は十分だったはずだ」

 

 戦力としてはやや不足気味だが精神力は強かったハルトマン。対して、力は持っているが精神力はやや弱かった蒼。二人の弱い部分も理解して動けるように、動けなくてもサポートできるように、そういう体制を組んできたつもりだったが、見通しが甘かったようだ。

 ……元はと言えば、自分が青年の力を見誤ったのが原因だろう。蒼が何を言ってもあそこで切り捨てるべきだった。

 

「もう、このような失敗はしない」


 思考を巡らせることに区切りをつけ、使った紙を燃やしながら、決意を口にする。

 この世界に来てから戦線に立つことがなかったので、随分と甘くなっていたのかもしれない。

 

 かなり夜も更けてきたので寝ようと思ったが、目が冴えてしまい眠れそうになかった。仕方なく愛用のハルバードを手に取り、身体を動かすために部屋を出た。

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