表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/74

47話 実地訓練後半戦(5)

「あら、もう来たのー?」


 聞き覚えのある、だが聞きたくない声で目が覚めた。

 

 蒼が目を開けると、そこには自分を顔をのぞき込んでいる見知った顔があった。

 ある意味、二度と見たくない顔。


 

 ここにいるということはつまり、自分が死んでしまったことを指すのだから。



「女神様……ですよね」


「そうよー。ずいぶん早く戻ってきたのねー」


「私は死んだのですか」


「うーん、微妙ねー。心臓は止まってしまっているけど、まだ巻き返しは可能ねー」


 まだ、完全に死んでいないと知って、蒼は少しほっとした。


「女神様、お願いします。私を戻してください」


「できるけど……本当にそれでいいの? ここに来たのだからまた違うところに転生させてあげてもいいのよ。今度こそハッピーライフを堪能できるかもしれないわ。ひどい目にあって、ひどい傷を負って、これからだってたくさん傷付く事になるかもしれない。それでも貴女はあの場所に戻りたいの?」


 女神様はいつもの間延びした話し方ではなく、少し真面目な口調になった。

 いつもと違う雰囲気に蒼は少し怯んだが、それでも自身の主張を曲げることはしない。


「それでも私はあそこに戻りたいです。そもそも琥珀と一緒に居る事を願って同じ世界に転生したのに、このまま私一人で違う世界には行きたくありません。それにこの世界にも大切な仲間が出来ました。まだ戻れるのなら、戻してください」


 琥珀と離れるのはもちろん考えられないが、この世界にも大切な人がたくさんできた。もう失いたくはない。


 あの場に残してきたハルトマンも気がかりだった。


 

「貴女が本当に望むのならいいでしょう。元々、願い事も二つしか叶えてなかったしねー」


「刀を貰ったと思うのですが……」


 蒼はあの刀が三つ目にカウントされると考えていたのだが、どうやら違うらしい。


「あれは私達に会えなくても、転生させる人に平等に与えている物だから、カウントされないのよー。そもそも、別に三つじゃなくてもいいのよー? それは私が勝手に決めていることだからー」


 ここに来て新たな事実が発覚し、蒼は驚く。

 基本的には女神様の匙加減で決まるらしい。よく思い返してみれば、そもそも最初に言われていた「良い行い」というのも、曖昧な表現ではあると思った。



「じゃあ、取りあえず戻してあげるわねー。他に願いはないかしらー?」


 相変わらずの願いの押し売り業者ぶりに、思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 ただ、欲しいものはあったので少し考え込んでしまった。


「あら、願いがあるのー?」


「いえ、こればかりは自分の気持ち次第なので」

 

 本当は、折れない強い心が欲しい。

 ただどんなに欲しくともこればかりは、自分の気持ち次第だろうと蒼は口にすることはない。


「別になんでもできるわよー」


 微かにカチリと、何かを閉じるような音が聞こえた気がした。


「今、何かしましたか」

 

「いいえ、別にー」


 違和感を感じ思わず尋ねるが、女神様は表情を変えず、ただニコリとしているだけ。

 不思議と違和感があったのは一瞬だけで、直ぐに何も思わなくなった。

 


「私、貴女のことをとても気に入っているから、おまけをあげるわー。だからもうこんな早くここに来ちゃ駄目よー?」


 女神様が「じゃあ頑張ってねー」と言うと、眩い光が放たれる。

 そしていつかと同じように光に包まれ、蒼は意識を手放した。


 

 ――――――――――――――――――――

 

「転生したいって言われなくてよかったわー」

 

 蒼が居なくなった空間で、女神は少しほっとしたようにつぶやいた。

 

 

 下界が見れる鏡で戻った蒼の様子を暫く覗き込み、問題ないことを確認して、思わずにんまりする。

 

「うまくいきそうで安心したわー。先が楽しみねー」


 それはそれは心底楽しそうな声色だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ