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45話 実地訓練後半戦(3)

 戦闘後の後処理は一律この作戦の終了後に行われるため、死体はそのままに一行はさらに奥へと進む。

 

 青年については意識がないまま放置することはできないので、蒼が責任もって担いで連れて行くこととなった。青年は蒼よりも身長も体重もあったが、身体強化の魔法を使えば難なく担ぐことができる。もっとも、魔力はそれなりに使うので、蒼ならともかく魔力量が少なめのハルトマンではこの方法は使えないだろう。

 

 

 最初の会敵以降は誰にも会うこともなく、難なく目標地点へとたどり着くことができた。結局、青年は目を覚ますことはなく、それに対して蒼はやりすぎたのではと不安を覚える。

 ただ、心配してもやってしまったことは覆しようがないので、生きているだけましと自分に言い聞かせ、後ろ手を縛った状態でそばに寝かせる。

 簡易的に夕食を済ませ、ヴェンツェルは定例へと出かけていった。魔獣討伐作戦中とは違い期間が短く、予定もきっかりきまっているので定例は夜のみとなる。青年の処遇に関しても聞いてきてくれるとのことだ。


 ヴェンツェルが居なくなり、蒼とハルトマンの二人きりになる。

 今夜は月も出ておらず、辺りは暗闇に包まれていた。小さな魔石灯の明かりだけが頼りとなる。


 ハルトマンは蒼とは少し離れた所で木に背を預け、昼間に使った剣などの道具の整備をしている。蒼もそれを見ながら、自身も道具の整備をしていた。あの話以来、二人の間ではほとんど会話はない。

 蒼は予備の刀である脇差しの手入れをしていた。こちらは女神様からもたらされた魔法具ではなく、普通の刀なのでメンテナンスが必要なのだ。もっとも、ほとんど使うことがないので、手持ち無沙汰なのを隠すために磨いているだけなのだが。おかげで蒼の脇差しはこの実地訓練中、新品のようにぴかぴかだった。

 お互いに会話することもなく、黙々と作業を続ける。



 ひたすらに脇差しを磨いていると、青年が目を覚ましたのか微かに声を出した。

 

「うぅ……」


 蒼は青年が無事に目を覚ましたことに少し安堵する。


「目が覚めたか」


「これは……」


 自分が縛られた上で転がされていることに気付き、青年はいぶかしげな表情になる。蒼は手を貸し青年を座らせ、自身は立って見下ろす形を取る。そして、現在置かれている状況を淡々と説明していく。


「君の身柄は騎士団で拘束させてもらった。君が盗賊などではなく、通りすがりの善良な一般人であるというのなら、手荒なまねはしない。この軍事作戦が終わったら解放すると約束する」


 暗に盗賊だといわない方がいいと、言葉に含みを持たせる。せっかくつないだ命を無駄にして欲しくないという蒼の願いでもあった。

 その様子をハルトマンは手を止めることもなく、横目で静かに見ていた。口を出すつもりはなく、成り行きを見届けている。


「他のみんなは……」


 この返事を聞いて、やはりこの青年もあの一団の仲間だったのかと、なんともいえない気持ちになった。


「……こちらに襲いかかってきた集団は全て殺した。残っているのは君だけだ」


 青年は目を見開く。しばらく呆然としていたが、事実を飲み込めたのか歯を食いしばり、怒りの形相でこちらをにらみつけてくる。


「君もあの一団の仲間なのであれば、私は君を斬らねばならない」


 蒼は感情を表に出さないよう平然を装い、死刑宣告をする。

 いつの間にかハルトマンは立ち上がりこちらを見つめていた。静観を決め込んでいるのか、木に背を預けるポーズは変わらない。そのまま蒼の覚悟を見届けるのだろう。



 蒼は諦めると同時に覚悟を決める。青年に向き合い大太刀を手にかけた時、それは起こった。

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