36話 実地訓練前半戦(2)
集合場所に着いた蒼が辺りを見渡すと、既にジークとヴェンツェルがいた。
「アオイちゃん、おはよー。もうみんな揃っているよ」
ジークに言われ改めて辺りを見渡せば、かなり多くの人が集まっているのが目に入る。
自分たちの近くには、見慣れた訓練生たちが少し緊張した面持ちで、仲の良い面々と話しているのが見える。そこから少し離れた場所には、第5師団の団員と少人数の第1師団の団員が打ち合わせをしていた。その中にはユーリの姿も見受けられる。
第5、第1師団とは反対方向の離れた場所には、馬車が止まっており、そのまわりを見慣れない紺色の騎士服を纏った集団が囲んでいる。色から察するに教会騎士団の集まりなので、あの馬車には琥珀が乗っているのだろう。
蒼がジークとヴェンツェルと合流してしばらくすると、集合がかけられた。ばらばらに散らばっていた騎士たちが第5師団の周りに集まる。
「みんな集まってくれたか。訓練生もそろっているな。……よし、今回の作戦の指揮を執る、第5師団師団長のグレゴールだ。早速、今回の魔獣討伐作戦及び国境近辺巡回作戦の説明をうちの副師団長からしてもらう。ティル、頼む」
「はい」
テオバルトより更に大きく感じるグレゴールの隣に、かなり小柄な人物が立つ。女性の平均より少し大きいくらいの蒼より一回りくらい低く感じた。中性的な童顔、細身の体つきも相まって女性かと思ったが、声を聞いた感じは男性なのだろう。女性と見間違えるほどの華奢な彼は屈強そうな男性が多い第5師団の中にいると、とても目立つ。
「作戦の説明をさせていただきます。すでにご存じかと思いますが、今回は大きく分けて2つの作戦を実施する予定です。これらについては、訓練生に対する第5師団での実地訓練とさせていただきます。訓練とは言っていますが、実戦ですので気を引き締めてかかるようにしてください。何があっても我が団では責任を負いません」
ティルは手元の資料を見ながら、表情を変えずに淡々と話していく。
「まずは1つ目、魔獣討伐作戦について説明させていただきます。帝都と国境の中間あたりの森で強力な魔獣が観測されており、その影響で弱い魔物も群れをなしている状態です。こちらの強力な魔獣を聖女様に対応していただく予定です。第5師団員および訓練生については弱い魔物を狩る等、基本的には聖女様のサポートを行います。万が一、怪我人が出た場合も聖女様に対応していただく形となりますので、聖女様には負担をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
元々、琥珀は回復メインで余裕があれば魔獣狩りの予定だったのだが、琥珀から志願してこのような形となったらしい。蒼的にはあまり無理をして欲しくなかったが、琥珀は訓練生より日程的に余裕があるから頑張りたいと言い、魔力的にも実現可能だったため、琥珀の希望が通りこのような形となった。
「聖女様は魔獣討伐作戦が完了次第、帝都に帰還していただきます。その際は教会騎士団の方とは別に第5師団からも少数を伴わさせていただきます。残った第5師団の面々と訓練生はこのまま国境付近まで出向き、第5師団でいつも行っている国境近辺巡回作戦に参加していただきます。こちらに関しては、野盗が多発しているとの情報がありますので、そちらに主軸を置いて行動していただきます。情報を聞き出すために何人かは生きたまま捕らえたいと考えていますが、基本的には生死は問いません」
生死は問わないと言われ、蒼は思わず眉をしかめてしまった。捕らえて、事情聴取などを行った上で裁かれるのだと考えていたが、そこまで甘くはないようだ。日本とは違うのだと改めて感じる。
「訓練生には3人1組の班に分かれていただきます。すでに班と班長は決まっています。班長に班員を伝えるので後で確認してください。質問がなければこのままいったん解散としますが、各師団の副師団長以上および訓練生の班長は別途話がありますので残ってください」
特に質問は出ず、全体への説明が終わる。訓練生の班長としてヴェンツェルとジークは呼ばれたが、蒼は呼ばれなかった。




