30話 補習の帰り道
門の手前でラウラと別れた蒼が外へ出ると、そこには見知った顔の人物が待っていた。
「義兄上」
「第4師団に少し用事があって来ていた。蒼もそろそろ終わる頃かと思い、待たせて貰った」
仕事終わりに第4師団へ顔を出していたユーリは蒼を待っていてくれたらしい。そのまま二人で夕食を取ることになり、繁華街へと足を運んだ。
騎士という仕事の都合上、勤務時間がバラバラかつ付き合いなどもあるため、ヴァイデンライヒ邸では朝以外の食事は事前申告制だ。申告していなくても軽食程度なら出してもらえるが。
行事や月一で定められている食事会以外では揃って食事を摂ることが少ない。
蒼と琥珀は出来る限り一緒に食事を取っていたし、テオバルトとクリスティアーネも合わせて取ることもあるみたいだが、ユーリと夕食を共にすることは殆どなかった。
尤も、休日の昼間に甘いもの食べに行くことはあったが。
夕食を取るべく入った店は、ジークと行った店より落ち着いた雰囲気のレストランだった。ユーリの場合、食事よりもデザートに重きを置いているため、自然とこういう雰囲気の店が選ばれることが多い。
食事を取りながら今日の出来事を話す。ユーリは酒が入っていることもあってか、いつもより饒舌になっているよう蒼は感じた。
「第4師団の訓練はどうだった」
「今日1日補習を受けたおかげで、ようやく魔力操作の感覚が掴めるようになってきました」
「1日で感覚を掴めるなんてアオイは優秀だな。俺は何度も補習を受けたし、なんなら今も通っている」
そう言うユーリはばつが悪そうな顔をしている。
「今も通っておられるのですか」
「あそこの副師団長は属性が一緒で戦闘スタイルも似ているから、訓練生の頃から目を付けられてしまって。完全に弟子扱いで、今でも月に1回位通うよう言われている」
第4師団の人達は研究以外にあまり興味がないように見えたが、どうやらそうでもないらしい。
食事が終わり、ユーリが大量のデザートを頼み始める。蒼にとっては見慣れた風景で恒例行事と化していた。
「ラウラ副師団長の訓練はきつくなかったか」
「いえ、今日は副師団長ではなく、師団長直々に教えていただきました」
「師団長が出てきたのか」
蒼の言葉を聞くや否や、ユーリは驚きの表情を浮かべる。
「そんなに珍しいことなのですか」
「ああ。第4師団の師団長はほとんど表に出ることは無いんだ。ラウラ・ニーチェを副師団長に据えてからは、式典等もどうしても出席しなければならない場合を除き、すべて彼女に任せている」
「今日は普通に、とてもアグレッシブに顔を出されていましたが……」
「だから驚いている」
ユーリは食べる手を止め、眉をひそめていた。
「師団長はどういった方なのでしょう」
そう聞くとユーリは考え込む様子を見せた後、言いづらそうに口を開く。
「申し訳ない。第4師団長については、規約もあってあまり多くは語れないんだ。彼に害を成す者でなければ悪い人では決してない。彼が直接出てくるということはそれが必要なのだろう。あまり警戒せず委ねるといい」
ユーリはそう言うと止めていた食事を再開させた。蒼もこれ以上第4師団長の話を続けることはやめ、飲み物を口にする。
謎多き第4師団長の謎がさらに深まってしまったのだった。




