27話 魔法訓練補習編(2)
「身体強化の魔法は比較的、簡単に使うことが出来るんだ。あれは身体に循環している魔力をそのまま身体に対して利用するものだから、魔力量の細かな調整が不要なんだ」
ギルベルトは蒼の疑問に答えてくれる。簡単なものしか教えてもらっていないとはいえ、身体強化の魔法は使いこなせている自信があった。なのに実際のところ、普通の魔法についてはからきしだったので、何故これほどまで魔法が使えないのだろうと疑問に感じていた。
「もちろん、身体強化の魔法だって外に放つ魔法と同じで、魔力を込めれば込める程、効果は強くなっていく。その分身体に負担がかかるから無意識のうちに魔力を抑えてるってわけ。これが外に放つ魔法となると勝手が違ってくる。無意識のうちに行っていた魔力調整を意識して行わないとアオイ君みたいに氷柱を立ててしまうということ。まあ実践で使うことを考えれば、最終的には意識せずに出来るようにならないとだけどね」
ラウラはこの話が始まる前にギルベルトから指示を受けたため、この場にはいない。止めるものがいないからか、ギルベルトは語り続ける。
「大体、第4師団の訓練に来るまでは、貴族のように保有魔力が多めの人達は身体強化の魔法しか使えない人が殆どだよ。アオイ君ほど魔力量が多い人はあまりいないけど、威力によっては危険が伴うからね。逆に平民のように保有魔力量が少なめの人達は普段から魔法を使っている。使ったところで火付けだとか、少し痺れる程度の魔法しか扱えないし、生活する上で必要だからね。まあ、基本的には淡々とこなしていたヴェンツェル君とジーク君が規格外なだけだよ。確かに今期はアオイ君以外は大体こなせていたけど、魔力量が多ければ多いほど調整は難しいから気にしなくていい。個別指導に関してもアオイ君が特別なわけでなく、必要であれば行っていることだしね」
とは言え、今期は蒼だけ補習とのことなので心は晴れない。
「話が逸れてしまった。先程も言った通り、身体の中で循環している魔力を使うのは難しくない。対して魔力を外に出すと魔力が空気中に離散するし、感知もしにくくなるから難しい」
そう言うとギルベルトは蒼の背後に周り、背後から手を回し蒼の手に自身の手を添えてくる。
「ち、近くないですか」
「正面に立って僕に氷が刺さったら困るじゃないか。最初は僕が補助するつもりで、それには触れる事が必要だからこのままね。なに下心なぞ、1mmもないから大丈夫」
下心がないものは、下心がないとは言わないのではと蒼は思う。
「集中出来ないのですが」
「気にしない、気にしない。さあ始めよう。魔力の出し入れは魔力の扱い方を学ぶには最適だからね」
気にするなと言われても気になるものは気になる。そんな蒼の気持ちを無視してギルベルトは話を進める。
「身体の中の魔力に集中するんだ。コップに水を注ぐように、細く優しく手のひらに魔力を集中させて」
背後のギルベルトを忘れるためにも、身体の中の魔力に集中する。触れている手が少しピリッとした気がした。これが補助なのだろうか。
集中出来ているのか、はたまたギルベルトのおかげか、昨日より自分の中の魔力が感じられる気がする。魔力を手のひらの上に出すイメージをすると、ピキピキと音を立てながら氷の塊が出現した。昨日と比べればだいぶサイズは小さくなり、手のひらに乗りそうなサイズ感ではある。
「昨日よりは全然いいね。もう少し魔力を出す量を絞ろうか。氷を出すのではなく、身体の魔力をそのまま出す感じ。細く少しずつね」
「細く……」
「そう。出すだけじゃなく留める事もイメージして」
ギルベルトが補助してくれているおかげだろうか、昨日より魔力が扱いやすい気がする。
氷の塊として出現していた魔力が徐々に靄状に代わっていく。
「できた……」
思わず呟くと、水色の靄が離散してしまった。
「昨日まで氷柱を立てていたと思えば上出来だね。このまま続けて、長く留めれるようにしよう。最後も離散させるのではなく、身体に戻すんだ」




