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21話 訓練生生活(1)

 蒼が第3師団で訓練生として学び始めて2カ月程が経過した。

 剣の腕を磨くという行為は蒼の性に合っていたようで、傍から見れば日本に居た頃より生き生きとしているように見えるだろう。蒼自身も残してきた父や友人は気がかりだが、それ以外に関しては騎士団での生活が自分に合っているとは思っていた。


 騎士団に入って最も変わったところは手合わせの相手が増えたこと。

 屋敷で訓練をしていたころは、手合わせといったらテオバルトしか相手がいなかったが、ここでは他訓練生や第3師団の騎士――まぁ、訓練生に限っては訓練の形を成しえるのが二人しかいないが――と行う。

 その関係上、大剣使いばかりを相手にしていたので、それ以外の武器種が相手というのはそれだけで新鮮に感じた。また、第3師団では最低でも武器は2種扱えるようになる事が訓練生の目標として掲げられており、蒼も大太刀以外に薙刀のような武器を使っていることも新鮮さを感じる要因となっているのだろう。



 入団直後のハルトマンとの手合わせのせいか、蒼に近寄ってくるものはほとんどいなかったが、あの時に声を掛けてくれた二人とはかなり親しくなった。尤も、その二人に関しても他の訓練生から引かれているような奴らなのだが。


 訓練の相手はヴェンツェルかジークを相手にすることが多い。それは蒼が来る前から変わらず、先輩騎士がいる時は先輩騎士と、いないときは二人で手合わせをしていたらしく、とても歓迎された。そのおかげもあり、二人とはすぐ打ち解けることができた。


 最初こそ「自分にはアオイの相手は無理」と宣言していたジークだったが、実際手合わせをすればたしかに蒼よりは劣るものの、身体強化の魔法ばかりに頼っていたハルトマンよりは断然強い。これに強力な魔法が使えるというのだから、正直蒼より強いのではなかろうか。

 実際、蒼が大太刀ではなく薙刀で勝負を挑めば、勝率はぐっと下がった。動体視力が良いようで、蒼が薙刀を振り下ろすと、それを躱し懐へ入ってくる。慌てて蹴りを放ってもそれすら避けて直剣を当ててくる。慣れた大太刀なら、懐に入られても対応できるものも、慣れない武器だと応用が利かずに負けてしまう。


 実家は平民の農家で兄弟が多く裕福ではないため、出稼ぎ目的で騎士団に入団したらしい。給金は殆ど実家に送ってしまうらしく、簡素なものを身に付けている事が多い。本人曰く「自分にはこれがあるから」と目を指す。明度が高い薄紫の瞳。彼より魔力があるのは皇帝陛下位なのではと噂が流れる程、その力は大きい。普段から軽い言動をしているため、そういったところを全く感じさせないのだが。

 ただ、このように異様な強さを誇るジークでも、異世界出身のヴェンツェルには敵わないようなので、見た目ではわからないという意味でもヴェンツェルの方が恐ろしく感じる。



「アオイちゃん、この後暇? デートでもしない?」

 

「生憎、この後の予定は空いていないんだ。妹を迎えに行く約束をしているんでね」

 

「つれないなぁ」

 

「アオイ嬢を困らせることはやめなさい」


 蒼はにべもなく断る。冷たいようだが、黙っていれば毎日誘われるのだから、素っ気なくなるのも自然の摂理である。最初のうちは毎回付き合っていたのだが、ヴェンツェルから断らないと延々と続くと言われてから、断ることを覚えた。


「けっ。お前だって行きたかろうに」

 

「まあ、その通りではあるが」


 笑みを湛えながら蒼を見つめるヴェンツェル。訓練生として一緒にいるようになってから笑顔以外見たことがないので世辞であるとは思うが、最近は忙しくて断り続けていたのも事実。ヴェンツェルもくるのであればと蒼は返事をした。

 

「明日なら」

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