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20話 琥珀の初出勤

※琥珀視点でお送りします

「お待ちしておりましたよ、コハク様。これからどうぞよろしくお願いします」


 教会に着いた琥珀の事をアルトゥール様とフィリップさんが出迎えてくれました。

 ――聖女たるもの、上品に、そして丁寧で柔らかな物腰を常に意識する事――義母さまにこの3カ月みっちり教え込まれました。琥珀は不器用でその辺りのオンオフを切り替える事が難しいので、常に丁寧な所作を意識することで取り繕います。羽目を外すのは姉さまのお部屋のみです。

 

 ヴァイデンライヒ家で習ったことを思い出しながらお二人に向け、丁寧にカーテシーをします。


「出迎え頂き、ありがとうございます」


「ここからは彼に貴女の教育係兼補佐を担ってもらいます。既に知っているかと思いますが、フィリップ司祭です」


「再びお会いできて光栄です、コハク様。改めまして、フィリップ=リッケンと申します。これからよろしくお願い致します」


「またお会いできて嬉しいです。これからよろしくお願いいたします」


 教会でお話しした時に、もしかしたら教育係になるかもと伺っていましたが、改めて教育係にフィリップさんが選ばれて嬉しく思いました。



 アルトゥール様と別れた後、フィリップさんが帝都中央教会の中を一通り案内していただきました。

 女神様に祈りを捧げるための礼拝堂、教会を頼ってきた人に治療室や入院施設等……琥珀が使うであろう施設を何箇所巡った後、最後に1つの部屋に案内されました。


「ここは……」


「こちらは琥珀様専用のお部屋になります。聖女様には執務室と居住スペースが与えられます。琥珀様は通いなので居住スペースはあまり使用しないと思いますが、常に整えてありますのでいつでもご利用いただけます」


 琥珀は自分に与えられた部屋を順番に見せて貰いました。仕事用の執務室から始まり、奥にはリビング、寝室、お風呂等、生活に必要な部屋が用意されていました。それに加え、琥珀は入らせてもらえませんでしたが、使用人の控室や簡易厨房等もあるそうなので、琥珀が見た以上に広い空間なのでしょう。


「こんな立派なお部屋を頂けるのですか」


「聖女様は特別な存在なので当然です。基本的に聖女様は自身の執務室で仕事をしていただきます。よほどの事がない限りはこちらのお部屋で完結するように計らっています。とはいえ、コハク様は聖女様となったばかりなのですぐに仕事をするわけではなく、しばらくは私とお勉強していただきますね」


 正直な所、ここ3カ月ずっとお勉強漬けでぐったりなのですが、琥珀の力を必要とする人や姉さま、義父さま、義母さま、義兄さま……色んな人のために頑張りたいと思います。


「はい。琥珀もお役目を全うできるように頑張りますので、よろしくお願いします」


「頼もしいですね。これから一緒に頑張りましょう」



 一通りの案内が終り、執務室のテーブルに着きながら教会内の説明を受けていたらアッと今にお昼の時間になりました。琥珀の食事は奥のリビングに準備されるそうですが、余程位が高くない限りは基本的に食堂で食事を摂ることになるそうで、普段はフィリップさんも食堂で食事を取っているそうです。

 とはいえ、琥珀は1人で食事するのが寂しかったのでフィリップさんを昼食にお誘いしたところ、快く受けてもらえました。


「琥珀の我儘に付き合っていただいてありがとうございます。よろしければ、琥珀の補佐をしていただいている間は、こうして一緒に食事を取っていただけると嬉しいです」


「いえ、こちらこそお誘いいただきありがとうございます。今後も是非お願いします。ところで、琥珀様はヴァイデンライヒ家の養女となられたとか。家には慣れましたか」


「はい、大変良くしてもらってます。姉さまも一緒に引き取っていただけましたし、義父さまも、義母さまも、義兄さまも皆優しくしてくれます。義母さまは簡単な回復魔法を教えてくれました」


「そういえば夫人は回復魔法が使えるのでしたか。では、私が教えることはないかもしれませんね」


 フィリップさんはそう言って戯けてみせますが、琥珀が義母さまから習ったのは初歩の初歩だそうなので、教えることがないとはならないはずです。


「とんでもないです。義母さまが使えるのは初歩の初歩だとおっしゃっていたので、フィリップさんの出番がなくなることはありません」


「だといいのですが」


 そう言ってフィリップさんは笑ってみせます。



 最初は緊張していたものの、フィリップさんのおかげで大分緊張は解れたので感謝しかありません。

 昼食後は琥珀の習った魔法の進捗具合やおさらいしていたら、あっという間に時間が過ぎていました。

 こうして、琥珀の初出勤は終わり帰路につきました。

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