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18話 騎士団入団(2)

「ヴァイデンライヒ第1師団長に頼み込んで、入団試験をすっ飛ばして入ってきたんだって?コネで入団するのなら直接第2師団に行けばいいのに」


「ハルトマン、口を慎め」


 早速蒼に言い掛かりをつける者がいた。事前にユーリからこういうことがあるかもしれないと注意は受けていたのだが、大勢の前で真正面からの言い掛かりに蒼は驚いた。

 話は戻るが、そもそも女性騎士が訓練生として入団する事も稀らしい。多くの女性騎士は名の知れた貴族の子女で、入団試験も訓練も経ずに第2師団に推薦で入り、護衛に特化した訓練を個別で受ける事が多い。逆に実家の後ろ盾がない女性は蒼のように訓練生から入団し、このように言い掛かりや小馬鹿にされる事も少なくないそうだ。

 このせいで女性騎士が増えないのでは……という考えは間違っていないと蒼は思った。



 しかし、入団試験を受けてないという誤解があるとは思ってもみなかった。時季外れではあるし、テオバルトに受けなくても良いと言われていた。その旨を伝えられていると思っていたのだが。


「彼女はちゃんと入団試験を受けている。第5師団長以外の師団長の前で合格をもぎ取っているぞ」


「それが本当だとしても、あまり実力があるようには思えません。そんな細腕で訓練について来られるか」


「そんなに疑うのであれば、お前が直々に腕試しをするがいい。アオイ、ハルトマンと手合わせをしてくれ」


 蒼という当事者を除け者にして話が進められる。流れで蒼はハルトマンと手合わせをすることになってしまった。

 推測だが、第3師団長は結果がどうなるのかわかっていて、わざとハルトマンという青年を煽っているように感じた。今後、周りの訓練生以外に侮られない為にも、ここで腕を見せておけということだろう。


「わかりました」


 蒼は快く了承する。こちらを睨み付けてくるハルトマン臆すことなく、蒼は好戦的な笑みを浮かべていた。



――――――――――――――――――――


 蒼とハルトマンの周りを囲むように、他の訓練生と数名の第3師団の団員が円状に並ぶ。第3師団長は審判をするため、その円から内側に二、三歩前に出ていた。


「どちらかが戦意喪失、もしくは戦闘不能状態になった時点で試合は終了だ。武器は木製のもののみを使用するように」


 武器は持ち込みを許可されたので、蒼は愛用している木刀を使う。ハルトマンも同様にいつも使っているらしい直剣型の木剣を持ち込む。仕込み等が無いことは事前に第3師団の団員の手によって確認された。



 2人は距離を空け、お互いに武器を構える。それを確認した第3師団長が頷き、開始の合図を出す。


「始め」


 そう聞こえるや否や、ハルトマンは蒼へと尋常じゃないスピードで一気に詰めより、上段から切りかかる。


(身体強化の魔法か)


 蒼は軌道を冷静に読み木刀で受け止め、ハルトマンの木剣を押し返す。押し返すと同時に後ろに飛び、開始前と同じ位の距離の間合いを取った。


 一撃で仕留められると思っていたのか、ハルトマンは驚いた表情をしている。

 ハルトマンは魔法があまり得意ではなかったが、剣の腕は訓練生の中でもかなり上の方だろうと自負していた。厳密にいえば上には上がいるのだが、そいつらは化け物クラスなので数の内に入れていない。


「受けるので精いっぱいか?これならどうだ!」


 ハルトマンは先程よりも更に早いスピードで蒼に詰め寄る。そして蒼の目の前に来る直前で姿が消えた。どうやら、直前で更に加速しながら曲がることで姿を消したように見せ、相手の意表を突く作戦らしい。

 蒼はその場から動かずハルトマン切込みを最小限の動きで躱し、すれ違いざまに首後ろに木刀を叩きこむ。

 ハルトマンは突っ込んだ勢いのまま転がって行き、そのまま動かなくなった。


 しん、となった訓練場に居心地の悪さを感じながら、蒼は第3師団長を見つめる。思っていた以上にあっさりと終ってしまった試合に、あっけにとられていた第3師団長だったが、蒼と目が合うと慌てて口を開いた。


「勝者、アオイ」


 第3師団長が告げると、周りから歓声が上がる。どうやら蒼はちゃんと実力で騎士団に認められたようだ。

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