15話 親子での買い物(3)
宝飾店の出た後も店巡りは続く。洗髪料を取り扱う店、下着類を取り扱う店等の数店舗回った後、遅めの昼食兼デザートを食べるため、カフェに入る。
デザートを取り扱っているだけあり、昼食時を過ぎているにも関わらず、店内は繁盛していた。幸いにも席は空いていたようで、直ぐに半個室の席へと案内された。案内時に周りを見れば、カップルと思われる男女が大半を占めているが、女性1人や男性1人で訪れている人もいた。男女問わず人気の店のようだ。
注文時にユーリが大量注文しようとして母親に叱られる事件はあったものの、つつがなく終わる。
流石は人気店、食事はもちろんのこと、デザートも美味しかった。甘いものがあまり得意ではない蒼でもお代わりをするか悩むほどだった。
ユーリ以外は食事が終わり、お茶を飲んでいる。
結局ユーリは「滅多に来れないから……」と、追加注文してデザートを楽しんでいる。普段と表情こそ変わらないものの、量と勢いが凄い。あの華奢な身体の何処に、この大量のケーキ類が入っていくのだろうか。軽く2ホール位は食べているのではないだろうか。
クリスティアーネからするとユーリの食べっぷりはいつもの事のようで、全く気にする様子もない。
「一通りの買い物はこれでおしまいだけれど、他に欲しい物はないかしら?」
「琥珀は沢山素敵なものを買ってもらえて大満足です」
琥珀は気に入った物が買えたようで、満足そうな笑みを浮かべている。
「生活をする上で必要なものは揃ったかと思います。ここまでしていただき、ありがとうございます」
「ヴァイデンライヒ家に迎え入れるのだから、これくらいは当然よ」
2人分の生活用品だけならいざ知らず、当然の如く装飾品まで軽く買える環境に蒼は驚きを隠せない。
「2人には、本日買ったものに相応しいレディになってもらわないとね」
そう言われ、これから勉強漬けの日々になるのかと姉妹は身構えたが、そんな2人を見てクリスティアーネは慌てて言葉を続ける。
「そんなに身構える必要はないのよ。勿論、ヴァイデンライヒ家に相応しい教養を身に付ける事は、家のための事ではあります。ただそれだけではなく、貴女方のためでもあるのよ?2人きりで異世界から来た貴女方ですが、これからはヴァイデンライヒが後ろ盾になります。それは貴女方にとって大きな力にもなりますが、守られるに値する相応しい姿勢があってこそ。貴女方が平穏に過ごせるよう、私達もできる限りの事をします。だから、貴女方もそれに相応しくなれるよう頑張りなさい」
優しく諭すようにクリスティアーネは語った。
家のためではなく自分達のため、優しくはあるが甘くはない、そんな風に受け止められてとても好感が持てる。蒼はただ甘やかされるよりも俄然やる気が出た。
「はい、ありがとうございます。明日からの勉強も頑張らせていただきます」
「琥珀も頑張りますっ」
女神様に会い、異世界に来てから、目まぐるしく変わっていく状況に不安を覚えていたが、ようやく落ち着き、先が見えたような気がした。
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屋敷に帰り、それぞれの部屋に戻ろうとしたところで姉妹はユーリに声を掛けられた。
「アオイ、コハク」
「義兄さま、なんでしょう」
「これを……」
ユーリはそう言うと、蒼と琥珀にの手に小さな紙袋に包まれた何かを乗せてきた。
許可を取り袋を開けてみると普段使いできそうな髪飾りが入っていた。
蒼の袋には、雫型にカットされたラピスラズリのような石が特徴的な髪飾りが1つ入っていた。大き目の雫の隣には小ぶりの黄色い石が添えられており、良いアクセントになっている。
対して琥珀の方は花のモチーフで、花弁がサンゴのような透明度の低い赤い石で出来ており、中央にはシルバーの石が嵌っていた。蒼の物より1回り程小さいが同じものが2つ入っていた。琥珀の髪型が2つ結びだったからだろう。
どうやら宝飾店の店頭に並んでいた物を購入したらしい。
「これから大変だと思うが、頑張れ」
姉妹が包みを開けたのを確認すると、ユーリは直ぐに自分の部屋へと歩き出す。
「ありがとうございます、義兄上」
「義兄さま、ありがとうございます」
慌てて、離れていく背中に向かって、声を掛ける。
予期せぬプレゼントが嬉しい。あまり多くは語らないユーリに家族の一員として認められたような気がして、蒼は自然と笑みがこぼれた。




