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13話 親子での買い物(1)

 朝、目覚めて軽くストレッチをしているとハンナが部屋に入ってくる。本当は朝の支度くらい自分一人で済ませたい蒼だったが、それは許されないらしい。

 まあ、ここに用意されている服自体、背中にボタンがついていたりと一人で着ることが難しいものがほとんどなので、どちらにしろ手伝ってもらう必要はあったが。


 昨日に引き続き、可愛らしい服が並ぶ中、比較的に落ち着いた雰囲気の服を選び、ハンナに髪もセットしてもらう。形はいつも通りのポニーテールだが、蒼が自分で結ぶ時とは違い、編み込み等が入り手が込んでいる。



 どうやら蒼が1番起きるのが早かったようで、朝食へと向かった食堂にはまだ誰も来ていなかった。蒼の朝食が並んだくらいでテオバルトとクリスティアーネ夫妻、その直後に琥珀が合流する。



 朝食が済んだ後、食後のお茶頂く。同じく食後のお茶を飲んでいるテオバルトに蒼は話しかけられた。


「昨晩はゆっくりできたか」


「とてもゆっくりすることができました。ありがとうございます、義父上」


「急ごしらえだったんで心配していたが、ゆっくり出来たならよかった。私は仕事に出かけるが、今日はクリスティアーネと買い物に行くのだろう?ゆっくり楽しんでくるといい」


 テオバルトはそう言い残し、食堂を去っていった。

 入れ替わるように今度はユーリが入ってくる。朝には弱いのだろうか、目が半分ほどにしか開いてないように見える。

 言葉を発することなく、無言のまま席に着くと母親から叱責を食らっていた。


「ユーリ、朝が苦手なのはわかっているけれど、挨拶ぐらいしなさい」


「…………おは……ようご……」


 ユーリは挨拶の言葉を発しているようだったが、蒼の位置からはほとんど聞こえなかった。声を掛けるタイミングを完全に逃してしまったが、明日からはこちらから声を掛けようと蒼は決意した。



「義母さま、今日は買い物に行くのですよね」


「そうですよ。色々と買い足さないといけませんからね」


「琥珀は楽しみすぎて、昨日はなかなか寝付けませんでした。今日はよろしくお願いします」


「私も自分の娘とお買い物に行けるなんて嬉しい限りだわ」


 ――母娘で服を買いに行く――という事に、琥珀もクリスティアーネも憧れがあったようで会話が弾む。用意されていたこのお洋服がすごい良かった、ではこのようなものはどうかしら、と微笑ましい会話が続く。


 そんな会話を横目に見ながら、食後のお茶を飲み終わった蒼は一声かけてから、2人より先に席を後にした。



――――――――――――――――――――


「義兄上も一緒に行くのですか」


 馬車に乗り込む段階で見送りに来たのだと思っていたユーリが一緒に馬車に乗り込んできたので、蒼は思わず口に出してしまった。ユーリまで一緒に行くことになるとは思ってもいなかった。


 服飾には興味がなさそう……と失礼にも蒼は考えていたのだが、実は女性の服を選ぶのが趣味とかだろうか。


「母上が休みなら付き合えと」


 どうやら趣味でなく、クリスティアーネに来るように言われたらしい。


「ユーリは買い物帰りに寄ろうと思っているカフェのケーキに釣られたのよ」


「母上」


 ユーリがクリスティアーネを睨む。クリスティアーネの言葉は本当のようでユーリからは否定の言葉は出ない。

 後から聞いたところによると、ユーリは甘いものが好きだが、流石にカフェ等には男性1人で入るのは憚られるので、母親に付き合うという体でカフェに入るらしい。

 その話を聞いて、蒼は納得する。蒼はそこまで甘いものが好きではなかったが、幼馴染の男子がユーリと同じような事を言っており、よく琥珀も含め3人で甘いものを食べに行ったりした事を思い出した。


 ――彼は元気なのだろうか――と少し思いを馳せる。そのような事を考えているうちに馬車が走り出した。

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