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12話 新たな義兄

「息子のユーリだ。お前達の兄となるので仲良くしてやってくれ」


「……よろしく」


 テオバルトから紹介された、息子ユーリは確かに無愛想と言われるのも頷ける青年だった。紹介前後で始終無表情、寧ろ機嫌が悪いように見える。

 外見は母親であるクリスティアーネに良く似ており、線が細く、騎士というよりは文官と言われたほうがしっくりくる。髪はテオバルトとクリスティアーネの中間のような栗色で、瞳は薄めの黄色。



「ごめんなさいね。この子はいつもこのような感じなのよ。別に嫌っているわけではなくて、緊張で恥ずかしがってるだけだから気にしないで」


「母上」


 ユーリは顔を顰めて母親を見る。

 蒼から見るとしかめっ面をしたユーリはこちらに好意的ではないように感じるが、母親からすれば恥ずかしがっているだけらしい。



「これからよろしくお願いします、義兄(にい)さま」


義兄(にい)さま……」


 そんなユーリの表情を物ともせず、琥珀は笑顔で語りかける。それを聞いたユーリの眉間に益々シワがよった。気を悪くしたのではと蒼は血の気が引いたが、テオバルトもクリスティアーネもにこにこしているだけで何も言わない。

 少し冷静になってユーリをよくよく観察すれば、微かに頬を赤らめている。どうやら本当に恥ずかしがっているだけらしい。



 蒼は少し話しかけるのを躊躇っていたが、テオバルトの――息子と仲良くしてやってくれ――という言葉が頭を過り、意を決してユーリに話しかける。


「私も義兄上(あにうえ)とお呼びしてもよろしいでしょうか」


「……構わない。義理とはいえ、兄妹になるのだから遠慮しなくていい」


 蒼は申し出に了承して貰え、ほっとする。この勢いでもう少し色々話してみようと、更に言葉を重ねる。


「義兄上も義父上同様、騎士団に所属しているとお聞きしました。私も騎士団に所属したいと考えているので良ければ色々と教えて下さい」


「……俺で良ければ」


「仲良くなれそうでなによりだ!食事の準備も整ったようだし、冷めてしまう前に夕食を食べてしまおう」


 話に一区切り付いたところで、テオバルトの一言により夕食が開始された。



――――――――――――――――――――


 夕食後、ハンナに手伝われながら蒼は入浴を済ませた。ヴァイデンライヒ家の浴室は思ってたより広く、足を伸ばしてもまだまだ余裕があった。湯船にゆっくり浸かれたこともあり、大満足である。


 ナイトウエアに着替えて、夕食前に読んでいた本の続きを読んでいると扉がノックされた。


「ハンナです。アオイ様入っても宜しいでしょうか」


「はい、どうぞ」


 蒼が返事をすれば、「失礼します」と声を掛けてからハンナが部屋に入ってきた。手には大きめな本を抱えている。


「お休みのところお邪魔してしまい、申し訳ございません」


「まだ寝ていなかったから大丈夫」


「早速ですが、こちらをお渡ししたく」 


 そう言ってハンナは手に持っていた本を差し出してきた。


「これは?」


「こちらは騎士団について書かれた書物でございます。騎士団がどのようなものであるか、こちらを読めばある程度わかりますので、アオイ様のお役に立つかと思います」


 ハンナは騎士団について書かれた本を持ってきてくれたらしい。内容は騎士物語の短編集のようだ。



「わざわざありがとう」


 蒼が礼を言うと、ハンナは何か言いたげな顔をしていたが、「明日もございますので、お早めにおやすみなさいませ」と言い残し、直ぐに部屋から出ていった。



 蒼は疑問に思いながらハンナが置いていった本を手に取る。

 読み始めると、なかなかに面白い。魔獣退治の話が多めだが、騎士団がどのような事をしているのかよく分かる小説だった。実話も混ざっているようだが、誇張されている部分も多そうだ。ただ、その分ファンタジー小説のような面白さがあった。


 つい夢中になって読み進めてしまい、かなり夜更しをしてしまった蒼だった。

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