11話 部屋と侍女
琥珀が蒼の事を語る間にかなり時間は過ぎたものの、まだ夕食までは時間があるため、屋敷の中を軽く案内してもらえる事となった。
大まかな間取りとしては地下に当たる部分に使用人達が使う部屋、1階は食堂や客間等の人が集まるような部屋、2階に住人の私室というのがこの国の大体の貴族の家の作りとなるそうだ。ヴァイデンライヒ邸は姉妹にとって大きく感じたが帝都では小さめの部類らしい。
よく使用する事になるであろう複数あるお茶会室や食堂、浴室等を順番に見せてもらい、その後は各々に与えられる部屋へと案内される。
姉妹には1人1部屋与えられる事となった。毎晩のように蒼のベッドに潜り込んでいた琥珀は少し寂しそうにしているが仕方が無い。
そうしてルームツアーの最後に姉妹は自身の部屋と共に、自分付きとなる侍女を紹介された。
「これからお世話させて頂きます、エルナと申します」
「ハンナと申します」
琥珀にはエルナが、蒼にはハンナという瓜二つな顔をした侍女が付くことになった。彼女達は双子の姉妹で、エルナが姉らしい。年は蒼の2つ上で19歳。双子の両親もヴァイデンライヒ家に仕えているそうだ。後で着付け中にハンナが蒼に教えてくれた。
「夕食には着替えてから出るようにしてください。時間になったら呼びますのでそれまで部屋でゆっくりしているとよいでしょう」
それぞれの部屋に入る前にクリスティアーネにそう声を掛けられる。確かにいつまでも一張羅の制服姿というわけにもいかない。郷に入れば郷に従えということだろう。
蒼と琥珀はそれぞれの部屋へと入り支度をする。
紹介された侍女に手伝って貰い着替えをする訳だが、自分付きの侍女が付くということに何とも落ち着かない蒼である。更に今までに着た事もないような服が並べられ、困ってしまった。
この世界の雰囲気が中世ヨーロッパ風なので、豪奢なドレスを着せられるのかと身構えていたが、部屋に並んでいたのはドレスというよりは簡素なワンピース。『日本』の知識で例えれば、結婚式にお呼ばれした時に着るようなものだった。
それでも、今まで着てきた普段着とは程遠く、ピンクや淡い水色、黄色といった女の子らしい色合いの、可愛らしい形をしたワンピースばかりである。
これからは毎日これを着なければいけないのか……と遠い目をしたが蒼であったが、蒼がこれを着るのは今日、明日のみである。これらは義母であるクリスティアーネの個人的趣味であり、もっと地味な恰好の令嬢の方が多いと知るのは、明日の買い物時。ただ、琥珀に関してはクリスティアーネと趣味が一致し、似たようなもの選んで着るようになったが。
「アオイ様はどのようなお召し物をお好みでしょうか」
「すみません、ハンナさん。服飾の類いは疎いのでお任せしても良いでしょうか」
「アオイ様、侍女相手に謙る必要はありませんよ。私の事はハンナ、とお呼びください」
ハンナに任せたものの、嬉々としてレースとリボンがあしらわれた、用意された中で1番可愛らしいデザインのものを選ぼうとしていたので流石に止めさせてもらった。
結局、紺色のくるぶし近くまで長さがあるAラインのワンピースに決まる。上半身の部分にはレースが施され、華美では無いものの、上品な作りとなっている。並べられた服の中でも比較的に落ち着いたものに決まり、蒼はそっと息を吐く。
支度が終わった後も夕食まではまだ時間があったため、部屋に用意されていた本棚から本を取り出し、読んでみることにした。
ハンナ曰く、退屈しないようにクリスティアーネが用意してくれたらしい。問題なく背表紙に書かれた文字を読むことは出来たが、タイトルから察せられるに殆どの本が恋愛小説だと推測された。比較的甘ったるくなさそうなタイトルを選び、本棚と同じく部屋に設置されていたテーブルセットに着き読み始める。
蒼は普段あまり恋愛小説は読まない方ではあったが、クリスティアーネの趣味は良かったようで随分没頭して読んでしまっていたようだ。ハンナに「そろそろお時間です」と言われてから直ぐに、クリスティアーネが呼びに来た。
着替えた姉妹を見て嬉しそうに「よく似合っているわ」と褒めてくれる。琥珀は蒼とは正反対の可愛らしいピンクのドレスを選んでいる。ピンクブロンドの髪と相まって良く似合っていた。
今回の夕食には先程のお茶会に参加しなかったヴァイデンライヒ家の息子であるユーリも参加するらしい。両親共々から無愛想と言われる彼はどんな人物なのだろうか。




