9話 新しい家までの道のり
翌朝、身支度を整えた後、部屋に簡単な朝食を持ってきてもらい食事を済ませる。
食事を済ませお茶を飲み寛いでいると修道女に呼ばれたので、そのまま修道女に付いていく形で部屋を後にした。
そうして到着した教会の入口にはアルトゥールともう一人、男性が待っていた。
190cmはありそうな背の高さに体付きは逞しく、顔には傷があるなかなかの強面の男性。ただ、強面に似合わない、人の良さそうな笑顔を常にしていたので見た目の割には怖さは感じなかった。金糸で装飾が入った黒い騎士服を着ているので騎士なのだろう。腰にレイピアのような剣を差しているが、背中にも大きな大剣を背負っている。髪は少し癖のある茶髪をで、こちらの世界では良く見る色だ。瞳に関しては、こちらではあまり見たことがない茶色で少し緑が混じっている。
「こちらが異世界から来たお嬢様方か」
「はい。アオイ様とコハク様です。アオイ様、コハク様、こちらは帝国直属騎士団第1師団の師団長、テオバルト=ヴァイデンライヒ卿です」
「この度、お嬢様方の身元を引受けることになった、テオバルト=ヴァイデンライヒだ。お嬢様方はヴァウデンライヒ家に養女として受け入れるからそのつもりで居てくれ」
テオバルトはそう言ってニカッと笑う。笑顔が眩しい。
「アオイ=カミヒラです。これからよろしくお願いします」
「コハク=カミヒラです」
「あまり堅くならんでいいからな」
軽く挨拶を交わした後、用意されていた馬車へと向かった。馬車は教会のものよりは小さめで普通の馬が引いている。これが一般的な形なのだろう。
馬車へと乗り込む直前、アルトゥールから声をかけられる。
「コハク様には落ち着かれた頃を見計らって使いを出しますので、それまではごゆるりとお過ごし下さい。アオイ様に関してはテオバルト卿にお任せしているので指示を仰いで下さい」
「わかりました。ありがとうございます」
蒼と琥珀が馬車に乗り込む際には、テオバルトが手を貸してくれる。慣れないエスコートに気後れしながらも無事に乗り込むことができた。
そうして3人が乗り込んだ後、アルトゥールに見送られながら馬車は走り出した。
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「改めて、お前達を引き受けることになった、テオバルト=ヴァイデンライヒだ」
「先程お伝えした通り、アオイ=カミヒラです。こちらは妹の琥珀です。これからお世話になります」
「そんなに緊張しなくていいぞ。昨日、話を聞いた時は驚いたが、異世界人を引き取ることは名誉なことだからな。妻も賛成しているし、寧ろ楽しみにしているくらいだ」
先程より砕けた口調でテオバルトは話す。ヴァイデンライヒ家の家族構成は妻と息子一人で、義理とはいえ娘が出来ることを奥方が楽しみにしているそうだ。
「コハクは聖女様になるのだろう。妻はほんの少しだけだが回復魔法が使えるから習うといい。まあ、魔力量はコハクの足元には及ばんだろうが、魔力の使い方が丁寧でとても上手い」
「そうなんですか!是非ともお願いしたいです!」
琥珀は身近に魔法の扱い方を教えてくれる人ができ、嬉しそうに顔を綻ばせる。琥珀は人懐っこい性格なのですぐに打ち解けるだろう。
テオバルトは次に蒼を見ながら話し始める。
「アオイは妹を守るために騎士団に入団したいと聞いた。時間がある時は俺がビシバシ鍛えてやるから任せておけ」
「ありがとうございます」
騎士団長直々に指南してもらえると聞いた蒼は素直に喜んだ。
琥珀とは違い直ぐに全てを信じるわけにはいかないと考えるものの、この申し出はこれから強くなりたい蒼にはとても有難かった。
「詳しい話は屋敷についてからだ。妻も一緒の方が二度手間にならずに済むだろう?まあ、息子は夜にならないと帰ってこないから一緒に話は出来ないがな」
テオバルトの息子も騎士団に所属しており、今日は仕事で家を空けているそうだ。
テオバルト自身も休みではなかったが、教会からの要請ということもあり、急遽休みを取って姉妹を迎えに来てくれたらしい。
屋敷に着くまでの間、テオバルトが家族についての話を語ってくれたものの……。かなり妻を溺愛しているのだろう、話の殆どが奥方との惚気話だった。
奥方との惚気話以外に語られた事をかいつまむと、テオバルトはヴァイデンライヒ侯爵家の長男で嫡男だったが、侯爵は自分には向いていないと考え、早々に弟に家督を譲ることを宣言し家を出て騎士となったらしい。一般の騎士は爵位こそ持たないものの貴族に準ずる身分らしく、基本的に騎士は爵位を継げない次男や三男等が多く就く職業のようだが、テオバルトの場合、師団長にまで上り詰めているので、騎士爵を得ているそう。
そんな父を見て育った息子も騎士団に所属したという流れらしい。
「息子は余り愛想が良い方じゃ無いんだが、仲良くやってくれると助かる」
そんな話をしている間に目的地は近付いてきていたようで。
「ほら、あれがお前達の家だぞ」
窓の外に2階建ての立派な屋敷が見えてきた。




