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【短編】現代ドラマ短編シリーズ

オンライン義理チョコ

作者: 烏川 ハル

   

「ハッピー・バレンタイン!」

 という件名のメール。差出人は、同僚の徳田さんだった。

 笑顔がチャーミングな女の子だ。男に媚びるような雰囲気はないのだが、ついつい周りが手助けしたくなるタイプ。彼女自身それを心得ているとみえて、「これ、お願いします!」と気軽に頼み事を口にしていた。

 仕事もリモートが基本となった現在、もう長い間、徳田さんの笑顔も見ていないのだが……。

 少し懐かしさすら感じながら、メールを開く。

 すると、大きな画像が出てきた。

 美味しそうなチョコレートのイラストだ。


「精一杯の気持ちを込めて描きました。イラストなので食べられませんが、皆様ぜひ受け取ってください」


 この『皆様』という言葉で、改めてメールの受信アドレスを確認する。私個人宛ではなく、所属部署宛になっており、同僚全員が同じメールを受け取る形だった。

 当然だろう。密かな恋心を示す本命チョコではなく、普通に職場で配る義理チョコなのだ。しかし、いつもの義理チョコが既製品であることを思えば、「精一杯の気持ちを込めて描きました」という言葉には手作り感があり、それだけで例年の義理チョコよりワンランク上のように感じてしまう。

 今年のチョコは食べられない、という意味では、去年までの義理チョコより劣化しているはずなのに。

 そんなことを考えながらメールを見ていくと、まだ続きがあった。


「このような状況なのでイラストになってしまいましたが……。ホワイトデーまでには、騒動も収まっているかもしれません。そうでなくても、ちょうどそれくらいの時期に、出社して顔を合わせる機会があるかもしれません。その際のお返しは、ぜひ実物でお願いします!」


 おい。

 それは徳田さんが一方的に得するだけではないか……?

 でも彼女の頼み事だから断れないかもしれない。

 私は、そう思ってしまうのだった。




(「オンライン義理チョコ」完)

   

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― 新着の感想 ―
[良い点] 徳田さん、策士ですね。もはや何でもオンラインの時代をたくましく生きているという感じがします。
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