狂った価値観
ロイドが別れの決意を固め、荷物を纏めて居たその頃。
ユウジが泊っている部屋のベッドでは2人の男女が裸でお互いを抱き締め合いながら寝ていた。
呼吸は乱れ、汗を流している様子を見れば直前まで何をしていたのか……言うまでもない。
男女の内の1人は部屋を借りている本人であるユウジ。
そして、もう1人は。
「最高だったよ。やっぱり、僕達の相性はバッチリみたいだね――セリア」
1人になりたいとロイドに言われ、ユウジの所へと向かったセリアだった。
「うん、わたしも気持ち良かった……けど」
「なんだか元気ないね。もしかして、さっき言われた事で悩んでいるのかい?」
「だって! いきなりパーティを抜けるって言ったのよ!? そっ、それにロイドが、わたしと……別れたいだなんて……」
今日、ロイドに言われたことを思い出したのか、青ざめた顔でセリアはそう呟くと、涙を流してユウジに強く抱き付く。
「う、うぅ、やだ、ロイドと別れたくないよぉ……」
「セリア、少し落ち着いた方がいい。きっとロイド君も色々悩んでいて、ついあんな心にもないことを言ってしまったんだ。心配しなくても、明日になれば考え直してくれるよ」
「でも……」
「君は本気でロイド君が愛している恋人を置いて行くなんて……思うのかい? そんな事は絶対にあり得ないから、大丈夫さ」
「そ、そうかな? ……ううん、そうだよね! ロイドが本気でわたしにあんなこと言うはずないもん‼」
ユウジに慰められるとすぐに元気を取り戻し、セリアに笑顔が戻った。
「ははっ」
「ん? どうしたのユウジ?」
「いや、何でもないよ。やっぱりセリアは笑ってる姿が一番綺麗だなって思っただけさ」
「そんな煽てたって何も出ないよ……?」
「ええ……少しは僕に惚れてくれるんじゃないかと期待したのに」
「えへへ、残念でした。わたしはロイド一筋なんです♪ ユウジには色々感謝してるけど、ロイドの事は裏切れませんから」
「それは本当に、残念だな」
ベッドの中で身体を押し付け合いながら、2人はそんな会話をする。
「ねぇ、ユウジ」
「ん?」
「わたし、その……ユウジと今までこういうことを練習したおかげか、かなり上手くなったと思わない?」
「初めての頃に比べれば、見間違えるくらい上達したと思うよ」
「だからね! そろそろ、ロイドと……」
セリアが何を言いたいのか察したユウジは、途端に冷たい表情を彼女に向けた。
「いや、ダメだよ。マシにはなったけど、あくまで最初の頃に比べたらの話だからね? ロイド君を満足させるには、まだまだ経験不足だと思う」
「で、でも‼ 最近ロイド元気なさそうだし、それに――」
「はぁ。別にシたければすればいいんじゃないか? まあ、それでロイド君から失望されても僕は知らないけどね」
「え、ロイドから、失望される……? い、いやっ‼ そんなの……絶対にやだ。ロイドから嫌われたくない」
失望という単語を聞いたセリアは、再び泣きそうな表情となり、ユウジの身体に縋り付く。身体は震えており、ロイドに嫌われる事を心から怯えているようであった。
そんな彼女の頭を撫でながら、優しい声色でユウジは囁いた。
「だからさ、今まで通りに行こうよ。ロイド君がまだ抜けたいって明日も言うようなら僕も一緒に説得してあげるからさ」
「う、うん。わかった……」
「そんな顔しなくても、セリアが頑張れば必ずロイド君と結ばれるようになるさ。一緒に頑張っていこう」
「……そうだよね、わたしが頑張れば、いずれロイドと――んんっ!?」
ロイドの事を考え、うっとりとしていたセリアの唇にユウジはいきなりキスをした。少し驚いた様子を見せたセリアだったが、すぐにそれを受け入れ、お互いに舌を絡ませていく。
「んちゅっ、ちゅ……ユウジ、そんないきなり」
「ごめんね、セリアの健気な姿を見たら我慢できなくなってしまったんだ。さっきシたけど、もう一度いいかな?」
「……うん、いいよ。わたしも早く上手くなって、ロイドとしたいし」
「はは、こんなに一途な恋人がいてロイド君は幸せだね。羨ましいよ」
「そんなの当たり前だよ、だってわたしとロイドは――小さな頃からお互いを想い合ってたんだから」
「それじゃ、いつも通り僕をロイド君だと思って愛し合おうか……セリア」
2人の身体が重なり、再び不貞の時間が始まる。
「すき、好きなの♡ ロイド‼」
ロイドの事を想いながら、彼への愛を叫びながら、今日も彼女はユウジと交わう。すぐに大きなあえぎ声を上げるセリアの姿を見ながら、ユウジは薄く笑った。
それはいつかロイドが言ったような、おぞましすぎる光景であった。




