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嘘つき女

 魔獣討伐のクエストを無事にクリアしてから、しばらく経った頃。

 わたしは久しぶりにロイドと街でデートする約束をした。


 2人きりの甘い時間なんて本当に久しぶりで、心が高ぶってしまう。


「今日はなんだか嬉しそうだね。何か良い事でもあったのかい?」


 深夜に隠れながら通う内に、すっかりと慣れ親しんだベッドから起き上がり、優しくこちらを見つめてくるユウジにわたしは微笑んだ。


「実はね、来週ロイドとデートすることになったの!」

「……へぇ、それは良い事じゃないか。おめでとう」


 最近はユウジとの行為ばかりに夢中となり、ロイドと中々上手くコミュニケーションを取れない日々が続いていたので、今回のデートで再びラブラブな関係へと戻る良いチャンスだと思った。


 ユウジにはまだダメだと言われているので内緒にしているが、彼とデートで盛り上がり、もしもそういう雰囲気になったならば、この機会にわたしは喜んでロイドと結ばれたいと考えていた。


 今のわたしなら、絶対にロイドを満足させてあげられるという自信があったからだ。ユウジと沢山練習したおかげで、もう何も知らなかった頃のダメなわたしじゃない。


 なにより……大好きな人に対して余りこんな事は思いたくないけど、全くそういう経験のないロイドがユウジよりも快楽に強いとは思えなかったから。


 ユウジが褒めてくれるこの身体で、必ず彼を夢中にさせてみせる。

 そして大好きなロイドと共に、幸せへの一歩を踏み出すんだ。


 そんな気持ちが先走り、わたしは舞い上がっていた。


「それじゃあ――最高のデートをするために、しっかりと予行練習しないとね?」

「うん、だからね! 明日辺り、その、付き合ってくれると嬉しいなぁって……」

「もちろんだよ、セリアとロイド君のためならお安い御用さ」

「えへへ! ありがと、ユウジ」


 いつも通りユウジに相談した結果、デートの練習を彼とすることになった。

 明日は彼を本物の恋人のように想って、一緒に街で過ごす。


 一見すれば浮気のようにも見えるけど、これはあくまでロイドと幸せな時間を過ごす為の練習だ。だから、何も心配する必要なんてない。


 ――だって。

 わたしはただ、ロイドとの幸せのために必要な行動をしているだけなのだから。





 ***





 次の日、わたしはロイドに体調が悪いと嘘を付きクエストの同行を断った。

 心配するロイドの顔を見ると、嘘を付いたことに心がズキリと痛んだが、顔には出さずに必死に耐えた。


 ギルドから受けていたクエストは隣街まで依頼品を届けるだけの危険のないものだったので、ロイド1人でも安心して任せられるような仕事だった。

 それを見越して、ユウジは病気のわたしが心配だから傍に居たいと、ロイドへと伝えた。


「僕はセリアの事が心配だから、彼女の看病をしてるよ」

「えっ? いや、でも……それは」

「病気の彼女を1人残してはいけないだろう?」

「それは!! そうかもしれないけど、俺は!」

「今回の依頼は受けたロイド君本人が出向かなければ相手にも失礼になる。なによりも――前にセリアから看病して貰った礼を返したいんだ」


 言い争いをしている中でユウジが力強くそう言うと、ロイドは若干不安げな表情でわたし達を交互に見つめ悩んだ様子を見せた。


「っ……わかりました。それじゃ、セリアの事を宜しくお願いします」


 だが、やがて振り絞ったような悲痛な声を出しながら。

 どこか気落ちした様子で頷き、そのまま宿を出て行ってしまう。


「心配かけて、ごめんね」


 寂しそうな彼の後ろ姿に、わたしは小さく謝罪する事しかできなかった。


「ふぅ、これであいつが帰ってくるのに一晩は掛かるはずだ。ロイド君が街を出るのを確認したら、僕達も今日はデートを楽しもうよ」

「……うん」


 縋るような目で見つめてきたロイドの事が忘れられず。

 どことなく気分が浮かない中で。


 ユウジとのデートが始まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや周りの奴気付くやろ それこそ前のパーティーの危険を察知した女とか ほんでこいつ死んだら地獄は確定やわな 当然ながら万死の苦しみの後魂の消滅やな それよりその後のロイドはどうした
[一言] ちょうど二年になりました…。
[一言] もうすぐ二年か…。
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