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今日もフードは脱げない

今日もフードは脱げない

作者: 柿P

色々と拙いです。

ヒーロー視点『魔女のフードの中を見たい』投稿しました!↓↓↓

https://ncode.syosetu.com/n4091gk/










王都ハオプトシュタットのすぐ近くには、まるで境界線でも引いてあるかのように、一定の場所から鬱蒼とした森が広がっている。


昼でもどことなく薄暗く、気味の悪いその森を、人々は畏怖を込めて『魔の森』と呼んだ。













―――――魔の森には『魔女』が住んでいた

















件の魔女、ヴィルディーマはとても困っていた。

それはもう本当の本当に困っていた。


「森の魔女よ、どうか私の()になっていただけませんか?」


白金の髪は太陽の光さえ届かない森の中でもキラキラと輝き、その端正な顔立ちは、歴史に残るどんな画家でも描けないほどに美しく、騎士服の上からでも鍛えられているのがわかる。


そんな青年が、森の中の魔女の家で自分の手を取り、跪いているこの色々とおかしい状態に、物申したくはあるのだが……


ヴィーは、深く被ったニスデールの隙間から見える彼の瑠璃の瞳から、目が離せないでいた。




―――――――――――――――




ヴィルディーマは魔女である。

人どころか、哺乳類としてはありえない若葉色の髪は腰まで伸び、金色の瞳は灰暗い魔の森であっても獣のように妖しく輝く。

膝丈の黒いキャミソールワンピースの上に厚手のニスデールを羽織る彼女は、16歳(成人)にしてはやや小さく、雪のような白い肌に、触れれば折れそうなほど華奢な身体も相まって、どこか亡霊じみている。


彼女は自分の姿が大嫌いだった。

自分でも気味の悪い髪と瞳を隠すため、フードを念入りに深く被った。


なぜだか、彼には見せたくないと思った。


しかしながら、やはり意味がわからない。

彼女は亡霊じみた薄気味悪い()()なのだ。

決して、10人が見れば30人が振り返るような眉目秀麗な男に求婚されるような可愛らしい少女では無い。

暗い森の小さなログハウスで薬を売っているただ(?)の魔女だ。


「―――なぜ?」


どうにかこうにか、消えそうに掠れた小さな声で返す。

麗しい青年は少しだけ驚いたように目を開く。

質問をしておいて、こちらが話したら驚くなど、この騎士、実は失礼な人か?

しかも、口に手を当て、なにか考え事までしているようだった。


たが、まあ、分からなくない。魔女の言葉には力がある。『言霊』という言葉があるように、古の大魔女たちの言葉は真実を捻じ曲げ、偽りを真実(嘘を本当に)した。

ヴィーにそこまでの力はないとはいえ、魔女の古い掟から、嘘をつくことが出来なかった。


そして、変に追求されても嘘をつけないため、魔女は基本話さないのだ。


客とも定型文でしか会話をしなかったり、筆談をしたりとそれなりに面倒な生き方をしている。


つまり、何が言いたいのかといえば、そんな理由から、魔女の声を聞いたことのあるものは多くない。

魔女は話せないと思っているものまでいる始末なのだ。


――まあ、魔女という生き物は、その面倒臭ささえ楽しんでいるのだが



「なぜ?」


今度はしっかりと声を出すことが出来た。と、自分では思ったが、人と話すことの少ない。いや、月に数回しか声を出すとこのない彼女の声は、やはり少し掠れていた。


「――貴方が、好きだから。という理由ではダメでしょうか?」


ヴィーは今度こそ、本当に何を言っているのかわからなかった。

だって、私はこの男を知らない。こんなに美形なのだから、一度見れば嫌でも印象に残るだろう。

それとも、この男は見たことも会ったことも無い魔女を好きになったとでも言うのだろうか?


それこそ、魔法ではないか。


第一、好き?誰を?私を?そんなはずはない。なぜなら、私は――


「私は、魔女です」


声は、ほんの少しだけ震えていた。


「知っている」


「気味が、悪いでしょう?」


「いいや、むしろ、綺麗だと思う」


「――私は、あなたを知りません」


「俺はあなたを知っている」


「私は、あなたの事を()()存じ上げません」


()()の部分に少し圧をかけたからか、彼は少しだけ眉を寄せる。

だが、すぐに何かを見つけた子供のような顔で、それが世紀の大発見であるかのように言った。


「なら、知ってもらうことにしよう」



ヴィーは初めは何を言いたいのかさっぱりだったが、翌朝にはその意味を真に理解した。












彼はその日から毎日、ヴィーの元を訪れた




―――――――――――――――


初めの日、彼は可愛らしい花をひとつ持ってやってきた。

客だろうと扉を開けたヴィーの目に、青年は少し眩しすぎた。

だから、言葉が少しだけきつくても、許されるはずだ。


「冷やかしなら、お引取りを」


「冷やかしではないよ」


「いきなり、迷惑です」


「そうだな、すまない。では、花だけでも。……また、明日も来る」


「……そう、ですか」


彼は本当に花を渡すだけで帰っていった。

髪と瞳を隠すため、もう一度深くフードを被った。


明日は、フードが脱げない






次の日、彼は真っ赤な林檎をふたつ持ってやってきた。

細すぎる私を見て、なにか食べ物を、と思ったらしい。


「そういえば、自己紹介も何もしていなかったな。俺はシィヴァルリッター=クラージュという。歳は21で、騎士団の副隊長をしている」


「…はあ」


「あなたは?」


ヴィーは少し悩んだ。名前を教えることなんて、初めてだったから。でも、ほんの少しだけ、彼に教えるのも悪くはない気がした。


「……ヴィルディーマ。家名はありません。16歳、ただの魔女です」


ヴィーは林檎を齧りながら言った。

五つも年上だとは思っていなかったから、何故か彼が少し大人に見えた。


今日もフードは脱げない。





雨の日、彼は傘と小さなパンをを手に持ってやってきた。


「外、大雨ですよ」


「そうだな。……思ったより、濡れてしまった。これでは君の家に入れないな」


「……体が冷えるでしょう?風邪をひかれると困りますから、中へ」


「いいのか?というか、俺が風邪をひいたら、あなたは困るのか?」


「どうせ明日も来るのでしょう?うつされたら困ります」


「そうだな、明日も、来るからな」


「……そうですね」


彼が何だかすごく優しい顔で笑うから、それ以上顔を見ないことにした。


明日も、フードを脱がない。





雪の日、彼は暖かいスープを持ってやってきた。


「外は寒かったでしょうに、なぜこんな日まで来るんですか?」


「……あなたに、会いたいから」


「そんな理由で、風邪をひかれては困ります」


「……そうだな、俺が風邪をひくと、あなたは困るからな」


何だか少しだけ、頬が熱くなった気がしたから、いつにも増して彼に顔を見られたくなかった。


今日も、フードを脱がない。




春の日、夏の日、秋の日、冬の日


季節がめぐり、日々が過ぎて、一年が経つ頃には、ヴィーにとって彼は、もう知らない人ではなかった。




歳の割に、子供のようなところがあること


笑うと、少しだけ眉が下がること


白金の髪は、意外と柔らかいこと


剣の腕がよく、熊さえも倒してしまえること


手が、意外と固くて大きかったこと








ヴィーを、本当に好いてくれていること



彼のことを知る度に、彼のことを考えることが増えた

彼のことを知る度に、新しいことを知った


人がいる暖かさ


誰かととる食事の美味しさ


人を心配する気持ち


褒められた時の恥ずかしさ


―好きだと、伝えられた時の気持ち






―――人を好きになるということ


















一年がたった日、彼は干し肉を持ってやってきた。

何かを、決めたような顔をしていた。


「いらっしゃい」


「……なあ」


「なあに?」


「…名前で、呼んでも、いいだろうか」


ヴィーは、なんだかおかしくて、クスリと笑ってしまった。


「あら、騎士様は女性の名を呼ぶのに一年もかかるのが普通なのかしら?」



――シィヴァ?と、続けて言ってみた。


彼――シィヴァの顔がみるみるうちに赤くなっていくのが少し嬉しかった。

でも、彼が『ヴィー』と呟いたから、フードを深く被った。

何だか、自分の顔も、赤い気がしたから


今日だって、フードを脱げない。




更に年月がすぎた日、シィヴァは小さな箱を持ってやってきた。

瑠璃の瞳が真っ直ぐにヴィーを見ていた。


「ヴィー」


「なあに?シィヴァ」


「森の()()()魔女よ、どうか私の()になっていただけませんか?」


小さな箱の中には、綺麗なシルバーリングが入っていた。


「……なぜ?」


声は、ほんの少しだけ震えていた。


「――ヴィーが、好きだから。という理由ではダメでしょうか?」


「いいえ、最高の理由だわ。だって、私も、シィヴァが好きだもの」


また、新しいことをシィヴァに教えてもらった。

嬉しい時も、涙が出るのね。

そう言ったら、シィヴァは私を抱きしめた。

泣いた顔を、赤くなった顔を、見られたくなくて――


今日も、フードが脱げない




魔女には戸籍がない。だから、妻になったとは言っても、結婚をした訳ではなかった。


だからだろうか、一年がたった日


戦争が始まって、少したった日

























シィヴァが、戦場の最前線へ、独り身だからと送られることになった日


「ヴィー、愛してるよ」


「ええ、私もよ。シィヴァ」


彼を笑顔で送りたくて

涙を見せたくなくて

『行かないで』と、言いたくなくて

彼の瑠璃の瞳をみたら、決心が鈍りそうで


「あなたがいなくても、頑張れるから」


魔女の掟を破ってまで、嘘をついた


生まれて初めて、嘘をついた



今日も、フードが脱げない












―――――――――――――――



彼のことを考える度に、彼のことを想うことが増えた

彼のことを想う度に、新しいことを知った


あなた(シィヴァ)がいる暖かさ


あなた(シィヴァ)ととる食事の美味しさ


あなた(シィヴァ)を心配する気持ち


あなた(シィヴァ)褒められた時の恥ずかしさ


あなた(シィヴァ)に好きだと、伝えられた時の気持ち

―好きだと、伝える時の気持ち






―――人を好きになるということ

―――人に愛されるということ



























――――|最愛(シィヴァ)を失うということ






―――――――――――――――


戦争が続いているというのに、シィヴァは帰ってきた。

彼は痩せ、酷く、弱っていた。

服も体もボロボロで、ヴィーの大好きな白金の髪もくすんでいるのに、瑠璃の瞳だけ輝いていた。

なぜだか、それが、彼を表しているように見えてしまった。


彼は、ひと月もかけてゆっくりと体を蝕む、病のような毒を塗った矢が、刺さったそうだ。


彼が最前線から帰ってくるために、既に三週間が経っていた


残された時間は、そう長くはなかった











シィヴァが帰ってきた日、私は大きな花を持って彼の元へ行った。


「具合はどう?」


「不思議なんだ、全く、苦しくないんだ。ヴィーの薬のおかげかな?」


「シィヴァが辛くないのなら、よかったわ」


「……辛いよ。君を、残すのが。ヴィーは、寂しがり屋な女の子だから」


「何を言ってるの?私は…魔女よ」


「あはは。そうだね。では素敵な魔女よ。また、私に花をくれ」


「ええ、喜んで」


魔女とは言っても、古の大魔女ですら万能ではない。

毒の実物があるならまだしも、ヴィーには、シィヴァを救う薬は作れなかった。

彼女に作れたのは、彼の痛みを無くす薬だけだった。


ただ、強がるためだけに笑った顔を、シィヴァに見られたくなくて、フードを深く被った。


今日はフードを脱いではいけない。






シィヴァが帰ってきた次の日、ヴィーは兎のような形に切った真っ赤な林檎を持って彼の元へ行った。


「驚いた、ヴィーは意外と器用なんだな」


「一人で森で暮らしていたのよ?ナイフくらい朝飯前だわ」


「それもそうだな。なら、スープも作れるのか?」


「あら、シチューだって作れるわよ?明日、作りましょうか?」


「それはいい考えだね。シチューは好物なんだ」


「本当?私も、シチューは大好きなの」


「一緒だな。でも、俺は林檎も好きなんだ」


「なら、また剥いてあげるわ」


シィヴァが優しく笑った。瑠璃の瞳が細くなる。

軽口を叩いたからか、今日はヴィーも少しだけ笑えた。

本当は料理なんて苦手で、夜通し飾り切りの練習をしたことがバレたくなくて、隈を隠すようにフードを深く被った。


今日も、フードを脱いではいけない。






シィヴァに林檎を剥いた次の日、ヴィーは温かいシチューを持って彼の元へ行った。

シチューは彼女が唯一作れる料理だった。


「美味しかった。本当に作れるんだな」


「疑ってたの?」


「いや?本当に美味しかったから、また食べたいな」


「なら、また作るわ」


「…………ヴィーの、笑顔が見てみたいなあ」


「…私。多くはないけれど、笑っているわ」


「でも、俺は見たことがないよ。いつも、隠れているから。……きっと、素敵な笑顔なんだろうな」


シィヴァと会うまでいつも無表情だったから、笑顔がひきつっているかもしれない。

私が返事をしないから、シィヴァがごめん、と呟いた。

シィヴァは、悪くないのに


今日は、フードを脱げなかった。






シィヴァにシチューを持っていった次の日、ヴィーは大きなふわふわのパンを持って彼の元へ行った。

彼はまた食べたいと言った。

シィヴァはヴィーの涙が見たいと言った。いつも、我慢して泣いてくれないからと。


今泣いたら、きっと、止められなくて彼を困らせてしまう。でも、顔は酷く歪んで、鼻の奥がツンとした。


今日も、フードを脱げなかった






私の涙を見たいと言った次の日、ヴィーは柔らかい肉を持って彼の元へ行った。

彼はまた食べたいと言った。

シィヴァはヴィーの瞳を見たいと言った。ヴィーが何を見ているのか気になるからと。


いつだって、シィヴァのことしか見ていないと言ったら、彼は酷く幸せそうに笑った。獣のような金色の瞳を見せる勇気が、どうしても出なかった。


今日だって、フードを脱げなかった






私の瞳を見たいと言った次の日、ヴィーは細い銀のチェーンを持って彼の元へ行った。

あのシルバーリングは、今の細くなった彼の指には少し大きかったから。

シィヴァはヴィーの髪が見たいと言った。ヴィーは俺の髪を触るのが好きだから、ヴィーの髪にも触れてみたいと。


今日は櫛を入れていないからと言ったら、彼は残念そうにしていた。人ではない髪色を見た彼が離れていくのは、どうしても耐えられなかった。




………でも



今日もまだ、フードを脱げない





―――――――――――――――



朝から髪を丁寧に梳かした。


目付きが恐ろしくないか確かめた。


鏡の前で笑顔の練習をした。


林檎を兎のような形に切った。


シチューを温めた。


柔らかい肉を持った。


特別にふわふわのパンを用意した。


泣いてもいいようにハンカチを準備した。
















今日は、フードを脱いだ











シィヴァが毒を受けてひと月が経つ日、ヴィーは彼が望んだものを全て持って彼の元へ行った。


「……ヴィー?」


酷く驚いた瞳を、見つめ返せなかった。

心の底から愛していたから、拒絶されたくなかった。

魔女の見た目の気味の悪さを、ヴィーは誰よりも知っていた。

だから、ずっと隠していた。フードを深く被って。

でも、それでも、『恋』を『愛』を知ってしまったから。

(シィヴァ)に、本当の自分を知って欲しかったから。

見て、欲しかったから。畏怖でも、嫌悪でもいいから、(ヴィー)を覚えて欲しかったから。


「…ごめんなさい。でも、私」


この見た目も、愛して欲しいと、望んでしまったから。





唇に柔らかい感覚があった。それは、生まれて初めての感覚で――

驚いて前を見れば、シィヴァが抱きしめていると気づいた。


――キスを、されたんだと気づいた。


「シィヴァ…?私のこと、気持ち悪くないの?」


「どうして?とても綺麗なのに」


「だって、髪の色は人のそれではないし、瞳も獣みたいなのよ?」


「髪の色も瞳の色も知っていた。それも含めて、俺はヴィーが本当に綺麗だと思った」


ヴィーはシィヴァに会ってから驚くことが多かったが、その中でもこの発言は群を抜いていた。


「知って……いたの?」


「初めて話した時言っただろ?俺はあなたを知っていると。……あの日のひと月前、街でヴィーを見たんだ。強い風が吹いて、フードが脱げて舞う髪も、光を受け輝く瞳も綺麗だった」


その出来事には覚えがあった。いつなら、風が吹いても髪が見える前にすぐ抑えていたのに、その日はとても綺麗な色を見て、間に合わなかったのだ。



――瑠璃の、色を


「……あれは、シィヴァ、だったの?」


「どれかは分からないが、俺が初めてヴィーを見たのはその時だよ」


「なあん、だ」


なら何も悩む必要も、心配する必要もなかったのだ。

力が抜けてポスンと、シィヴァの胸に体を預けた。


「あの時見た髪も瞳もとても綺麗だったが、笑わない美しい少女に、あの時恋に落ちたんだ」


「どうして、家が?」


「恥ずかしい話、一目惚れをしたから声を、掛けたくて……少しだけついて行ってしまったんだ。そしたら、魔の森に入っていくから。ニスデールを着て魔の森に入るのは、魔女くらいだろ」


「ふふふ、そうかもしれないわね」


「だろ?」


つまり、シィヴァは私の髪や瞳を見ても、魔女だと知っても、妻に望んでくれたのだ。

それはなんだか、とても。とても嬉しくて


「……ねえ、シィヴァ?」


「なんだ、ヴィー」


「私、世界で一番、あなたが好きみたい。だから、また私を見つけて、好きになってね」


「俺も世界一愛してるよ。ヴィーも、俺を見つけて愛してくれ」


そういって、シィヴァはまた唇を重ねた。


ヴィーの持ってきた食べ物を二人で食べて、互いのシルバーリングを交換して。

沢山話して、笑って、泣いて。




もう一度、愛してるを伝えて。




空が赤らんで、日が落ち始めた頃。


『酷く、眠い』と彼は言った。

二人で抱き合って布団に入った。



私は、彼の瑠璃を見つめ

彼は、私の若葉と金を見つめ


互いの温もりで眠った。











結局、私はシィヴァを救うことは出来なかった。

完成するかも怪しい薬を作るより、彼のそばにいたいと思った。


一緒に寝た暖かかった彼は、それからもう目覚めなかった。

















恋人や夫婦と言うには、酷く短かったそれを、悲しいとは思わない。

彼が教えてくれたものは数多く、私一人では手に入れられなかった。


他の誰でもない、彼だから、私に与えられたもの。


昨日も、今日も、明日も、あなたを想って生きようと思う。



いつだって、目を閉じればあの瑠璃を思い出す。

胸に手を当てれば、あのシルバーリングがある。


いつか、また、会えたなら。

互いの色で、見つけられるから。







たくさんの幸せを胸に、私は、今日も、フードを脱いだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても素敵な物語でした。 ヒーロー視点も読ませていただきましたが、コミカルな印象になるのですね。ヒロイン視点との違いが面白かったです。 [一言] 新しいお話が読めるのを楽しみにしています!…
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