episode7
目が覚めて、背中を触る。
よし、傷はない。
いつもあいつら私の首ばっかり狙うから、首切りワンパターンかと思ったけど背中ぶっ刺しもあるらしい。
突然の事って正直びっくりするし、やめてほしい。
だいたい遠目から見ただけでセイラに声かけてすらないのに。
はあ、とため息をついて、私は変わらない毎日を過ごす。
カレンダーは『セイラの誕生日の翌日』を表している。
前回の3ヶ月で理解した。
私は貴族になれないのだ。
平民の血の私は、魔法が使えないから。
貴族学院なんて、壊れちゃえばいいのに。
「うー…どうしようかしら…」
ベッドでゴロゴロしながら、本を読む。
気晴らしにたまに枕を蹴り飛ばす。
もう、魔法書なんか読まない。
平民の私が、いくら読んでも無意味なのだ。
無駄に色々覚えてばかみたいじゃない。
だからもう魔法書は読まない。
暇つぶしになりそうな物語を読む。
手に取った本は、勇者と魔王が戦う話で、娯楽小説らしくわかりやすく王道的で、面白かった。
「そうだわ!」
やっと気がついた。
ああ、私ってほんとに天才。
可愛いだけじゃなく、頭も良いなんて。
「まず私が魔王になって、貴族学院を壊せばいいのよ!」
そうだ。それがいい。
貴族学院が無くなれば、セイラの乙女ゲームイベントもきっと潰れる。私が入れない貴族学院なんて壊れるべきだ、
セイラなんかに、ヒロインの立場は似合わない。ヒロインがふさわしいのは、この私。
だって、私はセイラより、だれより、可愛いんだから。
私はさっそく、魔物の森へと向かった。
魔王というのは、やっぱりたくさんの魔物を従えてこそだろう。
魔物のいる森は、孤児院から20分ほど歩いた場所にある。
立ち入り禁止なので入ったこともないし、魔物を見たこともないが大丈夫だろう。
私は魔物の森に辿り着き、足を踏み入れた。
とりあえず進めばいい気がする。
そしてたくさんの魔物を手下にして貴族学院を壊すのだ。
明るい未来が見えてきた。
楽しくて、つい鼻歌が出てしまう。
「あはっ!たの…」
突然。
舌が溶けて、声が出ない。
目の前がなにも見えない。
燃えるように熱い。
私は魔物の酸にやられて、死んだ。