episode3
目が覚める。
見慣れた孤児院の自室のベッドだ。
無意識に首を触ってしまう。
「繋がってる…」
首を切られて死んだと思ったけど、よくわからない。
よくわからない事を考えたって時間の無駄だ。
私はベッドから起き上がった。
ドアが開きセイラが部屋に入ってくる。
私はふんと顔を背けた。
「ふふっ、おはようエウ。今日はご機嫌斜め?お部屋で寝てる?」
セイラは目線を合わせるように屈んできた。
何が楽しいのかニコニコしてる。
嫌な女。
「だいっきらいって言ったでしょ!ばか!」
そっぽを向いたまま言うが、全く気にされた様子がない。
セイラはいつものように「井戸に水汲みにいってくるね」と部屋から出て行ってしまった。
私は眠たかったので、もう一度眠りについた。
「ふぁぁ」
あれから何時間経っただろうか。
何やら孤児院がバタバタしている。
窓の外を見たらもう夕方だ。
「…」
窓の外から、昨日見たはずの男爵の馬車が見えた。
セイラを迎えに来たんだ。
だからバタバタしてるんだ。
どうしよう。
このままじゃまたセイラがヒロインになってしまう。
私がヒロインになれない。
私はこんなに可愛いのに。
セイラより、私の方が可愛いのに。
私は部屋にある鏡を床に叩きつけて割った。
割れた鏡の破片を握りしめる。
手から血が垂れて痛いが、今はそれどころじゃない。
ガチャリとドアが開けられ、セイラが入って来て。
「しんじゃえ!!!!!!!」
私は手にした鏡の破片をセイラへ振り上げた。
セイラは呆然とした顔をしている。
だいきらい。だいっきらい!!
セイラが死ねばいいの。
セイラが死んで私がヒロインになればいいの。
ザシュッ。
ぽとり。
鏡を持った、私の腕が床に落ちる。
「え…あ…なんで…」
腕がない。私の右腕がない。
「貴様!!セイラお嬢様になにをしようとした!!」
「なんたる無礼な!!」
「孤児め!!」
兵士達におさえつけられる。
切られた腕から、血が止まらない。
どくどく、赤い血が流れてく。
セイラが「やめてください!!!私の大事な友人になにをするんですか!!!!!」と兵士達に言ってる声が聞こえる。
「セイラなんか…」
セイラなんか友人じゃない。
私の言葉は最後まで言い終わることがなく、また、首が身体から切り落とされる熱い痛みに意識を失った。