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episode2



「なんでセイラばっかり…私の方が可愛いのに…」


部屋でベッドにごろんと寝転がっていると、窓の外から馬車が近づいてくる音がした。

男爵だ。セイラを迎えに来たんだろう。


私は枕を思い切りベッドに叩きつけた。

何もすっきりしなかった。


やがて夕方になった頃、孤児院内がバタバタし始めて、セイラが部屋に入ってきた。神父様と男爵の話し合いが終わり、セイラが正式に貴族の娘として引き取られることが決まったはずだ。


「あ!あのね、エウ。いきなり貴族の人が来て、えっと、あのね私のお父さんなの!」


うるさい。知ってる。

私は全ルート回収済みよ。


「だから荷物を急いでまとめなくちゃいけなくて」


ならさっさとしなさいよ、ばか。


「どうしよう、これじゃあわけわからないよね?あのね、私今日から貴族の家で暮らさなくちゃいけないみたいなの…どうしよう…まだ自分でもパニックだわ…」


私は孤児なのに、セイラはヒロインだから貴族。


「私、エウのこと妹みたいに大事に思ってる!私が貴族になっても、また会いにくるから、だから、だから、忘れないでね…!」


涙ぐみながらセイラが私の手を取って、抱きついてくる。


うっとうしい女。


私がどれだけヒロインになりたかったか知らないくせに。

私が欲してやまない立場を初めから持ってるくせに。


「セイラなんか…セイラなんかだいっきらい!ばかぁ!」


パンっ。

私の手がセイラの頬に当たる。

思いの外、大きい音がした。


そして。


「セイラお嬢様!何事ですか!?」

「頬が!頬が腫れております!まさかこの孤児の娘が!?」

「セイラお嬢様になんという無礼な!!」


鎧を見に纏った大人の男性達が部屋に入ってきた。

彼らは剣先を私に向ける。

ああ、男爵家の護衛私兵か。


セイラがハッとしたように焦ったように立ち上がる。


「あの!違います!この子は私の大事な友人です!!」


「あははっ!!!ばぁか!!!私はね、セイラなんかのこと一度も友人だなんて思ったことないわ!!」


笑いが込み上げてくる。


兵士達ががやがや何か騒いでる。


セイラが必死に「剣を収めてください」と言ってる。


ばかじゃないの。だいっきらい。


「あはっ!セイラを叩いたから、私の手が痛んじゃったわ。ほら、…ねぇ、謝んなさいよ!」


私がそう言って立ち上がった時。


首に急な熱さを感じた。


なんだろうと思う間もなく、頭が地面に叩きつけられる。


ころころ、と転がる。


セイラの叫び声が耳に響く。


最後にみた景色は、首から上が無い私の身体だった。



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