1話
本編です。
「なぁ、青山。なぜ、私はお前を職員室に呼び出したのか、分かるよな??」
「分かりません!!」
俺、青山 遊はビシッと敬礼をして俺を呼び出した担任の先生に言葉を出す。それに対して、先生は深い溜息を吐く。おいおい、幸せが逃げるぞ。
「これ……分かるな??」
先生は俺に1枚のプリントを差し出す。
「進路希望の紙ですね」
「分かってるじゃないか」
え?分かるよ。だって、それ先生が昨日、俺達に配ってたやつじゃん。
「それが何か??」
「お前………それ本気で言ってるのか??」
「はい」
どうして、そんなに呆れたような表情で俺の事を見るのだろうか。俺、何かした??先生の考えてることが分からねぇぜ。
「なぁ、青山。先生からのお願いだ。ちゃんと答えてくれ。お前、『これ』に関して本気で言っているのか??」
『これ』??………あぁ、これのことね。
「はい、本気ですけど………。これのどこがいけないのでしょうか??」
ポカンとしている俺を見て、遂に先生はブチ切れてしまった。
「『ヒーローになるので、大学には行きません』って書く馬鹿がどこにおるんじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
職員室にも関わらず、先生は俺に向かって叫ぶ。おいおい、先生。流石に場所を考えろよ。今年新任して、職員室から出ようとしている山田先生がビクッと震えてるだろ。あと、唾。顔についてるから
「お前さ、もう高校3年生だろ。それなのに未だにヒーローになりたいって馬鹿か!!」
む、馬鹿とはなんだ。馬鹿とは。人の夢を馬鹿にするんじゃないよ。こいつ、本当に教師か??ドリームデストロイヤーじゃないか。
「いいか、青山。現実を見ろ。警察官とか消防士、自衛官とかならまだ分かるが、ヒーローなんていう職業なんてこの世にはない。ショッカーや怪人なんていなんだよ。分かるだろ。」
先生の言葉に今度は俺が溜息を吐く。これだから素人は…………。
「別に怪人がいなくても、ヒーローはやることが沢山ありますよ。怪人を倒す=ヒーローの仕事という訳ではありません。」
「それじゃあ、お前はどうしてヒーローになりたいんだ??」
俺がヒーローになりたい理由??そんなの決まってるじゃないか。
俺はキリッとした表情で言葉を出した。
「みんなの笑顔を守るためです。」
「それだったら、ヒーローじゃなくても他の職業でいいじゃないか!!どうして、そこまでヒーローに拘る!!」
本当に分かってねぇな、こいつ。本当に男か??キン〇マちゃんとついてるよな??過去に去勢とかされてないだろうか。
「俺がヒーローに憧れてるからですよ。」
俺はそう言った後、これ以上は時間の無駄だと思い席を立ち上がる。念の為、「これは書き直しますね」と一言かけてから職員室へと出た。まぁ、どっか適当の大学でも書いておけばいいだろう。
そう思いたがや廊下を歩いていると、ヒソヒソと声が聞こえてきた。
『出た。未だにヒーローになりたがってる青山よ。』
『もう高校生なのにヒーローとかガキかよ』
『顔は凄くイケメンなのに………残念ね』
『現実見えてるのかしら』
『正直言ってキモイ。』
『噂だと、ヒーローになるべく身体を鍛えてるらしいわよ』
『うわぁ………痛いわぁ。』
『死ねばいいのに。』
『ヒーローになんて、なれる訳ないのに』
なんて、言葉を四方八方から聞こえてくるが俺は気にせずに歩き続けた。
周りの言葉なんて、戯言に過ぎない。言いたいやつは言わせておけば良い。
そもそも、ヒーローになりたいっていう夢をどうして馬鹿にする??いい夢ではないか。みんなの笑顔を守るんだぞ??素敵やん??
あぁ………、1度でもいいから「変身!!」って言って本当に変身してみてぇな。
変身ポーズとか、ちゃんと考えてあるんだぜ。毎日、1時間ぐらい鏡の前で練習しているからな!!
「ん??」
教室に、戻っている途中で多くの書類を抱えて辛そうにヨロヨロと歩いている1人の女性。あれは………新任の山田先生だ。
俺はすぐに山田先生の方へと駆けつけた。
「山田先生。荷物、半分持ちますよ」
「だ、大丈夫です〜。」
山田先生は俺に話しかけられて少しだけ驚く。そして、遠慮したのか俺の申し出を断った。………ったく、そんな辛そうな顔で言われても説得力ねぇわ
「ほい。」
俺は強引にも先生の書類の半分………いや、3分の2ぐらいを手にして抱える。
「青山くん!?」
お。俺の名前を覚えててくれていたのか。嬉しいな………って言っても、さっきまで職業室で怒られてたしな。覚えていて当然か。
「どうせ、2年生のクラスまでですよね。通り道ですし、持っていきますよ。」
「あ、ありがとうね。」
あぁ〜、これだよ。これ。この笑顔が見れるから俺は人助けはやめられない。
「いえいえ、ヒーローを目指している者として当然のことですから」
俺がドヤ顔しながらそう言うと、山田先生はキョトンとしたら表情へと変わり俺に話しかけた。
「職員室でも聞いたけど青山くんって、本当にヒーローになりたいんだ。スーツアクターとかじゃなくて??」
「えぇ。俺は本物のヒーローになりたいんです。昔からの夢ですね」
「そうなんだ。」
こんな感じで、他愛のない話を続けていると2年生のクラスへと到着した。すると、2年生の子達………恐らく山田先生が担当する教科の委員さんだろうか。2人ほど近寄って、俺たちから書類を受け取った。
「ありがとうね、青山くん。」
「いえいえ。それでは。」
俺はビシッと敬礼をしたあと、教室へと戻ろうとした所で山田先生がコソッと俺のそばで一言囁いた。
「私、まだここに来て分からないことが沢山あるからまた機会があったら教えて下さいね。ヒーローさん。」
この言葉を聞いて、俺の中の山田先生に対しての好感度がグンッッッッッッ!!!と上がった。危ない危ない。あともう少しで告白しそうになったぜ。
☆☆☆☆☆
授業が終わったので帰ろうと思っていた俺だったが、何故か体育館の裏にいます。
なぜかというと…………
「青山ァァ!!ヒーローとか言って俺の邪魔をしたてめぇだけは許さねぇ!」
数日前に、偶然助けた1年生の女の子からカツアゲしようとしていた不良さんが復讐とかいって俺をここに連れてきていた。しかも、10人ぐらいの仲間を引連れて。
「勘弁してくれよ。俺、大切な用事があるんだけど………」
新しい仮面ライダーのベルトを買いに行くっていう用事がな。
「うるせぇ!!テメェら、やっちまえ」
「「「「おう!!!」」」」
リーダーらしき不良が手下10人に声をかけると、手下達は俺に向かって殴りかかろうとした。中にはバットや木刀、サバイバルナイフを持っている奴がいた。……………って、マジか。リアルに俺の事を殺しにかかってきてるじゃないか。
「まぁ、死なないけどな」
とりあえず、武器を持ってない手下達は放っておこう。武器を持ってるやつから相手になってやる。
「おらぁ!!」
バットを持った手下1が俺に向かってバットを振り下ろすが、俺はそれを回避し、その際手下1の鳩尾に強く蹴りを入れる。
当然、手下1はバットを手から離して蹲った。
続いて、木刀を勢いよく振り下ろす手下2の攻撃を俺は白刃取りで受け止める。それを見て、相手が驚いているうちに奴の顔面に目掛けて頭突きをぶちかます。おぉ、痛てぇ。
最後にサバイバルナイフを突き刺してくるこのサイコパスこと手下3は奴の攻撃を紙一重で躱して隙を見て頭に目がけて回し蹴りをした。すると、手下3は見事にノックダウン。気持ちが良い。
残りの手下達はあれやこれらを使って優しく逝かせてあげた。ヒーロー目指す者として、私情だけて相手に傷を負わせてはいけない。よしよし、いいぞ俺。
「たった1人でここまでやるだと!?」
まぁ、日々ヒーローとして戦えれるように鍛えてるからな。なんなら、クマ相手でも勝てる……………と思う。それはないか。
「さて、残りはアンタだけだ。どうする??」
俺の言葉で、残った不良はバツの悪そうな顔をするがすぐに雄叫びを上げて俺の方に殴りかかろうとした。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は不良の攻撃を難なく躱したあと、頬に目がけて思っいき拳を入れた。不良は白目を向いて動くことは無かった。
「ヒーローをなめんな。」
俺はそう言ったあと、この場をあとにした。
☆☆☆☆☆
「ありがとうございました〜」
なんとか、仮面ライダーのベルトを購入し終えた俺は満足した顔で帰宅していた。早く家に帰って遊びてぇ
けど、ベルトを持って歩いていると通行人から怪訝な表情をされる。
まるで、仮面ライダーのベルトを持っている俺を異形の存在で見るかのように………。
どうして、そんな顔すんだよ。別にいいだろ、高校生がこういう幼稚玩具を買ったって。人の趣味を馬鹿にすんな。
俺はこんな大人になりたくはない。と改めて強く決意していると
「おいおい………マジか」
目の前の交差点で、歩いている親子に目がけて猛スピードで走る1台の車。赤信号だと言うのに、スピードは一向に減らない。むしろ、更に加速している。運転手の奴、何を考えてるんだ!?
「とにかく………助けねぇと!!」
俺は荷物を急いで放り投げ、親子の方に駆けつける。俺は足には自信はある。とりあえず、車があの親子に接触するまでには駆けつけれるだろう。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
予想通り、車が親子に接触するまでに俺は親子のすぐ後ろまで近寄ることに成功。そして、俺は急いで2人を突き飛ばした。
よし。これであの親子はなんとかなるだろう。
俺もこの場から離れないと………
と、思っていた所で、それは無理だと理解した。
なぜなら、車がもう俺のすぐ目の前まで迫ってきているからだった。
そして、俺はそのままその車に撥ねられた。
ドン!!と鈍い音がしたあと、気付いたら俺は10メートルぐらい吹っ飛ばされていた。直ぐに先程、突き飛ばした親子が俺の傍まで駆け寄る。
親子のお母さんらしき人物が心配そうに俺に話しかけるが、残念ながら何を言っているのか聞き取れなかった。あぁ……、意識が朦朧としている。
これはきっと………死ぬパターンだ。
そう直感的に思った。
意識がだんだんと遠くなっていく。恐らく、あと以て数秒だろう。
俺は意識が切れる直前に掠れ掠れの声でこう呟いた。
「1度でもいいから………変身したかったなぁ………。」
そして、この瞬間、俺、青山 遊の命は途絶えた。
これは後日、ニュースで報道されていたものだが、青年を轢き殺した運転手は運転する前に酒を飲んでいたそうだ。それで、ブレーキとアクセルを踏み間違え、このような事件を起こしたという。当然、運転手は飲酒運転かつ殺害容疑で逮捕された。
最後に、青年を助けた親子はインタビューの際に泣きながらこう発言したという。
「私達を助けてくれたあの青年はまるでヒーローだった」
と。
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