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シャルリア様とお出かけ

 ◇ ◇ ◇



「ぜひ、頼む」


 夕食の片付けを済ませたところで、ジェリック様がお呼びだとのことだったので、僕は玉座の間へと向かった。

 ジェリック様は、御夕食の席でアイリーン様から、シャルリア様と僕とのお出かけの件をお伺いになったらしく、非常に楽しそうな表情をしていらした。

 反対に、シャルリア様は難しいお顔をなさっていて、多分、嫌ということではないと思われたけれど、しかし、何故だかその表情は、わずかに悔しそうにもお見受けできた。


「城の中で安全に私たちが保護するだけではなく、自分の目で見たり、外の世界へと目を向けることは、非常に大切なことで、とても意義のあることだと思っている。しかし、警護の人員も無限ではないし、彼らには城を守るという重要な役割がある。他の者では護衛能力と考えた場合、若干の不安もあるが、その点、其方であれば、実績もあるし、シャルリアも安心して、落ち着いて、見学もできることだろう」


 信頼してくださるのはとても光栄なことだと思うのだけれど。


「私の事をそこまで評価してくださって、大変光栄に思っておりますが、やはり、シャルリア様も女性でいらっしゃいますので、男1人での護衛というのは、些か不安があるように思えるのですが」


 何が、とは、直接口に出したりしないけれど。

 収穫祭の時だってシャラさんについてきていただいたわけだし。

 シャルリア様がピクリと肩を震わせられる。


「つまり、其方は、1人ではシャルリアを守り抜く自信も、シャルリアの見学を満足させる自信もないということかな? 私は、其方であれば、シャルリアの事を任せるに値すると判断しているのだが……」


 見学の方はどうなのだろう。

 小雪さんに関しては僕の方が、わずかにではあるけれど、アンデルセラムへ滞在している期間も長いし、何となく(とはいえ精一杯)でご案内することが出来たのではないかと思っているけれど、シャルリア様はこの国のお生まれだ。

 僕がシャルリア様を初めてお見かけしたのが外であったことから考えてみても、全く外に出たことがないということはないはずだ。

 それに、これは国王様や王妃様には告げることの出来ない話だ(もしかしたらご存知かもしれないとは思っている)けれど、シャルリア様は夜中も暗い時間帯に、お城を抜け出されていることがある。

 最近は、小雪さんがいらした、あるいはお祭り期間だったということもあってか、探知の魔法に引っかからないから、シャルリア様が約束をお忘れでなければ、控えられていたとは思うのだけれど、僕の案内が必要なほど、外に慣れてはいらっしゃらないとも思えない。

 しかし、だからといって、これ以上、お仕えしている身でありながら、国王様の言に反することなど――


「もちろん、本当に困るというのであれば、急な話でもあるし、断って貰っても構わない」


 そう思っていたので、国王様から告げられた内容には少々拍子抜けさせられてしまった。

 シャルリア様も、御父上の真意を測るかのように、形の良い眉をピクリと動かされた。

 

「お父様? 私のお――」


 アイリーン様が上げようとされた抗議の声を途中で遮られたジェリック様は、一層楽し気に微笑まれ、


「滅多に私たちを頼ったりしないシャルリアの望みを父親として叶えてあげたい気持ちで一杯だったのだが……」


「アルフリード様」


 ナティカ様が困っていらっしゃるような表情を浮かべられながら、


「私からもお願いいたします。たしかに、私も先日の件を忘れたわけではありませんけれど、それでも、この子たちはいずれ必ず、ここを出る日が来ることでしょう。それは淋しくもありますけれど、私たちがずうっとついていてあげることは出来ませんから」


 つまり、今のうちに予行演習を、ということだろうか。

 シャルリア様が、城の中だけではなく、外の世界に興味をお持ちだということは、何となく察しがついている。

 それは、外の世界にはシャルリア様のお知りではない、書物を読んだり、他人の話を聞いたりするだけでは済まされない、未知の、興味の対象がまだまだたくさんお有りだろうから。

 ならば、僕はその望みを叶えるための、手助けくらいはするべきなのではないだろうか。シャルリア様や、アイリーン様、それにカルヴィン様も、ずっとお城の中だけでお過ごしになられるということは、まず、不可能なのだから、いずれ来る本番の前に(本番とは一体何だろうという議論は置いておくとして)出来る限り少ない人数で体験させておきたいという、ジェリック様とナティカ様のお気持ちも分からないこともない。

 

「それに、この子も、アルフリード様とお出かけするのをとても楽しみにしているみたいなんですよ。まだ、決まっていない事柄に対して適切な言い方ではなかったかもしれませんが」


 ナティカ様がシャルリア様へと微笑まれると、シャルリア様は、頬を染めてナティカ様を見つめられた後、僕の方へとじっとした視線を下さり、すぐにまた逸らしてしまわれた。

 もしかして、と僕は今更ながらに思い返す。

 先程、小雪さんをお贈りする前に、シャルリア様が僕の部屋の前で待っていらしたのは、そういうことを伝えにいらしたということだったのだろうか。

 シャルリア様が僕のどこを気に入られたのかは分からないけれど、僕はシャルリア様のお味方をすると誓った。

 だったら、僕と出かけるのを楽しみにしてくださっているというのなら、その期待には応えたいと思う。


「分かりました。ジェリック様。ナティカ様。私に、シャルリア様の事をお預けください」


「よろしく頼む」


 ジェリック様は微笑まれたまま、そうおっしゃられた。


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