〜 グランソルシエールの禁術書 〜 第零話
こんにちは 雛仲 まひるです。
ゴーレム共々からんちゅ♪を楽しんで頂けたら幸いに思います。
では
からんちゅ♪始まるよ。
序章
◆鉄の鳥籠
遠い過去、羊飼いは夕陽を見て天候を知り風と共に放牧の旅を続けていた。
山羊飼いは空を見て天候を知り風を読み放牧の旅を続ける。
――今も尚。
五百年程前、両者が辿る道は大きく分かれた。
“神”
唯一無二の存在にして全ての創造主と、その使者たちの信仰。
「私は善き羊飼いであり、また世の罪を切り取り除く神の子羊である」
曰く、羊は羊飼いに導かれ広野を歩き、羊飼いは人を導き、神に導かれ楽園に誘われるのだ、と。
「彼ら山羊飼いは邪神たちが使わした魔物使いであり、山羊は豊穣を喰らう魔物である」
曰く、山羊は山羊飼いに導かれ荒野を歩き、山羊飼いは魔物を操り楽園を枯れさせるのだ、と。
――とある場所。
「覗き魔さん! 良かった生きていてくれた」
アウラの潤んだ瞳が、白銀にブルーマールが映える髪の少年を映し出した。
「どうやって……ここに?」
「ひっそり、こっそり潜り込んだ。俺はどんな場所でも一人なら何とか行ける」
「どうして……、あの時、私は覗き魔さんを――」
「待たせたなぁ? アウラ。助けに来た」
アウラの言葉を遮り、少年が屈託のない微笑みを向けている。
「何故? ……危険を冒してまで、私なんかを……ばかぁ!」
アウラは瞳を潤ませ、やわらかく微笑む少年を見詰めた。
「そんな顔をするかなぁ。約束したからアウラに何かあったら力を貸すって言ったろ? さあ……封印を」
「封印を解いたら覗き魔さんの身体が……」
「心配する事はない」
「でも、一度封印を解いた時から覗き魔さんの右眼は、もう――」
「循鱗の力を使わずアウラを連れてここを出るのは、ちょっと骨が折れる。アウラに傷を負わせず、ここから逃げ出す自信はない」
「でも……」
「大丈夫、前より循鱗の力は馴染んでる。だから早く封印を」
「……は、はい」
アウラは、小さく頷いて震える腕を少年の背中に回した。
小さな手に持っている節くれた杖に括られた鐘が、からん♪ と小気味良く音を奏でる。
アウラは、少年の左首筋に浮かび上がった六芒星の中に描かれた紋章に口付けを与えた。
封印は眩い七色の光を放ち解き放たれ始める。
少年の姿は以前と違い、見た目に大きな変化は見られない。
すでに変ってしまっている真紅の右眼がいっそう眼光炯炯としている。
左眼はやさしい少年の碧眼のまま、やわらかい輝きを放っているままだ。
「さあ帰ろうか」
少年がやわらかく微笑んだ。
少年の言葉と笑みが不安に満ちた胸を柔わらげ、溶かして往ってくれる様にアウラは感じた。
――帰れるんだ。
悲しい時の涙でも寂しい時の涙でもない。
嬉しい時に流す涙とも違った、涙が溢れ出し紫水晶の瞳から頬を伝って流れ出す。
――安堵の涙。
アウラは頬を赤らめ俯いた。
「さあ、行こうか。アウラ」
でも、ちょっぴり嬉しい。
「うん」
アウラは小さく頷いた。
「……何か、下の方が騒がしいですね」
「ああ、始まったみたいだ」
少年は、そう言い残し七色に輝く紋章の光に包まれた。
To Be Continued
最後までお読み下さいまして誠にありがとうございました。<(_ _)>
次回をお楽しみに!