オトメゲーム?
さて、友人になったら何をすればいいのか?
なにせ、王妃に疎まれている僕と友達になろうって奇特な子供は、今まで皆無だったからな・・・。
取り敢えずは、お互いに知り合わないとな。
「まずは自己紹介からだ。君も知っての通り僕の名はブレント、正式名はブレント=エリングワースだ。友人同士は名を呼び合うものだそうだから、ブレントと呼んでくれて構わないぞ」
そんなつもりはなかったのだが、ちょっと偉そうな言い方になってしまった。
しかし人形はそこは軽くスルーして、違う所に食いついた。
「わかったブレントね。私は・・えっ?ちょっと待って!エリングワース?・・・そう言えば、さっきの弟君の名前はニコラス・・ニコラス=エリングワース第二王子!!!まさかこの国エリングワース王国じゃないわよね?」
段々と声高になっていく人形。僕は分かりきったことを訊かれたので、けげんな顔になりながらも答えた。
「そのまさかだが何か?」
すると突然、
「エリマキ‼」
と叫び人形は絶句してしまった。また謎の言葉が出て来たぞ。一応確認してみる。
「えーっと、えりまきって?」
何かと問えば、転移する前の人生で姉にすすめられて夢中になったのが、『エリングワース王国魔法学園の奇跡』略してエリマキ(・・それって略する意味あるのか?)という名のオトメゲームというものだそうで、そのゲームの登場人物と設定がなぜかこの世界と一緒だそうだ。
ゲームは、この世界では珍しい光魔法の保持者である平民の少女がヒロインで、彼女が14才の時に魔法学園に入学する所から始まり、一学年上に在籍していたニコラス王子と恋に落ち、数多ある障害をくぐり抜けてハッピーエンドを目指す、という荒唐無稽な話らしい。
「光魔法の保持者とは言え、王子が平民の少女と恋に落ちてハッピーエンドなんてあり得ない!」
ダメ出しすると、
「そこが奇跡なのよ!」
手が動いていれば、グッとこぶしを握りしめていそうな、力の入った声だった。(いやでもそれ答えになってないぞ!)
そしてゲームの話に熱の入った人形に、ヒロインは才能・美貌・性格どれをとっても素晴らしく王子とお似合いの少女なのだと、架空の人物の話なのに熱く語られてしまった。
僕は本気にしたわけではなかったが、ちょっと気になって第一王子の名前と、ゲーム中の役どころを聞いてみた。ちょっとした好奇心だ。本当だ。
すると言いにくそうに、
「えっとぉー、たぶんブレント王子様?だったかなー。役どころというか出番事態が、えーっと、なかったよーな?」
人形は後をごにょごにょ濁してうやむやにした。
おい!ヒロインの説明の時とえらい違いだな!
あの熱い口調はどこに行った!
名前も覚えていないような影の薄い王子というのも気になるが、それ以上に気になったのは、何故出番がないんだ?もしかしてその影の薄い第一王子はその時点ですでに・・・
自分の事ではないはずなのに、ズーンと落ち込み始めた僕とは反対に、
「はぁ~エリマキの世界かぁ~これからが本番ね!楽しみ~。ブレントいいなぁ、こんなファンタジーな世界を生きられるなんてうらやましい!」
テンションの上がった人形の浮かれた言葉を聞いていると、逆に僕はスーッと冷静になった。
読んで頂き有難うございます
次話は一時間後に投稿の予定です