500才
「たぶん君は、この王国を建国した初代国王が、この世界の神である大精霊様より頂いた国宝の人形だと思う。約500年前の話だ」
ここでしばらく間を置いたが、人形から全く反応がなかったので続ける。
「本来ならば、大精霊様より頂いた国の宝である君は、最初に居た剣や宝石のあった部屋、宝物部屋なんだが、そこに厳重に保管されているから外に出る事なんてないはずなんだ。
しかし、君が突然人々の前に現れる「人形の出現」と呼ばれる事象がある。それが起こるのは、王国に一大事が起こる時とされている。
大精霊様のお使い様である君が、王国に危機を伝え、その回避方法を人々に伝授する為に現れるんだそうだ。
そして危機が去った後いつの間にか人形は宝物部屋に戻っていた。という伝承が残されている。一応聞くが、君、大精霊様からの伝言なんて預かってないか?」
緊張して人形の答えを待つ。この人形は何を言うかわからないからな・・・。
人形は沈黙したままだ。
ホッとした。一大事とは関係なさそうだな。
しかしこうやって見ると綺麗な人形・・おっと、話は途中だったな。
「え~っとそれは歴史が証明している。200年くらい前に疫病が蔓延しそうになった時、そして350年くらい前に周辺国と戦争が起こりそうになった時だ。詳細は残ってないが、伝承によると、どちらも人形のおかげで早目に手を打つ事が出きて、事なきを得たそうだ」
僕は何だか一人芝居をしているような気分になりながらも続けた。
「ここまでは正式名称の『王国の守護人形様』の話なんだが、さっき君が訊いた『災いの人形』という呼称は、バチあたりな言い方だけど、君が人々の前に出現する事象は″災い″の前触れだからね、畏怖を込めて陰で言われている名前なんだ」
ここに来てやっと人形から反応があった。
「大ショック!私って500才のそんな古いおばあちゃん人形なんだー」
おいっ!気になるのはそこなのか? 大精霊様はスルーなのか? ″災い″はどこいった?
追求したかったが、不思議な事に人形はどんより悲しそうに見えた。仕方がないのでヒョイッと人形を掴み、鏡の前に置いてやる。
人形は鏡に映った自分の姿を見て、
「あれっ?新品みたいにキレーイ。それに思ってたのより小さい。はぁ~でもテレビに出てためっちゃお高い外国のお人形みたいでかわいい~やったね私!」
相変わらず分からない単語もあったが、縦ロールでボリュームのある金髪、薄い水色のキラキラした瞳、乳白色の肌、紅い口紅。確かに人形は綺麗だ。
これでしゃべらなかったら神々しかったかも。
いろいろ残念だ。